第41話 眼下の敵
『ダイ・サイガー・トランス・フォーメーション!!』
最後の変形を終えて、大きく逆噴射すると、海面に巨大な水柱が立つ。
大きく巻き上げられた海水が外板を洗う。
「ダイ・サイガー・クロスリンク・コンプリート!接続合体完了!!各部チェック!」
……なんとか間に合った……
『完成したね!良かったね!』
『……まぁ良かったんじゃない……?』
『…………』
『はぁ~、どうなるかと思いました……』
完成したダイサイガーの雄姿は着水した時に被った海水が南の太陽光にさらされてキラキラと輝いていた。機体はサイガー4の大腿部分にある強力な水流ジェットによってその上ぐらいから海面上に出ている。
喜んでいる間もなく、町田先生より通信が入る。
『ビッグマンタは航続距離の問題から、この空域に滞空出来ません。このまま本土に戻ります。くれぐれも気を付けて。ご武運を』
「ありがとうございます。ビッグマンタも無事に帰投してください」
『あなたたち、5人ならきっと任務遂行出来ます。だから最後まで諦めないで』
「はい、了解です。町田先生も気を付けて」
『そろそろ基地のある付近の海上です。注意して下さい!』
唯一、基地の詳しい座標を知っているのでナビをしているサイガー5のレイナさんが注意を促す。が……
『……しかしまぁ、そう言われても何もないね……』
「……ああ、うん、まったくね……」
実はそうなのだ。見渡す限り海が広がっていて、360度水平線が見えるだけで、他には何もない、太平洋のど真ん中。
『その基地のある海面にはブイが目印に浮いているとか聞いたけど、電波を出したりすると破壊されるので、本当に浮きが浮いてるだけとか』
「とりあえず、何も見えないな……」
『実は本当に何もなかったり……?』
『間違えてたり……?』
『いえ、ここなはずですよ……』
『来るとしても空から?海から?』
『……気が抜けたらお腹減ってきた……』
さっきまで張りつめていた空気が、あまりも何もなくて弛緩しそうだったが……
『水中聴音機とパッシブ・ソナーに反応、聴いたことのない推進音だ!』
そんな空気を吹き飛ばすような、対潜攻撃担当の荒砥から通信が入る。
『気を付けて下さい!来ますよ!』
おおよその水深と位置は把握できているが、UNKNOWNと表示されている。
『水中から発射音・推進音多数!ソナーにも反応!速度90ノット、距離2000、深度80!雷数5!』
その直後、海面から水柱を立てながら5発の飛翔体が飛び出し、大きな弧を描いてこちらへ向かってくる!警報がけたたましく鳴り響く!
『頭部CIWS作動!標的自動追尾、射撃開始!』
ギヤャャァァァァァゥゥッッ!
迎撃が開始されると、頭部に装備されている左右二門の30mmガトリング砲から毎分3900発の速度で撃ち出された曳光弾が作り出す光のラインが標的の飛翔体に向けて飛んでいく。
弾頭に被弾すると火花を散らして砕けて破壊されると次に標的に集中させる。
……が、全ては落としきれずに二発被弾した。
機体に衝撃が走り、グラリと傾く。
『被弾個所はどこですか!?被弾個所を報せて?』
「腹部左側と胸部に被弾!えっと内部カメラで視認出来ない?煙がいっぱいで!」
『被弾箇所に火災発生!内部温度上昇!』
被弾個所の把握は各マシンの操縦手だけど、ダメコンは副操縦士の南原さんが担当する。
『外装カメラで損傷個所を確認、火災発生個所に自動消火装置作動!』
『腕部のカメラからも被弾個所が見えますか?状況を知らせて下さい!』
ダメコンは任せて、とにかく敵の動きを止めさせて水中から浮上させなければいけない。
『対潜攻撃用意!』
射撃統制担当の荒砥が叫ぶと大腿部分に内蔵されたASW(対潜ミサイル)の投射装置がせり出す。
『ソノブイ(水中音響探査浮標)投射!』
小型のASWのようなサイズの弾頭を三方に向けて発射されると、所定の距離を飛んだ後にロケットモーター部分を分離したソノブイが着水すると海上に浮かぶアンテナ部分とそこからケーブルで繋がれたセンサー部分とに分かれて、センサー部分は海中に潜っていく。これで海中の様子を立体的に把握できる。
『水深70mを80ノット(およそ148km/h)で、ダイサイガーを中心に円を描くように1800の距離で時計回りに移動中!』
「80ノット!?早くない!?」
『諸元入力、距離1900、有線アスロック(対潜ミサイル)1~3番発射用意!』
といっても、今の距離程度の対潜攻撃については複雑な操作は多くなく、タッチパネルの中心に描かれたダイサイガーの位置と移動する標的の表示と、色分けされた攻撃可能な場所に発射数を入力して着弾個所をタップした後に、発射したいタイミングで激発ボタンを押すだけ、なのだが……
トリガーを引いて発射装置から有線対潜ミサイルが発射された。発射数は3。
『3発だけ?』
『とりあえず、これで様子を見る』
「そもそも、謎の異星人の作った潜水物に誘導されるんかな……?」
『正直わかんない。わかんないから、ある程度こっちで誘導して起爆させる』
発射されたアスロック3発が接続されたケーブルをのばしながら大きく弧を描きながら飛んでいき、設定された距離でロケットモーター部分が外れ、落下傘が開き、ケーブルが接続された弾頭の短魚雷部分が着水すると、水中を65ノット(およそ120km/h)の速さで標的を半自動・半手動で追尾させる。
しかし……
『3,2,1……起爆、イマッ!』
声と共に三つの水柱が海面に直立する。
『単純爆発音、誘発音なし、余音なし……ッ、当たらない……!』
イラつく荒砥の声が聞こえる。いつも冷静なヤツなのに、イラつくことあるんだ……
どうやら、速度だけではなく舵の効きもかなり良いように思える。
対潜ミサイルは12発しか装備されていないので残り9発。それに長・短魚雷が合わせて12発、後爆雷が何個かあるけれど、水中を80ノットで動き回って、しかも転舵も早い標的に、この普通の65ノットしか出ない魚雷や爆雷ではまったく速度が足りない。
……どうする?どうすればいい……?
どうしようか、考えがまとまる間もなく、再び荒砥が叫ぶ。
『また水中から発射音!速度90ノット、距離1700、雷数は……10!!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます