第44話 緊迫、サイガーマシン内部潜入!
超電発電炉のあるサイガー2のパイロットの竜崎はダイサイガー状態の機関士も兼ねている。
現実的に直接機関部にアクセスできるのは竜崎しかいない。
……いないのだけど……
「しかし、内部を移動して機関室だめたどり着くのはかなり危ないよ?」
『私が行くしかないんだろ!?大丈夫だから!行けるから!』
「……わかった、頼む。じゃぁ南原さん、内部図面からナビしてあげて」
『わかったよ、任せて!』
『んなもん、いらねーから!一人で行けるから!』
『でも、迷うよ……?結構複雑だよ?』
『…………』
『ね?もう時間もあんまりないしさ?』
『…………わかった……頼む…………』
そうと決まれば早くしなければならない。
まず、スーツやヘルメットと繋がっているケーブルや邪魔になりそうな酸素ボンベなんかを取り外し、最後にシートベルトを外してシートから自由になる。身体は自由にはなったけど、これからは機体の少しの挙動にも影響されるので、かなり不安。
今まで座っていたシートの固定を外して前方へスライドさせてどけると、ハッチが現れる。というか、床面ほとんどハッチと言えるほど大き目。そのロックを外す操作をしてスライドさせると六角形の開口部が現れた。そこから吹き出した、ムワっとした空気はねっとりしていて、湿度が高く、そして熱い。
実はこの通路は搭乗する時にシートが通って来た所なのだけど、実は合体する前の戦車形態のコクピットの時はシートの背面だった所。これがダイサイガー形態になった時に90度回転して床面になった。なので、それまで正面にあった風防部分と、コンソール類も天井部分へ移動している。今の正面は戦車の時の下方向の視界を確保するためのディスプレイがあった所。
意を決してそろそろと、梯子状になっている凹みに足をかけて、しっかり手すりを握って、恐る恐る一段一段降りていく。
コクピットから出ると匂いが変わった。
新車の匂いから、鉄と油と機械の匂いに。
コクピット内ではSFな機械で埋め尽くされている印象だったのに、意外とこんな馴染みのある匂いになるとは思わなかった。
「まだまだ機械部品で動いてるのね」
なるべく軽く造るために様々な新素材が使われているらしいが、強度の関係で金属が使われている部分も多くて、摩耗する部品、特にベアリングとかはまだまだ金属製らしい。
それにしても……暗い……
一応、照明は点いているし、周囲の光量が減るとスーツの一部が自動で発光するように出来ているのだけど、それだけではとても明るいという所まではいかない。ただ、高い所はかなり苦手だから、暗くて奥の方はほとんど見えないのでそういう所は助かっている。
……それに加えて……
「……暑い……」
空調が効いていたコクピット内と違って、内部は温度も湿度もかなり高い。汗が止まらない。スーツには体温調節機能が付いてるのだけど、それでは間に合わないっぽい。
スーツと言えば、ようやく慣れてきた。最初はどうなるかと思った。ありえなかった。ほとんど裸なのだもの。最初は精神を保つので必死だった。
機関室自体はサイガー2に搭載されているので直線距離だとそう遠くはないのだけど、炉は分厚くて頑丈な外殻に守られていて、出入口は一か所しかなく、更には変形する過程で内部は複雑になっていて、かなり遠回りしないと入れない構造になっている。
気は急くのだけど、いちいち2本のランヤード(命綱)のフックを交互に付け替えながら進んでいくので、あまり距離が稼げないのがもどかしい。気持ちだけが焦る。
5mほど降りた辺りで最初の指示がきた。
『そこにハッチが二つあるでしょ?その二つの前の方を開けて』
「えっと……確かにハッチ二つあるけど、どっちが前でどっちが後?もうわかんねーよ……」
微妙に挙動する縦に通っている通路?で梯子に捕まりながら、ハッチを開けたり閉めたりするのも一苦労なのだけど、とりあえず大きい方をまず開けてみる事にした。なぜ大きい方にしたかっていうと、小さい方はどう考えても人が入れるようなサイズではないので。
壁面の手すりをしっかり握って、その大きい方のハッチの方へ移動してロックを外して、一つ目の扉を体重をかけて押し込むように開けてみると……
外れだった。
そこにあったのはせり出し式の30mm4連装ガトリング砲座の格納庫。
装置自体がかなり大きいので格納庫自体もそれなりの広さがある。そういや、座学の内部図解の説明で見たっけ。非常時は人が操作しても撃てるけど、普通はオートで撃つ。ただし、まだ一度も使ったことはない。同じような砲座が別の何ヶ所かにも配置してあったように記憶している。
ということは、もう一個の狭い方のハッチ……?あそこに入るの……!!!???
合体したダイサイガーは120mを超えるかなり巨大な構造物なので、内部は一応人が通行できるように作られてはいる。作られてはいるが、それはなんとか人が通ることが出来る程度だし、それも格納庫での通常の整備のためで、こういう戦闘中とか非常時に使う想定では作られていない。
諦めて縦孔に戻って、もう一個のハッチを開けると、思ったより広いがそれでも狭いものは狭い通路が口を開けた。その狭い狭い通路にまず手を差し入れて手すりをしっかり掴み、体を引っ張り込んで徐々に潜り込ませていく。これならなんとか進めそう。
だけど、しかし……
「……胸が……めっちゃ邪魔……」
「これから時間を稼ぐ!出力をなるべく絞って、その分は超電バリア展開の為にまわして!後、なるべく激しい挙動は控えるように戦うから!」
『『『了解!』』』
「あと、レイナさんは竜崎の代わりにエンジンの調子を見てて!発電量だけ注意しておいてくれればいいから!」
『う、うん、わかった!』
それだけ指示してから、ようやく浮上してきた機械竜とにらみ合う。
そうは言っても、回避すれば動く、攻撃しようとしても当然動く。
特にこけてひっくり返らないようにしないと。
竜崎が機関室にたどり着くまでの戦闘の流れを組み立てを考えて、まず距離を取れる飛び道具を選択する。
「超電スピーナー!!」
音声入力すると、脚部に装着されている左右で二基の巨大なハンドスピナーが回転しながら射出され、それを両手で受け取ると手のひらを軸にギュンギュンと回転する。
「シュート!!」
ガギャーーーン!!
超高速で回転するハンドスピナーを投擲するとギュンギュン回りながら飛んで行って命中すると火花を散らして一部を破壊してまた手元へ戻ってくる。続いて、
「背部ミサイル、良く狙って!」
ドウドウドウッ!
背中側にあるVLSセルが開いて、大きく弧を描いて10発のミサイルが飛翔し、見事に命中した。
……が、あまりダメージは与えられかったようだ。一部命中した部分は破壊出来たものの、さっき完全に壊し損ねた、まだ一部機能が生きているバリアーに阻まれた。しかしこれでいい。
次は機械竜の反撃。
指先や全身にあるトゲトゲがロケット弾?になって、それを連射してきた。
「バリアー展開!」
『バリアー展開!!』
間に合う?次々と当たるロケット弾。
幸い、なんとかバリアー展開が間に合ったようでダメージはない。
でも被弾するたびにその衝撃でグラグラと巨体が揺れる。
中を移動する竜崎のことはかなり心配だが、構っていられない。
近接戦闘にならないように槍状の武器を使う事を選択する。
「ダイ・サイガー・ジャベリン!伸びろ!!」
脚部から伸縮自在の巨大な槍が折り畳まれた状態で飛び出し、特殊警棒のように真ん中から両方に伸び、収納されていた穂先が飛び出た状態を両手で持って構える。これは、振るうと良くしなって殴るも良し、突くも良しの便利な武器だ。
その長さはダイサイガーの身長より長く、最大130mもあり、太さは一番太い所で5mぐらいで、ほとんど塔だと思う。材質は軌道エレベーターを建設する時のケーブルに予定されている炭素繊維で作られているらしい。それならこの強度も納得だ。
そんな大きな槍をブゥンブゥン振り回し、しならせて威嚇する。距離を取って油断しないように対峙する。
そして、間を開けて反撃されないように連続して攻撃を叩き込む。
「ダイサイガー・レーザー!」
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