第27話 結成、サイガー・チーム!

「わっ……私、もっ……サイガーマシンに乗ります。これが書類です」

 次の日、冊子制作の打ち合わせメンバーで相談しに職員室へ行った時に竜崎が開口一番こう言い放った。それを見ていた南原さんも……

「……私もっ……やります!」

「……え?南原さんも!?あ、僕もまたちゃんと復帰しますので、またこれからもよろしくお願いします」

「そう、ありがとう」

 また言葉少なに承諾してくれる町田先生。

「これで4人揃いましたね」

「え?4人ですか?もう一人は!?」

「……それは、後のお楽しみってことで」

「しかし5人目はまだいません。最悪、4人で搭乗することになるかもしれません。そして、これからあまり時間はありません。その短期間で操作を習熟するために、メンバー全員で合宿をします」

「合宿……?」

「はぁ、合宿ですか……」

「早速、今日の放課後から始めますので、また研究所まで来てください」


「ようやく残りのサイガーマシンの組み立ても終わってね。今日はその最終試験なのです」

 授業が終わって研究所に集合した後、エレベーターに乗りどんどん下へ降りながら、町田先生はそんな説明してくれる。

 向かった先は地下10階、この基地の最下層の階だ。

 長い下降が終わって扉が開くと、一人の男性が待っていた。

「……や、君たち、遅かったね……」

 ……え?誰……?と思ったけど、よく見たら意外と見知った人だった。

「「「あ、荒砥!?」」」

「実は4人目はオレだったんだ。驚かそうと思ってね、先生には黙っていてもらってた」

「マジか……」

 いや、本当に驚いた。まぁでも、まったく知らない誰かと一緒に戦うよりいいか。

「あー、じゃぁよろしく」

「こちらこそ」

「南原さんも竜崎さんもよろしく」

「う、うん、よろしく!」

「……よろしく……」

「さて、顔見せも済んだ所で、行こうか」

 そう言って、この基地最大の格納庫に案内される。

 高さは最大130mだそうだ。最大というのは一部の天上だけが切り取られそこだけて高くなっているから。他の部分は120mぐらいらしい。それでも十分高い。基地のかなりの階を吹き抜けで繋いで高さを確保してある。

 その天井にはガントリークレーンが二基ぶら下がっていて、床面積もかなりある。確かにこの規模だと最大だろうというのがわかる。

「あ、念のためにこれ被っておいて?」

 と、渡されたのはヘルメット。工事現場でよく見るやつ。ご安全に。

 その広大な床面には僕が乗ったサイガー1に加えて、他に4機の機体が並んでいた。

「一番左がこの間の戦闘で活躍したサイガー1。で、そこから並んでいるのがサイガー2、サイガー3、サイガー4、サイガー5。ここで担当の発表もします」

 並んだ機体の方へ歩きながら説明が始まる。

「まず、サイガーマシン1号のサイガーファイター、戦闘機形態。これの説明不要ね。合体後は胸から頭部になります。この間芹沢君がこれに乗って戦ってくれました。ありがとう。引き続きお願いします。あの時の損傷具合は酷かったけれど、なんとか修理が間に合いました」

 外観はほとんど完全に修復されているけれど、戦闘後もそのままの箇所と、修理不能と判定されて完全に新しいパーツに取り換えられた場所も所々あったりして、その差異が微妙にある。

 それにしてもなんか不穏な言葉を聞いたような……?合体ってこれ以上何かになるの……?

「次にサイガーマシン2号の……のこれは戦車形態ね。サイガータンクです。ダイサイガーの背中から両腕になります。この五機の中で一番出力の大きい超電発電炉が搭載されています。クルーは竜崎さん。機関士も担当してもらいます」

 見た目はあまり戦車っぽくはないが、大口径の主砲と大きな履帯が付いているのでその辺だけは戦車っぽい。

 ……しかし、ダイサイガー……?なんじゃらほい?

 あれって計画だけの名前じゃないの……?そんな疑問も湧くけれど、説明は続く。

「これはサイガーマシン3号、サイガーアタッカー。今の戦闘攻撃機形態の名前です。この機体は胸から腰の部分になります。クルーは南原さん。副操縦士とダメコンを担当してもらいます」

 これは主翼・尾翼が付いているから飛行機だとわかりやすい。攻撃機だからか、サイガーファイターより一回り大きい。武器がたくさん載せられそう。

「次はサイガーマシン4号、サイガーマリン。クルー……この形態だとサブマリナーになるのかしら……は、荒砥くん。火器管制及び対潜戦闘を担当してもらいます。機体には長・短魚雷やアクティブ・ソナー、パッシブ・ソナー他の各種対潜装備、海上・海中で活動しやすくするための水流ジェットが装備されているから今回の作戦では活躍するかもしれませんね」

 なるほど、なだらかに膨らんでいる円柱……いや、涙滴型の機体……というより船体に見える。でも履帯が付いているので、潜水艦に履帯が付いているような少し妙な形状になっている。

「今は潜水艦形態ですが、合体するにはこの形態より真ん中から二か所で折れたコの字型の形状になって、腰から大腿部分になります」

 これが腰と太もも部分になる……?

「そして最後にサイガーマシン5号、サイガーランダー。地底戦車。あまり目立ちませんがドリルが付いていたりします。ほら、あの三つに分かれてる大きいハンドスピナーっぽいのがそうです。今の所クルーは決まっていません。最悪リモートでの操縦になるけど、そうなるとマンパワーの点で心配になりますね」

 なるほど、これにも履帯がついている。これが地中に潜るのだろうか。

「さて、各機の紹介が終わった所で、これからこのサイガーマシン5体の初めての変形合体試験を始めますが、プロセスを良く見ておいて下さい。後のミーティングでかなり重要になりますからね」

「えっ、これ全部が、本当に合体するんですかっ!?」

「この大きいのが合体……」

「……マジですか……」

「……すご……」

「ええ。しかしまぁ、これが初めての合体試験になりますので、ちゃんと成功するか少し不安なのですけど……」

 そう言って高い場所にあるコントロールルームに大きく手を振って合図をすると、天上のレールから吊るされた二基の巨大なガントリークレーンが動き出した。

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