第42話 浮上、潜航機械竜を撃滅せよ!
水柱が約2キロほど先に立ち、そこからまた飛び出してきた10個の飛翔体を、今度は頭部のCIWSに加えて、両肩からせり出した12.7cm単装砲二門でも対処する。
「自動追尾、迎撃開始!」
ヴギャァァァアァァ!!ドドンドドンドンッ!
こちらめがけて飛んでくる飛翔体10発の内、7発までは撃ち落としたのだけど、残った3発が距離が近くなった所で弾道が大きく変化。機関砲も単装砲もそれに追尾しきれず、3発とも被弾、機体全体が上下左右に激しく動揺する。
『被弾箇所を確認したら、損害を知らせてください!消火します!』
『右上腕に被弾、炎上』
『背部に損傷、火が出てる!』
「胸部に当たったのは……なんとか耐えた!被害軽微!」
被害が出ている場所にはダメコンで対処して、なんとか他への延焼を食い止める。
『現在、敵潜水体はダイサイガーから距離1700を時計回りに80ノットで移動中。今の所は攻撃してくる気配はない。芹沢、どうする?こっちから攻撃を仕掛ける?』
「……ちょっと考える。各員は海中からの再度の攻撃に警戒してて」
荒砥がこれからの方針を聞いてきたので、どうするべきか悩む。
でも、あまり時間もないので早く決めなきゃいけない。
残弾が尽きれば海上に上がってくるかもしれないけど、それまで待つのはあまりにもリスキーだ。それらを損害なく撃ち落とせるかわからないし、こっちの残弾にも限りがある。かといってこっちから仕掛けても今の状況だとまともに当たるとは思えないし、仮に当たっても浮上させられるまで持っていけるか微妙。対潜兵装の残弾が尽きたら手の出しようがなくなってしまう。
……どうする……?何かいい手は……
その時だった。
『友軍機!来てくれた!』
轟音を響かせて三機のF-7支援対潜艦上攻撃機が飛来する。
その三機は上空を通過しながら、空対潜航空多弾頭短魚雷3×2=6発を投下する。大きく広がりながら飛翔すると、ロケットモーターが外れて、魚雷部分だけになった弾頭は更に三つに分離してパラシュートを展開、減速しながら海面へ落着する。
着水してしばらく経つと、その6×3の短魚雷が炸裂した。
『一発命中!深度50、速力が70ノットに低下!』
調音機に耳を澄ませている荒砥が叫ぶ。
あれだけ撃って当たったのは一発だったが、それでもかなり速度が落ちたようだ。
さっき攻撃してくれたF-7編隊がもう一度旋回して、上空を通り過ぎながら再度攻撃していく。深度も浅く速度も落ちているので次々被弾した水柱が立つ。
今度はもう2~3発命中したようだ。それにしても……硬い……しかし、
『深度20、更に速度60ノットまで低下』
それでも無傷だったわけでなく、速度はさらに落ち、深度も浅くなってきた。
「よし、それなら!対潜攻撃!」
『了解!諸元入力、目標敵潜水体!』
まず、残りのアスロック全弾発射、続いてこれまでは速度が早くて当たらなかった魚雷も残り全部撃ち込む。
トリガーを引くとアスロックに続いて、発射管から解放された圧縮空気によって魚雷が射出される。
これまでだったら絶対に当たらなかった魚雷は狙いたがわず全弾命中、炸裂した魚雷の作り出した巨大なバブルジェットが海面を大きく盛り上げ、爆散して細かい飛沫になって1キロ以上もあるここまで飛び散った。
『速度20ノット、距離1000、たぶん、もうすぐ浮上してくるから注意して!深度40m、30m、20、10、浮上ッ!』
そのタイミングで大きく盛り上がった海面から水飛沫の中から艦首部分?が海面から斜めに大きく突き出した状態で停止する。
「こいつが敵……?」
その海面に突き出た涙滴型のつるりとした外殻の破損した部分からボロボロと崩れ落ち始める。そこからまず足が出て、海中に突っ込み、次に畳まれていた尻尾が出て海面に延びて、腕が出て、頭が出て、最後に全体が姿を現す。
『あれが……敵……?』
『……大きい……』
「機械竜……?」
なんかそんな印象だったので適当な名前を付ける。
中から現れたのはギラギラとした金属っぽい鱗に覆われた濃緑色の巨大な竜?で、所々に角や背びれがボコボコと伸びている。神杜港沖で対決した時にロボットにも付いていた独特の印象的な模様も何か所かについて、一部光っている。腕も足も生えているけど、下半身はほとんど海の中なので足はあまりよく見えない。尻尾はかなり長いので根本以外は海面に出て、うねっている。本体だけだと100m、尻尾まで含めると200m、直立すると150mぐらいだろうか。
やっと海上に浮上させた、その敵機械竜とおよそ1キロの距離で対峙する。
「各自注意!何してくるかわからないから些細な事でも見逃さないで!」
『『『『了解!』』』』
作戦通り、今回はまず出方を伺う。前回と違って初めて戦う相手だからデータがない。
それで相手の能力をある程度見極めてから接近戦だ。
まず、元はサイガー2・サイガータンクの主砲だった28式46センチ45口径(砲弾の直径が46cm×45=砲の長さがおよそ20m)自動砲を右腰に固定されているホルスターから抜いた銃把を装着して拳銃状になった砲を両手でガッチリ固定して構えて、良く狙って引き金を静かに引き絞って……撃つ!
ズバギャォーーーーン!!
轟音が響き爆炎が弾け、1トン以上もある砲弾が撃ち出される。
一発撃つ度に凄まじい爆風が起こり、衝撃波が広がって、砲身が付いた遊底が大きく後座して、駐退復座機の油圧シリンダーが強大な力で元の位置に戻し、吐き出されたドラム缶の様な薬莢が白煙を上げながら飛び出しては海面に落下してドボンドボンと水柱を上げて海中へと沈んでいく。撃ち出すたびに、立体駐車場のような揚弾システムがガコガコと稼働して移動させた次の砲弾と薬莢に収まっている装薬をラマーが弾架から薬室に押し込み、閉鎖機が稼働して自動で装填する。
10秒に一発、カートリッジ一個分24発を撃ち尽くしたので予備に交換して、命中の度に巻き上がる黒煙がようやく晴れてきたので戦果を確認する。
……が……
『まったく効いてない……』
「……みたいだね……」
あれだけ撃ったにも関わらず機械竜はまったく無傷だった。
やはり全て展開されているバリアーに阻まれたようだ。
まずアレをなんとかしないといけない。
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