第11話 これ、ホストのパネマジ写真やん!?

「さぁ、プリントアウトされましたよ。一枚目は真ん中の従来の単視点カメラで撮影した通常の写真、そして二枚目はこのシステムで撮影された写真です」

 プリントアウトされた二枚の写真をみんなで覗き込む。

「確かに……1枚だけ見るとわからないけど、比べてみるとちょっと違うかも……」

「でしょ!!」

 通常の写真よりピントが合うというか、距離感が正しく感じられる。ような気がする。

「集合写真より、一人ずつ、アップで撮るともっと違いがわかりますよ。どうです?一人ずつ撮ってみません?」

「ぜひ、お願いします!」

「じゃぁ女子から撮っていきますね!」

 まず南原さんから撮っていく事になったが、ノリノリのポーズで撮ってもらっていた。写真写りもきっと良いだろう。その次は竜崎。

 ……だったのだけど……

「……いや、私はいい」

「えー!?なんで!?」

 順番になって、また竜崎がごね始めた。

「あんま写真撮られたくないから……」

「なーんーでーー?撮ろうよー!」

「いや、だからいいって……」

「……もしかして、竜崎さんって……」

「……ん?」

「写真撮られたら魂抜かれちゃう系の人!?実は生まれが幕末?明治とか!?」

「んなわけないし!幕末じゃないし、明治でもないし!ちゃんと地歴生まれだし!」

 いきなりの時代劇ネタにクスリとなる。そういや今週の大河ドラマでそんな話あったっけ。

「ええー、じゃぁいいやーーん!撮ろうよ~!」

「せっかくの記念ですし……ぜひ撮りましょう?」

「…………」

 そんなやり取りが少しあったけれど結局、南原さんとおねーさんに今度は二人に押し切られる形で撮られてた。……けど、あまりにも仏頂面すぎて、おねーさんにリラックス、リラックス、スマーイル、スマーイルと散々言われて無理やり作った、引きつった笑顔ではあったけど。

 続いて男子。まず荒砥。さすがイケメン。カメラに向ける顔もばっちりだ。

 次に早乙女。あいつの事だから受けを狙うかと思ったけれど、意外と普通だった。

 最後に僕。……だったのだが……

 南原さんがまた変な事を言い出した。

「……芹沢くんに、ちょっとお願いがあるんだけど……」

「な……何?」

「ポーズ、お願いしていいかな?」

「写真の?」

「うん……ダメかな?」

「ああうん、いいよ」

 そんなことまったく考えてなくて、どうしようか悩むぐらいだったので喜んで承諾する。

「芹沢君、ありがとう!じゃぁ!」

 撮影スペースに二人で入って、顔の角度とかをあれやこれや悩み始めたが、一番こだわったのは手の位置とポーズだった。

「やっぱり、撮ってもらうなら手の甲の側だよね……」

 何やらぶつぶつつぶやきながら僕の手を握ってあっちへやったりこっちへやったりして、途中からおねーさんにお願いしてカメラから見たフレームまで確認しながら、表情や顔の向き、そして特に手の位置に注文を付けて、終いには指先の演技まで指導されて、最終的にはアゴに手を添えるような、なんだかよくわからないポーズのまま撮らされた。イメージとしてはホスト写真。たぶん。見たことないけど。


「さぁ、出来ましたよ!」

 撮影での感想を言い合っている間に出来上がった、少し大きめにプリントアウトされた写真をおねーさんが一枚ずつ出してくれるので、みんなでのぞき込む。

 一枚目、南原さん。問題なく美少女だ。ばっちり笑顔が可愛い。家宝にする。

 続いて竜崎。引きつった笑顔に目つきが怖い。元々の素材が良いのだから、もっと普通に笑えばもっと良くなったであろうにもったいない。続いて荒砥。普通にイケメン。表情も決まっている。次、早乙女。普通に早乙女。

 最後は僕。だったのだが……これはちょっと……

「それで目線隠したらパネマジだわ!手フェチの女子が大量に釣れるぜ!www」

 見た途端、早乙女はゲラゲラ笑い転げてて、荒砥と竜崎は笑いを堪えるように目を背けている。クッ……

 ポーズ取ってた時も不安しかなかったが、熱心な演技指導の末に出来上がった写真は思ってたよりもっと変だった。

 穴があったら入りたい……

 しかしそんな三人とは対照的に、南原さんだけはめっちゃ満足してて、かなり喜んでいる。

「芹沢君、ありがとう!これ、絶対大事にするね!」

「いや、もうすぐに捨てて……」

 最終的に人数分プリントアウトしたのと、そのデータをもらった。でも、みんなの写真はともかく、自分の写真はもう一生見ないんじゃないかな……

「じゃぁみなさん、今日を楽しんでね!後、宣伝よろしくお願いします!」

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