しっとりとしみ込むような本物の怪異譚。
- ★★★ Excellent!!!
そう滅多にお目にかかれない本物の和風ホラーです。
出会えたことを神様仏様あとは怪異様に感謝したい。
青年の夢に「彼」は出てくる。
しかしその「彼」は現実と夢のあわいにある。
生々しい空気感に腹が冷えたのは何度だろう。
味までしそうな手触りの文体が描くのは、「記憶」という水にぼたりと落ちた墨が滲むような歪んだ過去。
いや、その夢語りこそが青年の過去を歪めている。
そして私たちは夢語りが進むごとに、青年のことを知ってゆくような気になってゆくが、それこそが誤りなのだ。
この夢は紛い物である。
いくら読み進んで青年のことをじりじりと知っていっているような気がしても、それは「彼」が語る階層のずれた青年の虚像に過ぎないのだ。
その隙間に、ほんの僅かだけ真実の青年がまじるというのが、また恐ろしいのだけれど。