Aランクパーティを追放され、ソロでダンジョン配信を始めたら迷惑系認定されてしまった僕だけど、不死身スキルがバズって、美少女と攻略することになってしまった。なので今更戻って来いと言われても、もう遅い
第31話 【速報】ワイ氏、美少女生徒会長の家にお呼ばれされた模様
第31話 【速報】ワイ氏、美少女生徒会長の家にお呼ばれされた模様
校門を出ると、見たこともない高級車が道の端に停まっていた。
「乗って」
「え……この車って?」
「大丈夫、うちの車よ。ほら、彼らに気付かれないうちに」
彼女はほっそりとした指を伸ばし、道路の反対側を示す。
そちらを見ると、カメラを手にした数名の大人たちの姿があった。
マスコミ関係者だ。
「あの人たち、まだいたのか……」
すでに記者会見は終えていたが、僕が帰宅するところを待ち構えていたらしい。
「どうぞこちらへ」
ガチャリと後部座席のドアが開かれた。
いつの間にか、車の脇に一人の女性が立っている。
和服姿のきちっとした感じの美女だ。
言われるまま、車に乗り込むと、柊さんもそのあとに続く。
報道関係者がようやくこちらに気付くが、すでに車は走り出していた。
「普段は私も電車通学なんだけど、こういう事態もあるかと思って、女中の
前座席に座った美女が、軽く会釈してみせた。
女中ってメイドさんの和製バージョンみたいなやつだよな?
聞いたことはあったけど、ほんとに現代日本にいるのか……。
「ごめん、ここまでしてもらって」
「気にしないで。謝るのは私の方だから」
柊さんは完璧に整った横顔を僕の方に向け、かすかに眉をひそめてみせる。
「私が正体を隠しているから、
「いや、それはいいんだけど」
「それに邪魔の入らないところで、折り入って話したいことがあったから」
「というと?」
「話したいことというか、私からのお願いなんだけど」
彼女は体ごと僕の方に向き直り、居住まいを正した。
珍しく表情が緊張している。
「尾妻君、私とパーティを組んでくれない?」
「え?」
「あなたと正式にパーティを組んで、ギルドに登録させて欲しいの」
たしかにギルドにパーティとして登録しておけば、資金やアイテム、最新情報などの様々な援助を受けることが可能になる。
というか、ほとんどの探索者は、その恩恵を受けたいがためにパーティを結成していると言っても過言ではないだろう。
いわゆる『ソロプレイヤー』は、僕のようになんらかの理由でパーティを除名された者や、素性をどうしても隠したい柊さんのような事情持ちだけだ。
「でも、柊さんだったら、どこのパーティにも加入できるんじゃ……」
彼女はS級探索者だ。
たとえ、素性を明かさなくても、引く手あまただろう。
「それこそ、国内最強って言われてる『カシナートの翼』あたりが諸手を上げて歓迎すると思うけど」
「尾妻君」
ふいに彼女が強い眼差しでこちらを見据えてきた。
「私は探索を共にするうえで一番大事なのは、互いを信頼できるかどうかだと思っている。これまで、色々なパーティや探索者を見てきて、中には敬意を抱いた人もいたけど、あなたほど信頼できると思える人には出会えなかったわ」
「さすがにそれは買いかぶりすぎじゃ……」
「そんなことないわ! 普通だったらあの時――」
「お嬢様、到着しました」
女中さんが平坦な声で告げる。
いつの間にか、車が停止していた。
窓外に見えるのは、映画の中でしかお目にかかったことがないぐらい広大な邸宅だ。
木造の日本家屋だが、素人の僕が見てもただの豪邸とは一線を画すとわかるぐらい、風格が漂っている。
「少し待っていてくれる? 準備をしてくるから」
そう告げると、車を降り、屋敷の中へ消えてゆく柊さん。
僕はその後ろ姿を見送る……………………って、え? ちょっと待って。
僕は軽く混乱をきたした。
――いや、この流れって、僕がこれから彼女のお宅にお邪魔する感じだよね?
改めて、趣のある立派な門扉を眺める。
――てことは、このお屋敷に住んでる彼女のご家族に会うってこと?
それやばくないか? だって
「あなた」
イセエビ……そうだ、上流階級の人はイセエビを食べるって聞いたことがあるぞ。
本物は高いらしいけど、ダンジョンにエビルデビルっていう、イセエビそっくりのモンスターがいるからそいつを捕まえて――
「あなた」
僕はようやく呼びかけられていることに気付き、ハッと顔を上げる。
目の前5センチぐらいのところに、女中さんの顔があった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
思わず悲鳴を上げるが、彼女は瞬き一つせず、洞窟のような瞳でじーっと僕を見据える。
「お名前は?」
「お、
「というと、最近お嬢様が話題にするあの方ですか?」
「よくわかんないけど、たぶん、はい」
というか、この人、なんでこんな至近距離にいるんだ。
「なるほど。実はわたくし、かねてよりお嬢様にご学友がいらっしゃるのか案じておりましたが、ひとまず安心いたしました。が――」
ずいっとさらに顔を近付ける彼女。
「すいません、近すぎます」
「――が、初めて連れてきたご友人が男性というのが少々気になります。まさかとは思いますが、ダンジョンなる場所が薄暗いのをいいことに不埒なことをなさっていませんよね?」
「してないです。それより距離が近いです。マジで」
「ならばよいです」
シカトですか。
「あなた、まっすぐな良い目をしていますね。お嬢様が惹かれるのもなんとなくわかります」
彼女はすっと顔を引いた。
「これからあなたにはある御方と対面し、お嬢様のために戦っていただかねばなりません。くれぐれもよろしくお願いします、お嬢様のために」
「わかりました」
なにを考えているのかわからない無表情に気圧されて、反射的にそう請け負う僕。
彼女は、深々と頭を垂れた。
「ありがとう御座います。わたくしは女中頭の
ぐおおお、と再び僕に迫る伊賀野さん。
「くれぐれもお嬢様の貞節を汚してはなりませんよ。死よりも恐ろしい目に遭いたくなければ」
だから、近いってば。
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