Aランクパーティを追放され、ソロでダンジョン配信を始めたら迷惑系認定されてしまった僕だけど、不死身スキルがバズって、美少女と攻略することになってしまった。なので今更戻って来いと言われても、もう遅い
第44話 【実況】#6 ワイ氏、Aランクダンジョン『死霊の臓物』に挑戦
第44話 【実況】#6 ワイ氏、Aランクダンジョン『死霊の臓物』に挑戦
クソ……腕が痛い……。
「はぁ……はぁ……はぁ」
僕は浅い呼吸を繰り返しながら、女に切り飛ばされた右腕に、きつく包帯を巻きなおす。
あの雌豚……S級探索者だかなんだかしらないが、必ずオークの雌の体に繋いで、文字通りの雌豚にしてやる……。
それはそうと、この体はもう長くは持たない。
早く、準備をせねば……。
僕は震える人差し指を自らの血に浸し、喉首の下あたりに魔法陣を描き始めた。
そもそも、この肉体は、僕――フランケ・シュタインの物ではない。
本来の僕は、こんな筋肉ゴリゴリのマッチョではなく、ベッドから起き上がるのもままならない、虚弱な少年だったのだ。
このままでは10歳を迎えることなく死ぬ。
かかりつけの医者にそう言われた時、大貴族の父はある決断をくだした。
おっと――
言い忘れていたが、
こちらで言うところの『異世界人』だ。
僕の元いた世界では、血統が最重要視されており、どんなに力のある貴族でも、直系の子孫が絶えた時点で没落はまぬがれなかった。
従って、僕の父はなんとしても僕の命を存続させる必要があったのだ。
彼は金と権力に物を言わせ、若くて健康な人間を集めた。
そして、優れた医療魔法士を囲い込み、僕の世界では非合法とされていた、ある行為を僕に施した。
人間のキメラ化。
僕は無数の人たちの様々なパーツを、病魔に侵された部位と交換させられた。
内臓、骨、眼球、血液……。
18歳を迎える頃には、僕の体で交換済みでない箇所はほぼ一つもなくなっていた。
おかげで僕は健康を取り戻し、成人の儀でユニークスキルを得るに至った。
接続スキル。
それが僕の授かった能力だ。
なんという皮肉だろう。
まさに僕にぴったりじゃないか。
この頃にはすでに、僕は自分の肉体を改良することに憑りつかれていた。
もっと強く。
もっと逞しく。
もっと完璧な肉体を――
急逝した父の財産を引き継いだ僕が、屋敷にこもってどんな実験を繰り返していたかは、まあ説明しなくてもわかると思う。
でも、どんなに素晴らしい肉体を手に入れても、僕の心が満たされることはなかった。
今のこの体――筋肉増強のオートスキルを持つ戦士を騙して手に入れた――にもかなりの愛着があるが、それでも心から満足しているとはいえない。
一つには、幼き日の弱い体だった僕が、常に死と隣り合わせの生活を送っていたというのがあるだろう。
トラウマってやつだ。
僕はさらに人体改造にのめり込むようになり、ついに国を追われることとなった。
人里に居場所のなくなった僕は、あるダンジョンに居を構えて、引き続き実験を行うことにした。
自分の研究さえできれば、正直それ以外のことはどうでもよかった。
そうして幾年か過ぎた頃に、その男は現れた。
――これからこのダンジョンは地球という異世界に転移します
彼は僕にそう告げた。
――つきましては、あなたもぜひ一緒に転移して頂きたい。ああ、大丈夫。あちらの世界でもあなたの
その言葉通り、こちらの世界でも僕は材料不足に悩まされることはなかった。
むしろ、この日本とかいう国は人間が多いし、ダンジョン内にさらってしまえば、まず捜査が及ぶこともない。
まさに僕にとっては天国のようなところだった。
しかし、それでも僕が満足のいく成果を得られることはなかった。
――僕にとって最高の肉体はどこだ? 強く逞しく、それこそ
そんな物はないのかもしれない。
現実には存在しないものを僕は追いかけているのかも……。
そんな風に悩み始めた頃、僕は彼を見つけた。
スキル『無事死亡』。
外傷はおろか、毒や窒息などでも死なず、たちどころに復活する。
一度など、酸溜まりに落ちて、骨だけになったところから元通りに戻るところを目にしたこともあった。
――これだ
僕は確信した。
長年求めてきた、究極の素材。
死の恐怖から僕を解放してくれる、唯一の肉体だ。
実際に彼を見た時に、一目でわかった。
僕は永遠のパートナーを見つけたんだと――
「はぁ……はぁ……はぁ」
失血で目がかすんできた。
しかし、どうやら間に合ったようだ。
「見つけたぞお!」
叫び声とともに複数人の足音が近づいてくる。
馬鹿な奴らだ。
わざと血の跡を残して、ここまで誘い出したことにも気付かずに。
僕は自分を取り囲むクズどもの中に、
ニチャア。
彼に微笑みかけると、最後の仕上げを行う。
「……おまえたち知ってるか? 人間は生首になっても7秒間は意識を保てるんだぞ」
「なにを言ってる?」
あのクソみたいな女剣士が眉根をひそめる。
猿共が。
思い知るがいい。
僕は片手を持ち上げ、自分の頭にドスっと注射針を刺した。
これは特殊な薬品で血圧の低下を抑える。
従って、生首になっても意識を失うことはない。
『#%$、*****ー@』
僕は最後の力を振り絞って、叫んだ。
「あれは――転移魔法!?」
トレ坊のなんとやらの女が叫んだが、もう遅い。
首筋に血で描かれた魔法陣が、淡い光を放った。
次の瞬間、僕の首から上はすっぱりと切り取られ、別の場所に転送された。
ゴーレムの真上にある転送魔法陣に。
「ひゃはははははは! 必ずおまえの体をもらうぞお!」
生首のまま落下しつつ、大声で叫ぶ僕。
1、2、3、4、5、6――
きっかり七秒後に、僕の頭はゴーレムの首の断面に到着する。
瞬間、叫んだ。
「チートスキル『接続』ぅぅぅぅっ!」
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