第7話 虹色の髪の少女
結局、ほとんど作業進まないまま下校時間が来てしまったので帰る事になってしまった。
「あ、私かばん取ってくるね」
「……オレも」
そう言って南原さんと荒砥は3組より手前にある4組の教室へ入っていくのを見送って、残りの僕と早乙女と竜崎も3組の教室へ鞄を取に入る。
「……お前、南原さんが狙いかよ……」
「バレた!?」
「バレるもなにも……まぁ、仲良くなれたのはいいけど……」
「でもまさか、あの荒砥まで来るとはね!驚いた!」
「……」
「おまたせー!」
最後に職員室に寄って町田先生に鍵を返却する。
「仲良く出来そう?」
「今度の週末、みんなでハーバーシティへ遊びに行くことになりました」
「そう、いい感じなのね。良かったわ。でもくれぐれも気を付けてね」
「ありがとうございます」
「一応、連絡のために誰かの携帯番号とアドレス教えておいてくれるかな?」
「ああ、はい、じゃぁ僕ので」
すっかり暗くなった駅までの道を5人で歩く。
フォーメーションは先頭が僕と南原さんと早乙女でまだ馬鹿な話をしてて、その後ろにそんなやり取りを爽やかなイケメン面でニコニコしながらたまに相づちを打ったりちょくちょく話に加わってくる荒砥に、少し離れて相変わらず仏頂面の竜崎という感じ。当然会話には加わらない。この爽やかイケメンはいいとしても、竜崎には話を振ろうか悩むけど、無視されると凹むので躊躇してしまう。ちょうどいい話題でもあればいいんだけど。
「そういや、竜崎~、PC得意なの~?」
お、早乙女、ナイス!さすが陽キャ!
「ああ、うん、まぁね……」
いきなり話を振られて驚きつつもちゃんと返事をしたくれたので、僕もこの機を逃さずしっかり話に乗る。
「そうそう、正直かなり意外だった」
キッっとまた睨まれるが、ここでひるむわけにはいかない。
「竜崎がダメなら、まさか今の時代に紙に直接切ったり貼ったりしないといけなかったからなぁ。今時、昭和かよ!www」
「本当本当!私なんて、PC触るのほとんどはじめてだよ!」
「え?中学の時は触らなかった?」
「一応授業では触ったけど、よくわからなかったんだよね……」
てへへ、と自嘲気味に笑う。
「そうなんだー」
「さては、竜崎はPC出来るからって課題押し付けられた系!?」
「ま、まぁ……」
そういや中学から不登校気味になったんだった。その頃の話題にはあまり触れない方がいいかもしれないので話題を変えた方がいいかもしれない。
「私は、課題さっぱりわかんなくて苦労したよ~。苦労しすぎて記憶を封印したぐらい!」
「ああ、それで!www」
「でもそうもいっていられないんで、今回は頑張る!明日からよろしくね、竜崎さん!」
「あ、うん……」
そんな感じでああだこうだとワイワイ言いながら帰り道を歩いていると、暗闇の中をぼぉっと光る……金髪……?いや、虹色の……長い髪の女性が少し先にいるのに気づく。
更には良く見ると瞳の色まで虹色っぽい人影が街灯に照らし出されていた。玉虫色……といえば、あんまり良くないニュアンスに受け取られる場合が多いから、つやつやした輝く綺麗な玉虫色かな……?そういう新しい髪の染め方も開発されたんだろうか。
暗くて良くわからないが、顔つきはあまり日本人には見えなくて外人っぽく見える。暗くてはっきりわからないが整っているように見える。
服装がまた変わっている。良く知ってる服とは質感が違う感じだ。
そんな暗闇でやたらと目立つ猫の目のように光る瞳でじっとこっちを見ている。
会話が途切れ、通り過ぎようとしたその時。
「……セリザワ・コータローさんですね……?」
「……え!?……僕!?」
いきなり名指しされたのでかなり驚いたが、そんなの気にする様子はまったくなく、話を続ける謎の美少女。
「……気を付けてください。地球は狙われています」
「へっ……?」
いきなりの状況に聞き返す間もなく、それだけつぶやいて、謎の虹色の美少女はまた闇に消えてしまった。
……しばらく何のことかわからず、5人とも消えていった暗闇の方向を見つめて呆然としてた……
……が、早乙女の言葉で我に返る。
「……一介の高校生に地球の危機なんて大層な事を言われてもな……」
「……ですよね……」
「いきなりすぎて変質者……?とか思ってしまうね」
今いきなり起こった事に躊躇してしまって、でもそれが仮に本当でも苦笑いするしかないし、どうしようもないので、また会話を再開する。
「……そういや今日はほとんど雑談ばっかりだったけど、明日からはちゃんと作業しような……?」
「ほんとほんと、真面目にやれよ君たち!」
「お前が言うなッ」
通りすがりの女の子のうわ言みたいなのを真に受けるなんてのもどうかとは思うのだけど、内容が内容なだけにぬぐい切れない漠然とした不安は残ってしまう。
はっ、バカバカしい。
この時はそう思って、不運にも通り魔に遭ってしまった。それだけの事。明日にはすっかり忘れて、またいつもの日常だろう。
そう思い込むことにした。
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