第40話 時間よ止まれ!
「3、2、1、続いてサイガー2を降下させてください!」
『了解、サイガー2、バランス確認の上、投下!』
『サイガー2……発進!!降下開始!』
サイガーマシン2号のクルー、竜崎が叫ぶ。
タイミングを合わせてビッグ・マンタの機首が少し上方を向き、巨大なパレットに載せられた巨大戦車形態のサイガー2……サイガータンクの固定が外された後、
「せーーのっ!」
という掛け声に合わせて人力で押し出される。
動き出した機体は床のローラーコンベア上を滑り、開放された後部ハッチから上部に取り付けられたパラシュートをのろしの様に後方へ流しながら放出される。
降下を始めたサイガー2はまずパラシュート3枚×3を展開して減速する。固定が自動で外れ、パレットを投棄して……
『ロケットモーター点火!』
各所に増設したロケットエンジンを作動させて可能な限りさらに減速させて……少しずつ上昇しはじめる。
『サイガー2、変形開始!』
機体の姿勢を安定させた後に変形を始める。大まかに真ん中から左右二つに割れて、ダイ・サイガーの背中から肩の部分になり、そこから先の畳まれていた部分が展開して、収納されていた手首が出て2本の腕になる。
『ドッキングサーチャー同調!3、2、1、』
ゆっくり上昇するサイガー2=背中から肩~腕部分と、下から上昇していくサイガー1・3=頭部~胸の部分が相対速度を極力減らして位置を合わせて、サイガー1・サイガー3に上から被さるように合体する。
ガシャン、ガキン、ガシュン!
ジョイントががっちり噛み合って、ダイサイガーの上半身が完成した。
「サイガー1,2,3,ドッキング、コンプリート!」
『よしっ!』
『……やった……』
ここで、減速の為にサイガー2に取り付けられたパラシュートと燃料を使い切ったロケットモーターを投棄する。
しかしこれでようやく半分を超えた所だ。
ここからは完全にサイガー1……僕が操縦を担う。
それまでずっと上昇していた上半身部分は、主翼は展開したまま、飛行機から腕だけが突き出たような最低限の変形した中途半端な状態で、操縦桿を引いて機首?を正面に向けて、文字通り背面飛行……背中側が上、腹側が下……つまりコクピットは逆さの状態で飛行する。なので、目線を上に向けると海面が見える。
『続いて、サイガー4、その40秒後にサイガー5放出!3、2、1、GO!』
『サイガー4、降下開始!』
ビッグマンタの下部が大きく開きロックが外され、荒砥の声を同時に次にサイガー4が投下される。ビッグマンタの機体を離れたサイガー4機体が安定すると変形を開始する。
『チェンジ・サイガー4、スイッチオン!』
荒砥が音声入力すると、涙滴型のサイガーマリン状態の真ん中で二つに折れた格納形態からダイサイガーの腰部分が現れ、そこから下の大腿部分になるように変形して膝にジョイント部分が現れる。
そこで主翼兼潜舵を大きく広げ、少しでも浮力を稼ぎ、ロケットモーターを点火、前方へ加速を始めて、タイミングを合わせたサイガー1,2,3が合体した上半身に近づいていく。
『ドッキングサーチャー同調!』
『サイガー4、ドッキングオン!』
よし、サイガー4までの合体成功!
そして最後にサイガー5が降下してくると、もう一度機首引き上げて=完成した頭部~大腿までを直立させて着水する体勢を取る。海面までもうそんなに距離はない。
『サイガー5、チェンジアップ!』
レイナさんの掛け声と共に、降下してくるサイガー5は左右二つに分かれて、先端のまっすぐ伸びていた部分が90度回転して足首になり、ブーツ部分が完成。
よし、これさえ無事に接続出来れば……!
しかし最後の最後になってトラブルが起きる。
「あっ!?」『えっ!?』
ガツンッ!!
サイガー5の片側の左側は問題なく接続出来たけれど、いわゆる右ブーツ部分を接続しようとした瞬間に運悪く突風が吹いて、ジョイント出来ずに機体に接触、大きくバランスを崩す。
『あっ!ちょっと待って!?』
サイガー5のクルーのレイナさんもなんとか制御して立て直そうと、必死でレバーを操作して本体に近付けようとするが、ぶつかった衝撃で無情にも本体から離れていく右足。これでは間に合わない!
「マニピュレータモード!!」
とっさに僕はそう叫ぶと、タッチパネルに音声入力が正しく認識されたことが表示されたのを確認して、許諾トリガーを引く。通常、戦闘時は照準を合わせればそれに合わせて自動で動いて撃ってくれるような便利なシステムだけど、精密な動作が出来るモードに音声入力で変更すると、接続に失敗したサイガー5の右足部分を右手で掴み、引き寄せる。
海面落着まで残り、数秒!
間に合うか……!!
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