第47話 必殺!轟沈、敵機械竜の最後!

「……きっ……きさんっ……!」

 …………

「……ざきさんっ……竜崎さ……!」

 ……もう……そんなに叫ばなくても聞こえてるって……

『竜崎さんっ!!』

 わっ、私っ!

「……ん、ああ…………」

『良かった!気が付いた!』

「うん、まぁなんとか……」

 ようやく戻った意識で、自分の置かれた状況を確認する。

 なんか手足がブラブラしてる……身体浮いてる……?

 えっと……どうしてこうなったんだっけ……

 ぼ~っとした頭で記憶を辿っていく。

 ……フックを付け替えようとして手を伸ばして……

 ……飛び移った時に足を滑べらせて……ヘルメット越しに頭をしこたまぶつけて……

 そうだっ!まだ生きてるっ!!

 というか、下、海ッ!?

「……だ……大丈夫……、だから……」

 主・副のハーネスを付け替えながら進んでたのが良かった。

 とりあえず、なるべく下を見ないようにハーネスを手繰ってよじ登る。上を見ると7~8メートルぐらい落とされたみたい。多少、落ちた時にぶつけて擦り剥いて血がにじんでる所もあるけれど、身体はまだまだ大丈夫そう。

 一度落っこちたことで、向こう側へは楽に渡れたので、無事に目的のハッチの前に到着することができた。

「これ、どうやって開けるの……?あ、これか」

 ハッチ自体はさっき出てきたのより大きく、分厚かったけどその分電動で、スイッチ一つで開けられたので助かった。

 中に入ると、外の騒々しさがかなり軽減されて、何より四方に壁があって足場もしっかりしてるので幾分ほっとする。入った先は目的の超電発電機のエンジンルームだった。更に頑丈そうな格納容器に収納されているの超電気炉自体は損傷してなさそう。見た限りでは火が出ていたり、大きく壊れたりはしていない。良かった……

 元はSFな動力なはずなのだが、超電気で作った熱でお湯を沸かしタービンを回して電気を作っているので厳密には超電気では動いていない。今の所、ダイサイガーは普通に電動なのだ。

 しかし、ここまで来たからといって問題が解決するとは限らない。

 専門的なマシントラブルならお手上げだ。

 とりあえず、超電発電炉を制御しているタッチパネルを覗いてみる。幸い、いつも家のPCで使っているのと同じOSで動いてるようだ。これならわかる。

 表示から解った事は、どういう理由かはわからないが、エラーが出たことで制御が止まっていたようだ。とにかく震える手でOKをタップしてエラー表示を消す。

「とりあえず、再起動してみるからその間だけもうちょっとだけ待って」

『任せる!』

『落ち着いて、確実にね』

『お願いします……』

 急いで終了の操作をして、もう一度再起動させるために電源ボタンを押す。

 ……はやくはやくはやくはやく……!!

 いつもならすぐに終わる時間なのに、やたらと長く感じる。

 そんなたった数十秒を祈るようにただひたすら待つ。

 BIOS画面からHOS11のタイトルが出て、自動で炉の制御アプリも起動する。

 OS再起動と共に炉も再始動したみたい。出力も回復し始める。

 最初は軽いヒュオォォォォという音が、徐々にグォォォという炉室全体を揺るがす力強い轟音に変わり、発電量を示すアナログな計器の数字がみるみる上昇していく。

「やった……!復活した!」

 恐らく、被弾の衝撃で安全装置が働いて停止していただけなのだろう。定格の発電量まで回復したのを見届けると全身から力が抜けて、ヘナヘナとその場に崩れるように座り込んだ。

『超電発電炉、再起動成功!出力回復!発電量上昇!』

「……やった……!」


「竜崎、ありがとう、これでいける!」

『……良かった……もうコクピットまで戻る気力ないから、ここにいる』

 声を聴く限り、かなり疲れているようだ。気力だけでここまで頑張ってきたのだろう。

『なるべく安全運転でお願い。必ず勝ってね』

「無事に帰ったらみんなで打ち上げしよう!」

『あと、合宿の冊子も完成させなきゃね……!』

 復調したジェネレーターのお陰で発電量が戻ってくる。

「ここで勝負をつける」

『『『了解!』』』

「戻れ、ジャベリン!」

 伸ばした時とは逆にジャベリンを畳んで足に格納して両手を自由にする。

「ミサイル一斉発射!」

 残っている全セル分の残弾を叩き込む。

 左右のペダルを限界まで踏み込んで爆炎に紛れて走って距離を詰める。

 海に潜り込むぐらいに身をかがめて、下半身に組み付いて暴れる敵機械獣を後ろへ倒す。

 そのまま足を両手で抱えて……そこからグルグルと、ジャイアントスイング!!

 ダイサイガーを海面に浮かせている両足に付いてる水流ジェットも大出力で稼働してシステムが悲鳴を上げる。

 そのまま機械獣を振り回して……!!

「ダイ・サイガー・トルネードサイクロン!!」

 ゴォォォォォッ!

 育成された巨大な竜巻が機械獣を斜め上、空高く巻き上げて空中で拘束する。

「地が裂け!炎が暴れ!雷を呼び!敵を倒せと天が叫ぶ!」

「焼き砕け!必殺!ダイ・サイガーアタァック!」

 両手を大きく振りかぶると光弾が飛び、サイクロンで拘束されている敵機械獣の命中した部分が高温で熱せられたように赤銅色に染まる。

 そこから助走をつけて……!

 ガキューン、ガキューン、ガキュン、ガキュン!ガキュガキュン!!

 大腿に装備されている水流ジェットが唸りを上げて、大きな水しぶきを上げながら海面を全力走る。拘束時間はそう長くない。最初はゆっくりだったけど徐々に加速をつけて……大きく沈み込んで!

 加速した重い機体が、脚力と背部他のジェットエンジンから得た推力で大跳躍するっ!

 グルングルンと徐々に横回転も加えて、海・空・太陽・空・海の視界ローテーションが早くなり、海面がどんどん遠くなって高度が高くなっていくのがわかる、その頂点で空と海が逆の水平線のロールに変わり、見上げた海面の上にはタイフーンに拘束された敵が一瞬見える!

「あそこっ!」

 大きく錐もみしながら上空から機械竜目掛けてダイサイガーの巨体を制御する。

「ダイ・サイガー!クエイク・ラッシュ!!!」

 グァシャァァァァン!!

 超電バリアを集中させて強化したキラキラとスパークする脚部が、サイクロンで空中に拘束されている機械獣に突き刺さって上半身を吹き飛ばした後、残った下半身も崩れ落ちて、海中に没した後、大爆発を起こした。

 大きな水柱が立ち、辺りの海面が沸騰して、一緒に巻き上げられた粉々になった部品や破片と大量の海水が雨のように降り注ぐ。

 それが敵機械竜の最後だった。

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