第43話 激闘は憎しみ深く
『たぶん、あの円筒の背びれがバリアー展開装置だと思います!まずあれを破壊してください!』
レイナさんから通信が入る。
「了解!」
『諸元入力、距離1000、10セル、近接信管、距離50で起爆!』
……と、言っても今は標的が目視で確認出来る距離なので、距離も方向もほぼ自動で設定されて、後は発射数を決めてHMDの視線で照準して決定トリガーを引くと照準が仮固定される。
「撃ちー方、始め!!」
トリガーボタンを押すと機体各所に装填されているSSM=艦対艦ミサイル(のようなもの)を発射される。
それと同時に左右のアクセルペダルを奥へ踏みこむと機体は徐々に走り始めて、距離を詰める。
そして……
「超電バリアー前方に展開、20秒!」
『超電バリアー前方に展開、20秒!』
前の神杜港で戦った敵ロボットの残骸を参考に急遽開発されたバリアー発生装置を発動させる。もっとも、安定して使える時間があまりなく、システムとしてまったく未完成で、まだまだ不安定な装置なのだけど、今日この日のためになんとか間に合わせたそうだ。
これが対バリアーの切り札になる。
SSMが着弾した後に敵味方、二つのバリアー同士をぶつけて中和して無効化する。
ガシャーーーン!!
突き出した両手先に展開させたバリアーと相手のバリアーがぶつかり合って、激しく火花を散らす。
これは時間との勝負だ。
サイガー4の作り出す水流ジェットが唸りを上げて全力で機体を押す。
『バリアー展開時間残り、7,6,5……!!』
臨時にバリアー装置の制御担当をしているレイナさんが叫ぶ。
時間が短すぎる!間に合うか!?
その時!
せめぎ合っていた二つのバリアーがガラスの様に砕け散ったのだ。
……バリアーって割れるんだ……
激しく弾けて粉々になったバリアーに一瞬ぼーっとして、そんな事を考えてしまったが、すぐに意識を戦闘に戻す。
バリアーが砕け散った後、相撲で言う所の、がっぷり四つで組んだ体制になった。
この体制だとダイサイガーの頭部からは若干前かがみの機械竜のちょうど背中が見える。ということは、問題の背中に生える円筒のバリアー発生装置が良く見えた。
「頭部CIWS、作動!」
ヴァラララララ!!
照準を合わせてトリガーを引いて二門のガトリング砲を連射すると、火花を散らして弾かれる砲弾もあったが、何発か、何か所かには着弾して、全ては破壊出来なかったが、装置の何個かは破壊出来た、と思う。
しかし、そんなことは気にしないのか、おかまいなしに、両腕を締め付けてくる。ギシギシいう胴体。体制的にもベアハッグに近い、密着して直立に近くなってしまったので、背中が見えなくなって、射撃が出来なくなってしまった。
しかも、腕力はあちらの方が上なようで、機体はギシギシと拉ぎ、ユレームも歪んでいく。
なんとかこの体制から脱出しないと……と、両手のレバースティック=両腕、左右のペダル=両足に対応した格闘モードの操作でもがいてみるが、なかなか好転しない。
もたもたしている内に、締めがよりきつくなってくる。
出来るかどうかはわからないけど、やるしかない!
「せやーー!」
大きな声で気合を入れて、両手は握れそうな場所をしっかり握って、左手は引き、右手は前へ押して、内股から右足で相手の足を引っかけて、柔道の大内刈り(っぽい)技で、そのまま前へ、相手の後ろ方向へ倒す!
ドドウ、とコケてくれる機械竜。
こんな所で、体育の授業でやった内容が役に立つとは思わなかった。
そこで少し距離を取る。
海中に倒れた機械竜は沈んだまま浮き上がってこない。
まさか、あのまま……?と、淡い期待を抱いたが、そうはいかなかった。
ドドッドン!
海中から飛び出た飛翔弾の何発かが対処する間もなく被弾する。また機体がグラリと傾く。
『胸部・背面に被弾、超電発電炉区画に損傷!』
『加圧機異常運転、一次冷却系ポンプ停止』
『圧力容器内圧力下降、200気圧を割りました』
『一次系温度340度以下、復水器の機能低下』
『二次冷却系ポンプ停止、蒸気発生器停止』
「火災が発生してる所は消火を急いで!故障個所は再チェック!死んだ所は代替回路にバイパスして!なければ回路切断!」
ダメコン担当の南原さんの各部の被弾報告に続いて、機関の異常も制御OSから音声で次々と知らせてきて、警告ランプが明滅し、ブザーが鳴る。
『……出力が低下したまま、上がらない……どんどん下がってる……このままだと動けなくなる……!』
ずっと発電量を見ている竜崎が叫ぶ。
幸い、損傷の程度はさほどではなく、壊れたのは外側だけで、内部カメラによると機関室に火が出ているとかそういう事はないのが救いだけど、なんらかの異常が発生しているのは間違いない。
『どうすれば……?』
「直接、機関室に行けばなんとかなるかもしれないけれど……」
『……私が、行く……行ってなんとかする……!』
「竜崎!?」
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