第35話 ジョシカイの攻防
二人ともフーローへ入った後はかなりラフな格好で、私も用意されていたラフな服に着替えて向かった先は居住区の一室だった。
南原さんは微妙に可愛らしい服になってて、竜崎さんはじゃーじィー?というタイプの服になっている。これが寝る時の服装っぽい。私のもそういう感じ。
「この部屋は私たちが合宿中にあてがわれた部屋でね。少し広めなの」
寝台のあるさっきまでいた部屋と違ってフラットで、二回りほど広くて出入り口の付近だけ一段下がっている。そこに恐らく寝具とみられるものが三組放射状に並べてあり、その中心には台の上に乗った小さな木材らしいものが放射状にに配置してあった。それと隅の方には白くて四角い箱。確かレーゾーコと呼ばれてる食品や飲料他を低温で保管するための装置だ。これに近い道具を私たちも使ってる。
「そこで靴脱いでね」
言われるまま入口で靴を脱いで上がるが、彼女らのはちゃんとした靴ではなく、もっと簡易で脱ぐのも楽そう履物を履いていた。そういえばさっきまでいた部屋にも同じ履物があった気がする。あれは室内移動を楽にするために使うのか。次からはあれを使おう……
「適当に選んで。寝転んでも座ってもいいけど、マジ寝はダメよ」
寝具のどれか選べということだろう。適当に一番手前のを選んで座ると、続いて竜崎さんが座ると、南原さんは白い箱を開けて中から取り出した飲み物を配りはじめた。
ちなみに竜崎さんはおフーローに入った後は、視力を矯正するため?の器具を鼻と耳に引っ掛けて目の前に装着しているので更に別人度が増している。
「とりあえず、お茶。あ、予備はまだあるから欲しければ自分で取ってね」
「ありがと……」
「あ、ありがとうございます……」
オチャー……あの、確か甘かったり苦かったりする不思議な味のする飲み物だ……
「いただきます」
容器や色やら少し観察してから、ねじって蓋を開けて口に含んでみる。あ、苦いタイプのヤツだ。
「じゃぁ電気消すよー。nagi、電気消して」
南原さんが合図すると照明が消されて暗闇に包まれる。真っ暗だ。
……もしかしてこの暗闇にまぎれて襲われたり……は、今更しないか。
とか、ドキドキしながらそんな事を考えていると、真ん中に置いてあった木材に照明が灯され、ぼんやりとだが左に南原さん、右に竜崎さんがいることがわかる。
「あ、これは人工の焚火なんで、火事の心配はないんで安心してね」
照明を点火したのは南原さんで、竜崎さんは腹ばいで寝転びながら枕を抱えて照明を見ている。照明は見た目、本当に木材が燃焼しているように見えるが、実際に焼えているわけではないみたい。かなりリアルに見える技術で作られていて延焼しないか心配になるが、安全な焚火らしい。しかし熱はまったく感じないから不思議な感じ。
「……さて……、これから女子会に移るのですが……女子会といえば!当然、恋・バ・ナ、だよね!!」
「助詞、カイ?コ・イバ・ナー……?」
「……いや、しないし……」
「ちぇー、せっかく恋バナするの楽しみにしてたのにー!」
いきなり始まった、よくわからない単語の前振りに戸惑う私に、竜崎さんに即否定されて、ちょっとむくれる南原さん。
しかし、ジョーシカイ、コイバナーとは、なんじゃらほい。
「ああ、外人さんにはわかんないか。女子会は女の子だけ集まって内緒話すること。恋バナってのは恋愛の話ね。好きな人は誰だとか、誰が誰を好きとか、あの二人最近いい感じとか、そういう話?」
「なるほど、レンーアイ……恋に愛……ジョシィーカィにはコイーバナ……?」
説明を聞いて納得する。まぁ私たちの社会でも、女子が集まればかなり盛り上がる話題の筆頭で、そういうのはいつのどこの人類社会でもそう変わらないんだろうな。当然興味がないでもないので、そういう話もじっくりしてみたい気はするけれど、さすがに今じゃないだろう。
……そんな風に納得したのに、いきなり南原さんの爆弾発言に前のめりになる。
「あ~あ、ざんねーん。つい最近マジ告白して、盛大に、壮絶に、ド派手に爆死して見事に振られちゃった話をして、超傷心の私を慰めてもらおうと思ってたのにな~!残念だなー!でも仕方ないね!またいつか、ね!」
「……んんッ、ちょッ!?」
「えっ!?」
「二人ともやっぱり興味あるんだー、ふふふ、でもまた次の機会に、ね」
マ!?なんだかんだ言ってもそういうのに興味津々なお年頃ですから!でも振られたにしてはあんまり落ち込んでなくて元気そうなの、そこら辺をもっと詳しく!!イニシャルだけでも!
……と、思わないではなかったけれど、そこは華麗にスルーして本題に入るようだ。
「……まぁ、冗談は置いておいて……さて、どこから聞こうかな。や、告白話は冗談じゃないけど。一応、芹沢くんから簡単には聞いてはいるけど、本当に簡単に聞いただけなんで」
(仮想)焚火の様子を見つつ、炎の調整をしている南原さんがそう切り出した。実際に燃焼している訳ではないので気にせず直接触っている。
「とりあえず、改めて自己紹介からしよっか」
木材を出し入れしていると火力が安定してきたようで、焚火はそのままに、枕に身体を預けて話を続ける。
「まず、私は南原瀬良、よろしくね」
「……竜崎美晴……」
「……私はシゥェリ・ヴァン・ュルリイューナといいます……発音難しいと思うのでレイナと呼んでください。ちなみに私の年齢はあなた達の1年程度年上になるはずです」
「……それで、その発音が難しい少し年上の人は、いったいどこのどういう人?前にも一度、私たちの前に現れたのあんただよね?」
「そうそう、あの時は驚いちゃった!だっていきなり突然現れて、地球狙われてるって言われたもんね!正直意味わかんないし!」
デスヨネー。
その問いに対して昨日同様の話した事を思い出して、言葉を選びながら慎重に返答する。
「……薄々は気付いていると思いますが、私は今あなたたちが今戦っている相手……この銀河よりもっとはるか遠くの外の銀河系から来た、この地球とは異なる文化・文明を持つ星の人間……いわゆる宇宙人……外星人なのです」
外星人なら略して外人って言っても問題ないはず……だよね?
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