Aランクパーティを追放され、ソロでダンジョン配信を始めたら迷惑系認定されてしまった僕だけど、不死身スキルがバズって、美少女と攻略することになってしまった。なので今更戻って来いと言われても、もう遅い
第39話 【実況】#2 ワイ氏、Aランクダンジョン『死霊の臓物』に挑戦
第39話 【実況】#2 ワイ氏、Aランクダンジョン『死霊の臓物』に挑戦
「というわけで、本日はこちらのダンジョン『死霊の臓物』を攻略することになりました」
僕はドローンに向かって、ぺこりと頭を下げる。
「こんな状況ですが、皆様、本日もよろしくお願いします!」
《乙~》
《ニュース見て、慌ててDtube開いた》
《けっこうやばいことになってるみたいだから、気ぃつけてな》
ダンジョン入口の広間では、すでに幾人かの探索者が潜るための準備をしていた。
僕たち以外にも、ギルマスの要請に応じたパーティがいたようである。
「カシナートの人たちが見当たらないな……」
「彼らは少し前に出発したとのことです」
僕の呟きに、トレ坊リーダーさんがこたえる。
「他にも数組のパーティがすでに先発しているようですよ」
どうやら周囲の人たちから情報を集めてくれたらしい。
僕も
……まあ僕の場合は、群れを追放されて強制的に一匹狼になったんだけど。
《ところでオッズ氏、レベルが上がったんちゃうのん?》
「あ、はい」
前回の探索時、僕はボスモンスターを倒した。
その際に、膨大な経験値を得たのである。
「それじゃ、その報告からさせてもらいますね」
こほんと一つ咳払いをして、続ける。
「まずレベルが1から20まで上がりました」
《おおお、すげえええええ!》
《ていうか、レベル1だったの?w》
《今更だけど、よくAランクダンジョンのボスを倒せたよなあ^^;》
……恥ずかしながら、2年近く探索者をやってきて、レベルアップどころかモンスターを倒したのも初です。
《とりま、ステータス教えてよ》
《こんだけ一気に上がったら、数値の伸びもエグそう》
僕は心の中でステータスオープンと唱え、頭に浮かんできた情報を伝えた。
――――――――――――――――――――
探索者名: オッズ
ジョブ: 死亡遊戯者
性別: 男
年齢: 17歳
レベル: 1→20
最大HP: 1→1
最大MP: 20→20
攻撃力: 1→1
防御力: 1→1
魔法攻撃力: 1→1
魔法防御力: 1→1
素早さ: 9→9
運: 8→5
死: 9999→99999999
スキル:
・無事死亡 (ユニークスキル)
|
|___________死んでもズッ友
|
|___________往生極め
|
|___________来世に期待
――――――――――――――――――――
《 《 《 《 《 ぜんぜん成長してねえええええええ 》 》 》 》 》
…………デスヨネー。
《わいの目の錯覚かな? むしろ運が下がってるように見えるんやが……》
《おまいら、よく見ろ。死とかいう項目だけ死ぬほど上がってんぞ》
《死だけに》
「たしかにこの項目だけは、4桁も増えてるんですよね」
《で、どんな効果があるの?》
「わかりません」
しばし、コメントが途絶える。
《それじゃ、ステータスはいったん放置で、スキルの話にいこうか》
《いや、放置でええんか?》
《なんかこのやり取り、懐かしいわw》
「新たに獲得したスキルは、3つです。ユニークスキルの『無事死亡』からツリー型に伸びているので、このカテゴリーのスキルみたいです」
《各スキルの詳細を
僕は脳内に浮かんでいるステータス画面を見えざる手でタップした。
・死んでもズッ友
死んだ時に肉体が分離していた場合、各々を自分の意志で動かすことができる(効果時間:次に死ぬまで)
・往生極め
死ぬ時の痛みと苦しみを選択できる。小往生→1倍、中往生→10倍、大往生→1000倍
・来世に期待
次回に死亡から復活した後のステータスを前借りできる
再び沈黙するコメント欄。
《見事に見たことも聞いたこともないんやが》
《一番目と三番目はともかく、二番目のやつって使い道あんの?w》
《わいも思った。死の苦しみが1000倍になっても、ただ苦しむだけですやん》
《せやな》
いちおう言っておくけど、僕も死ぬ時は痛いし苦しいからね?
大袈裟にギャーギャー騒いでもリスナーさんが引くだけだから、だいたい黙って死んでるけど。
《三番目のやつがよーわからん。誰か説明プリーズ》
「前回の戦いを例として、考えてみればいい」
そう告げたのは、柊さんだ。
今日は兜を脱いでいるが、癖になっているのかいつもの
「もしあの時このスキルを持っていたら、最後に彼が自爆する際にはレベル1ではなく、レベル20の探索者として獅子の魔物に攻撃を加えることができたはずだ」
《なるほど! 自爆と同時に敵を倒してレベル20までアップしたはずだから、そのステータスを前借りできたってことか!」
「そうだ」
《そう聞くとかなり強力なスキルに思えるな》
《でもさ、レベル1から20に上がっても、彼の場合、ステータスが同じじゃん? 意味なくね?》
腕を組んだまま、黙り込む柊さん。
「…………同じではない。運が3ポイント下がっている」
ごめん柊さん。
それ、ぜんぜんフォローになってない……。
《まあまあ。とりあえずその二つは放置しとこうぜ》
《またかよw》
《好きだな放置》
正直僕もわけわかんな過ぎて、とりあえず放置する以外考えられない。
《死んでもズッ友だっけ? これは使えそうじゃね?》
《そうか?》
「僕も使いようによっては、役に立つんじゃないかと思っています。なので、今から実験してみます」
《え? これから?》
「はい。ここでやっちゃいます」
本当は低ダンジョンとかでじっくり確認してみるつもりだったけど、こんな状況だからこそ、自分の能力を可能な限り正確に掌握しておく必要があるのだ。
「フェンリルナイトさん、ちょっといい?」
僕はざっと概要を説明した。
「――てことでお願い」
「……わかった」
こくりと頷く柊さん。
彼女には少し酷かもしれないけど、この場でもっとも腕の立つ人に頼むのが一番なのだ。
「では、いくぞ」
「オーケー!」
ヒュッ。
柊さんの剣が閃いた。
たった一動作で、僕の右腕が宙に飛び、返す剣で心臓が刺し貫かれる。
《 《 《 すげえええええ 》 》 》
リスナーさんたちも驚いてるけど、殺された僕が一番驚嘆した。
あまりに見事な剣さばきに、自分がいつ死んだのかさえわからなかった。
月並みな表現だけど、気が付けば死んでいた。
「……大丈夫?」
すっと剣を引き抜きながら、柊さんが尋ねる。
「大丈夫どころか痛くも痒くもなかったよ。活き作りにされる魚って、こんな気分なのかな?」
《たぶんそうじゃないと思う》
《ズレたこと言ってないで、はよスキルの確認せぇや》
そう言われて、慌てて床の上の右手に意識を集中させる。
――ピクピク
《お。動いた》
《でも、いつも再生する時は、こんな風にぬるぬる動いてね?》
いや違う。
いつもは僕の意志と関係なく動いている。
今回は文字通り自分の右手のように自在に動かせる感じだ。
「フェンリルナイトさん、握手してみてくれる?」
「ああ」
彼女は屈みこんで、床の上でモゾモゾしている僕の腕に手を伸ばす。
そのまま、ぎゅっと手を握りこんだ。
「……どうだ?」
「うん。ちゃんと触れてる感覚があるね。フェンリルナイトさんの体温も感じるし、普通に手を繋いでるみたいだ」
僕の言葉に、なぜかボッと顔を赤くする柊さん。
「で、では、これはどうだ?」
彼女はいったん手を離すと、指と指を絡めるように掌を重ね合わせてきた。
「うん、やっぱりちゃんと感触があるね。でも、なんでこの繋ぎ方に?」
「………………」
《一見甘酸っぱい青春をしてるみたいだけど、千切れた腕と恋人繋ぎしてるんよね……》
《サイコにしか見えん》
僕は彼女にもう一度殺してもらった。
すると今度は普通に、僕の腕が再生して胴体にくっついた。
《効果時間は次に死ぬまで……なるほど》
つまり、2連続でこのスキルを使用することはできないらしい。
「それじゃ次は――」
僕は言葉を切った。
ふいにダンジョンの暗がりから、一人の男が現れたからだ。
「…………助けてくれ……」
彼は、よろめきながら広間に躍り出ると、どっと倒れ込む。
全身傷だらけで、息も絶え絶えだ。
「……仲間が……仲間が
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