最終話 転校生

「よし、完成した~~~!!」

「なんとか間に合ったね……」

「間に合って良かった……」

 延期されていたオリエンテーション合宿の日程も決まり、それに合わせて合宿のしおりの編集作業も再開した。

 とにかく何をするにも始めてだし、今回はPCでの作業が中心で、南原さんと荒砥はPCはさっぱりだったけど、僕と竜崎がなんとか使えたので、二人で教えたりネットで調べたり、みんなでああでもないこうでもないって言いながら、文字を打って、地図や図を作って、イラストを描いて、編集してなんとか原稿を完成させることが出来た。

 特に竜崎は今回大活躍だった。表紙とかほとんど一人でやってたし、しかもイラストがかなり上手かった。正直、こう言っちゃ悪いが描いた人が竜崎とは思えない可愛い絵を描く。ちなみに竜崎には描いた人は絶対に秘密にしてくれと厳命されてて、描いたのは4組の担当者ってことにしておいてと言われている。その内、バレそうな気はするけど。

 まぁ、多少苦労したとしても飛行機を空中で合体させてロボットにして謎の異星人のメカと戦うよりかは全然難易度が低い。

 そして完成した原稿を印刷して試しに製本してみる。

 うん、問題ないようだ。

 ずっとPCのディスプレイ上でしか見ていなかった文章や絵や図が紙の上に印刷されて本というリアルな物体になったのを自分の手でパラパラとめくると、更に成し遂げた感を押し上げて、感慨深いものがある。

 後、編集に関わったメンバーの分だけ、全ページカラーのも作ってみた。こうすると竜崎が描いた渾身のイラストをカラーで拝むことが出来る。やっぱりカラーだと賑やかだ。特に表紙が良い。

 最後は職員室の町田先生に見せに行く。

「完成しました。最終チェックをお願いします」

 提出された完成した冊子をペラペラめくる様子をドキドキしながら見守る。

「……OK、お疲れ様!良く出来てる!」

「よし!」

「良かったー!」

「後は2クラス分と何部か予備と……それに私の分のコピーを取って、明日朝のHRの時間までに配っておいてください。それで本当に終わりです。ここまでくるのにかなり色々大変でしたが、お疲れ様でした」

「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」


「そういや今日、転校生が来るらしいね」

「女の子らしいよ?」

「なんでも海外からの留学生?だって!」

「可愛い子ならいいなぁ!」

 次の日の朝、クラスメート達が何やら盛り上がってるので詳しく聞いてみると、今日から転校生が来るという話で、それについて適当な期待やら感想をワイワイ言い合っているようだった。せっかくなので、僕もそのビッグウェーブに乗りたい気持ちもあったのだけど、僕と竜崎は担任が来るまでにやっておかないといけない作業がある。

「レクリエーション合宿の冊子出来たから、黒板に書いてある順番に取って、真ん中で折って重ねてなー。その後でホチキス回すから真ん中で閉じれば完成するからー」

 僕がそんな説明を言いながら製本の順番を板書している間に竜崎が裏表印刷されたページを最前列の机に並べていく。

「順番、裏表、上下に気を付けろよ~。印刷不備があったら交換するからーわからなかったら担当者に聞いてー」

「おー、とうとう完成したかー!」

「お疲れさんー!」

「一応、印刷ミスがないようにコピーしたつもりだけど、もしかしたら失敗したのがあったりするかもしれないからそれも一度確認してなー。わからないことがあったら聞いてなー」

 転校生の話題は一旦おいておいて、クラスメイト達は並んで一番から順番に取って重ねていって全部受け取ったら各自席に戻って折っては重ねていく。


「よーし、席に着けよ~」

 目立ったコピーミスも他のトラブルなく、各自折り終わって重ねて、ホチキスを回して製法作業している辺りで町田先生が入って来た。

「あ、もう製本ほとんど終わってる?これから合宿当日まで折に触れて必要だから忘れないようにね」

「「「はーい」」」

 そこで僕らも、余った予備の分を回収して席に戻る。残りもちゃんと想定通りの数で、後でこれも予備として製本しておこう。これでようやく完全に肩の荷が下りた。

「作業しながらでいいから聞いてください。薄っすら話は聞いてると思うけど今日から転校生が来ます。名前は日本人なんだが、ほとんど日本での生活の経験はなくて留学生だか帰国子女ぐらい慣れてなくて、ついでに言うと芹沢の遠い親戚みたいなもんだ。みんな仲良くしてあげてね」

 へぇ~、今日の転校生はなんか色々事情が複雑なんだな。つか、僕の親戚?そんなのいたっけ……?そんな紹介を聞いていると、その転校生が入ってきた。

「じゃぁ、自己紹介をお願い」

「芹沢・ュル……麗奈です、よろしくお願いします」

 ……あれ?……どこかで見たような…?でも全然印象が違ってて……髪の毛の色がたぶん違う……?普通?の髪の色になってて……でも元は何色だったかな……?たぶん瞳の色も……

「……は、ハァッ!?」

 それが何か気付いたっぽい素っ頓狂な声が後ろの竜崎の席から聞こえた。

 ということは、竜崎も僕も知ってる人なのか。

 ……えっと……思い出せそうなのに、思い出せない……喉まで?出かかってるんだけど……

 ……あ、こっちを見て手を振りながら笑ってる?

 ……ん?麗奈?……れいな……レイナ……!?

「……あ!?えっ!?ああ~~~っ!?」


 おしまい

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戦え!超電動力 ダイ・サイガー!これは人類文明の対処能力を遥かに上回る、地球・銀河・宇宙を超越して降り掛かった巨大な厄災に愛と青春と友情を賭けて戦い宿命に抗って正義を信じ貫いた若者達の運命の物語である 岩ノ樹 伸太朗 @iwanoki_sintarou

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