第16話 衝撃!父の死、そして

「適当に座ってね」

「現時点でわかっている事、はっきりしている事だけですが教えます」

 見学を終えると、会議室らしき部屋へ移動して、促されるままみんな椅子に座ると、普段の授業みたいな雰囲気ではじまった。

「まず、あの襲撃者の正体ですが、今はまだ確定したわけではないので、はっきりした事は言えません。言えませんが、この間の襲撃してきた4つのUFOがどこから飛んできたのか、最近観測されている流星群とも関連があると言えば、どこのどういう勢力かはなんとなくわかるのではないかと思います」

「この研究所が開設することが出来たのも、いつかこういう事態が将来必ず起こるだろうと、前もって知ることが出来たからですね」

 なるほど、やっぱりこの地球上の物ではない……のだろう。

 この研究所が出来て、働きだしたのは5年ぐらい前……小4?5?の頃だっけ。そんな前から準備されていたのか……

「そして、今さっき見たのが、サイガーマシン……の、5機ある内の1号機です」

 さっき見たサイガー1の組み立て中だった時の写真が大型ディスプレイに表示される。

「この間の襲来の少し前から、あの1号機だけですが急遽組み立てられました。後の残り2~5号機の4機はまだ組み立て途中ですが、それももうすぐ完成するでしょう。後は調整していくだけになっています」

 そう言うと、今度はサイガーマシンの建造途中の写真が表示される。他のマシンもかなり大きそう。見る限りかなり急いで組み立てを進めているようだ。

「この5機全部が、芹沢君の父親……芹沢和彦せりざわかずひこ博士が立案したこの研究所から連なるダイ・サイガー計画に則って設計・開発されたのものなのです」

 まさか、親父はそんなことまでやっていたのか……ちょっと驚いた。新しいエネルギーの研究ばっかりやっていると思ってた。

「ここまでの話は、まぁ大体話かりましたが、あれに乗って芹沢が戦うってのはどういうことなんです?」

 ここまで黙って聞いていた早乙女がみんなの……特に僕が思う疑問について聞いてくれる。

「実は、あのサイガーマシンの制御OSに搭載されている補助AIの調整をあなた…芹沢甲太郎くん、君から取ったデータをサンプルに調整してあるの」

「そういえば、何年か前に協力した覚えがあります。中学の頃だったかなぁ……」

「例えば人間は必ずミスをしますが、その失敗にも人によって個性があります。それらのデータを収集してAIに学習させればさせるほどミスは減ります。つまり事前のデータ収集が大事な訳です。しかしその分、AIはそのデータを取った個人向けにどんどんカスタマイズされていってしまうのですね」

「まったく見ず知らずの人達といきなり一緒に戦うより、多少なりと以前から知ってた人と戦う方がまだやりやすいでしょう。制御AIも同じようなものだと考えればいいかな。一緒に戦うメンバーもサンプルを取った本人……つまり芹沢君に対応したAIの収集したデータから構築された人間関係からある程度参考にする事でカスタマイズの工程をかなり省くことが出来ます」

 ……そういう意味では今ここにいて、芹沢君に関わっているあなたたちもパイロット候補なのですが……と続ける。

「もちろん、パイロットになる事を拒否することは出来ます。ただその場合新しいパイロットの選定と、AIの調整にかなり時間がかかることになるわね」

 そこで町田先生は僕の強く手を握りながら言う。

「だから、とりあえず今回だけ、今回だけでもいいから乗ってくれないかしら」

「……しかし、僕はまだ15歳ですよ?早すぎませんか……?」

「古来より、15、6歳での出陣もありましたので、決して早くはありません」

「……いや、その昔ならともかく、現代ですし……」

「ただ一つ、あなたのお父さんはあなたがパイロットになることを望んでいたわ。あなたにはその素質があるって」

「……少し……考えさせてください……」

 その日の夕方、重体だったその父親は意識を取り戻すことなく死んだ。


 父親の遺体はなんとか24時間フル活動している火葬場の空きを確保して焼いてもらえたけれど、葬式はまた落ち着いてからという事になった。なにせ、この非常時である。

 正直、まったく実感がない。というのも家にはほとんどいなくて、仕事ばっかりしていたから。しかもとんでもない置き土産まで残して。

 ……僕が世界の危機を背負う……?命を懸けて戦う……?正直ありえない。

 じゃぁ家族の為?友達の為?街の為?それぐらいで済むなら僕じゃない他の誰かがやってくれるだろう。でなければ、もっと大きく国の為?世界の為?地球の為?そこまで大きいとやっぱりピンとこない。

 親父も大変な任務を遺したものだ。今は色々ありすぎて死んだ事が悲しいとかは薄いのだけど、もう少し後になったら感情が押し寄せてくるかもしれない。

 とりとめのない考えだけがグルグルと回る。

 授業も上の空で、そんな事ばかりずっと考えていると、短い用件だけのメッセが入った。

『今日の放課後、作業教室で待ってます』

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