第32話 決意の銃口
なめらかにサラサラと煌めく虹色の髪の毛に、黄昏時の公園の夕闇に猫のように光り、色がくるくると変わる瞳。
間違いようがない。
しかし、服装は前の時とは違って普通?になっているよう。暗くてはっきりとはわからないけれど雰囲気に良く似合っている……と思う。
「……改めて自己紹介します……私はシゥェリ・ヴァン・ュルリイューナ。ちょっと発音が難しいかもしれません。レイナと呼んでください」
「わかりました。レイナさん……ですね。前、警告をしてくれました人ですね……?その節はありがとうございました。と言っても何も出来ませんでしたが……服装変わったんですね?」
「……はい……あの服はここでは目立つので……」
そういって小さな紙切れを差し出した。
「……今日はこれを……渡しに来ました」
街灯は遠くて、薄暗いのではっきりとは見えないが、その紙切れには座標らしき数字……緯度・経度?と距離……高さ……か、深さ?が並べて書いてあった。
「これはあなた達が今一番欲しいであろう情報です」
「あ……ありがとうございます」
「……では……」
「いや、ちょっと待って!」
「……はい?なんでしょう……?」
「その……教えてくれませんか?今回の事件について。教えられる範囲の事だけでいいんで」
「……わかりました。あまり言えること事は多くないですが……」
そこから30分ぐらい、待っていた時に使っていたベンチに座って一通り話を聞いて、その衝撃的な内容を反芻する。
「……では今度こそこれで……」
「あ、レイナさん、まだもうちょっと待ってください!」
すっかり夕闇に包まれた公園から今度こそ立ち去ろうとしているのを、手を握って止める。
「……はい?」
そして話を聞いている間、ずっと考えたことを口にする。
「えっと……その……僕たちと一緒に……戦ってくれませんか」
「……えっ……!?」
「無理……ですかね……?」
「……えっと……その……一晩考えさせてください……」
「……明日の夜に、またここで待ってます」
しかし次の日の朝、夜まで待つことなく承諾するメールが来たので、空いてる時間に職員室にいる町田先生に報告する。
「最後のメンバーが見つかりました。……それと……これ、今僕たちに一番必要な場所の座標を示すメモです」
「そう……後は全部やっておくから……これから色々大変だろうけどよろしくね」
「……はい……」
訓練が終わった夕食までの時間に、昨日とまた同じ公園の約束の時間に落ち合って研究所に戻る。
そして次はメンバー顔合わせ。
……もっとも厳密には初めてじゃないけど、その為に他の3人には前もって夕食が終わってもしばらく残ってもらうようにお願いしておいた。
食堂に入ると一人元気な南原さんと、それに面倒くさそうに相手をする竜崎と、黙って本を読む荒砥という、いつもの構図だった。
「この人が最後の5人目になりましたレイナさんです。詳しいことは追々説明しますけど、とにかく明日から一緒に訓練にも参加するのでよろしくお願いします」
「そうなんだ!私は南原瀬良!よろしくね!」
「……荒砥櫂です……」
……しかし竜崎の様子がおかしい。すごい形相で睨んでいる。
「竜崎、どうs」
「……あんたが……あんたらが、私たちの街を……」
これは何とか宥めないとと行動を起こそうとした瞬間、
「絶対に許さないッ!侵略者め!死ねっ!」
電光石火の早業だった。少し前から護身用に支給されていた銃をホルスターから抜き、それを見て反射的に射線の前に立ちふさがろうとしたが、竜崎は迷いもなく引き金を引く。
……が、弾丸は出ない。
扱いにまだ慣れていない素人の性だ。セイフティがかかっていたので弾は出ず、外そうともたついている隙に取り押さえた。
とりあえず二人を別室へ隔離したけれど、騒ぎの事情を聴かれて、ちょっとした喧嘩ってことにしてなんとか誤魔化した。
「……ええ、もう大丈夫です……」
「ごめんね、いきなりこんなことになって……」
「いえ……まぁ……色々ありますよね……」
とりあえず、缶紅茶を飲んで落ち着いてもらって、別室の竜崎に付いてもらってる南原さんにメッセで連絡を取る。
『そっちはどんな感じ?』
『だいぶ落ち着いたから。もう大丈夫だと思う』
『了解。ごめんね、ありがとう』
『いいっていいって!』
とりあえずここは荒砥に任せて竜崎と南原さんのいる部屋に向かう。
そこで軽く事情を話した。
「……ごめん、頭に血が上って…………あんたは違うんだってね……」
改めて顔合わせの最初に素直に謝罪する竜崎。
「ああ、いえ、こちらこそ……わかって頂けたならそれでいいです」
「でも、もし裏切ったら次は後ろからでも撃つ。私は躊躇わない。忘れないで」
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