第15話 その名は、サイガーマシン1号
「すげぇ……」
「大きい……」
町田先生はそう言いながら、機首の方向へ歩き始めたので、それに続いてぞろぞろと5人で着いていく。
近付くとその巨大さがわかる。全長は60m、横幅70m、高さは……本体だけだと15m、垂直尾翼?を含めて25mぐらいだろうか。横幅は主翼の分、更に大きい。基本、真っ赤に塗られ、一部黄と白と黒がワンポイントに入ったその巨大物体はごつごつした印象で、人間の身長ほどもある巨大なタイヤが付いた太くて頑丈そうなランディングギアに支えられて本体は床面から浮いているし、巨大な翼があるのできっと空を飛ぶのだろうが、所謂航空機とはかなり印象が違う。なんというか普通の飛行機の胴体よりかなり分厚く、横にも太い。正直、かなり大きくて、そして重そうなので本当に飛ぶのかと疑ってしまう。
「かなり大きいけれど、主翼も垂直尾翼も折り畳めるからもう少しコンパクトにはなるわね」
コンパクトに……って言っても……翼を畳んでもいわゆる大型旅客機と同じぐらいのサイズの戦闘機?と思うとかなり大きいだろう。
「この機体には重力を多少……といってもほんの3%程だけど軽く出来る新素材が一部に採用されていてね。イメージとしては砕いた飛行石を構造材に練りこんでいる感じ?もっとも全体くまなくではなく、かなり強度が必要な所や熱に強くしないといけない場所には採用されていないけど」
たった3%……?と、思うなかれ。これだけの巨体である。そんな3%でも全体となるとそれなりの重量軽減になるのだろう。
機首の下まで歩いて行くと、見上げた所に視界の良さそうなコクピットがあり、今はそこまでかなり長いハシゴがかけられている。そこから下へ目線を向けていくと、その下側の左右には機関砲が二門ついているのが見えた。
「あれは30mmガトリング。実は機首のかなりの部分がその弾薬庫。それでもたった十何秒かトリガーを引き続ければすぐに撃ち尽くすわね」
そこから左方向……時計回りに案内される。
機首が突き出る辺りに大きな開口部が現れた。開口部と言ってもほとんどトンネルみたいな感じで、奥の方は位置的にも暗くてよく見えない。
「この巨大は穴はこの大きな機体を飛ばす為の推力を生み出すエンジンにまで繋がっているエアインテークです。双発なので左右にあります」
下から見える底面は低い所で床から3m、高い所で5mぐらいの高低差がある。その分厚い所まで来ると、かなり大きくて長い観音開きのハッチが開放されていた。中を覗くと結構深くてかなりスペースが確保されているのがわかる。
「ウェポンベイ(兵装庫)です。今は何も入っていません空の状態ですが、爆弾、ミサイルの他にも色々入ります。駐機して作業してる間でも熱がこもるから開けてあることが多いの。あ、上ばっかり見てないで下も気を付けて、そこ踏まないようにね、外部電源のコードだから」
「わっ、本当!」
「あ、危なく踏む所でした……というか躓きそう」
「アブねぇ……」
ああ、なるほど、今は本体が稼働していないから基地側から電力を供給しているのか。
その太いコードを跨いで(コードと言っても、直径20cmぐらいの太さがあるけど)、主翼の突き出ている機体の真ん中あたりまで来た。
「主翼は可変翼です。今は整備の為に最大に展開してあって、ハードポイント(兵装を懸架する場所)が何か所か設けられてます。今は何も搭載されていないですけど、ステルス機能を最大限発揮させる場合は何も積まない、この状態が通常になります」
「本体はあんまりステルスな形?はしていないのですね」
「そうですね。形状より表面に塗られている塗料の方が大事らしいです」
主翼部分が終わって、後方へ回ると二基のジェットエンジンの噴射口が大きく口を開けていた。その噴き出し口の上下に板が付いていて、推力偏向ノズルになっている。
「この巨体を飛ばすためのエンジンです。推力は一基でドライ出力でも800kN(キロニュートン)、アフターバーナー使用時には1450kNにもなります」
機体の周りを歩き回っていると銘板を見つけた。30式1号特殊汎用可変戦闘機 製作:三蓉重工業株式会社とか、型番、自重、製造番号(1番)、検印、製造年月日も書いてあるけど、その日付はたった三日前だった。ただし、ここまで巨大な構造物だと、パーツも様々な所で作られて最終的にここで組み立てたものだろうから、銘板もそれなりの数が各所にあると思う。今見ているのは一番メインのものだろう。
「今考えられる最高の冶金技術を結集して装甲材が作られてますので頑丈に作られてますけど、相手は謎の科学力を持っているようですから、どこまで有効かわかりませんが、これが人類科学の限界ですね」
その他、表面には航空機らしく、つるんとした外板のいろんな所に大中小のハッチがあったり、『DANGER JET INTAKE』『フムナ』とか『2フライト事にフィルターを取り外して洗浄し、油に浸すこと。そして油抜きをし再び取り換える』などの様々な注意書きが目立つ色で書いてある。
しかし、こんな物を見せてどうしようというのだろう。
「で、このでかい飛行機が何なんですか?」
「これに芹沢君、君が乗ってこの間の敵と戦うの」
「……はぁっっ!?」
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