Aランクパーティを追放され、ソロでダンジョン配信を始めたら迷惑系認定されてしまった僕だけど、不死身スキルがバズって、美少女と攻略することになってしまった。なので今更戻って来いと言われても、もう遅い
第1話 ワイ氏、ソロ活動でダンジョン攻略することを決意
第1話 ワイ氏、ソロ活動でダンジョン攻略することを決意
パーティからの追放を言い渡された僕は、彼らの拠点を後にすると、その足で都内のとある病院へと向かった。
「おはよう、
「おにいちゃん!」
ベッドに横たわっていた少女が、僕の顔を見た途端、明るい声を上げる。
僕の2歳下の妹だ。
「体調はどうだい?」
「うん、今日は調子が良いみたい…………ゴホゴホッ!」
「おい大丈夫か!」
僕は慌ててベッドまで駆けつけると、懐からある物を取り出す。
淡く光る紫色の液体の入った小瓶だ。
蓋を取り、妹の頭を起こして、瓶の口を彼女の口元にあてがう。
「ゆっくり飲むんだ」
こくこくこく……。
妹の小さな喉が上下する。
すると、それまで青白かった日奈の顔が、たちどころにピンク色を帯びてきた。
「相変わらず、効果抜群だな」
「うん……でも、このアンブローシアっていう薬、高いんでしょ?」
「そんなの気にしなくていいんだよ。ダンジョンで簡単に拾えるんだから」
というのは嘘で、通販でなけなしの金をはたき、入手した代物だったりする。
ダンジョン内でこの回復薬を拾えるのは本当だが、そこそこレアな上に、首尾よく手に入った時も
同じパーティ仲間だったのに……。
「お兄ちゃん、高校はちゃんと通ってるんだよね?」
ふいに日奈がたずねてきた。
「ああ、行ってるよ。なんでそんなことを聞くんだい?」
「ん……なんか今日のお兄ちゃん、暗い顔をしてるから。なにかあったのかなーって」
鋭い。
僕はあえて明るい笑みを浮かべた。
「なにもないよ! 学校は楽しいし、冒険者としても充実した毎日だ!」
「そうなんだ」
「こう見えても兄ちゃん、学校では人気者だし、探索パーティでも、モテモテなんだぞ?」
「へー」
実際は、学校でもパーティでも孤立しているが、妹を不安がらせるわけにはいかない。
「そろそろ面会時間も終わりか。いつも、少ししかいられなくて、ごめんな」
「私はお兄ちゃんの顔を見て、声が聞ければ充分だよ」
「日奈……」
なんていい子なんだろう。
毎日病気で苦しんでるのに、逆に僕の方に気遣いするなんて……。
僕は妹の手をキュッと握った。
「じゃあ、また明日な」
病院を出ると、僕は即座に近くのベンチに座り、頭を抱えた。
――日奈に与えたアンブローシアは、あれが最後の一本だ。どうしよう……
迷宮型建築物――いわゆるダンジョンが出現し始めたのは、今から数年前。
以来、ダンジョンはこの世界に良くも悪くも様々な影響を及ばしてきたのだが、そのうちの一つが、現在日奈も罹患している『ダンジョン病』と呼ばれる原因不明の奇病である。
ダンジョンの呪いとか、瘴気が溢れているせいなど諸説あるが、現在の所、その原因は明らかにされていない。
一つ確かなのは、運悪くこの病におかされた者は、徐々に衰弱し、死に至るということだけである。
現代医療では治療不可で、唯一効果があるのは、アンブローシアと呼ばれるダンジョン内で発見される霊薬を服用することだけだ。
それもいわゆる対症療法で、病気の進行をしばらく食い止めることしかできないが……。
「くそ……なんで追放されてしまったんだ。あいつら、金払いだけは、ちゃんとしてたのに」
――3日
3日以内に、新たなアンブローシアを入手して妹に飲ませねばならない。
2年前に両親が死んで以来、常にギリギリでやってきたから貯蓄はない。
いよいよとなったら、家財を売るか、高校生にも貸してくれる怪しげな闇金とかに頼ってでも買うけど、そんなことをやってたら、すぐに、行き詰まるのは目に見えている。
――となれば手段は一つ。
「ソロでダンジョンに潜って、アンブローシアを手に入れる……待ってろ日奈」
僕は顔を上げ、勢いよくベンチから立ち上がった。
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