Aランクパーティを追放され、ソロでダンジョン配信を始めたら迷惑系認定されてしまった僕だけど、不死身スキルがバズって、美少女と攻略することになってしまった。なので今更戻って来いと言われても、もう遅い
第41話 【実況】#3 ワイ氏、Aランクダンジョン『死霊の臓物』に挑戦
第41話 【実況】#3 ワイ氏、Aランクダンジョン『死霊の臓物』に挑戦
――仲間が連れ去られた
そこまで伝えると、傷だらけのその男性は、がっくり首をうなだれた。
「おい、しっかりしろ!」
広間にいた探索者の一人が、慌てて彼を抱え起こす。
どうやら気を失ってしまったらしい。
「無理に動かさないほうがいい。深手を負っているようだ」
他のパーティから回復士が進み出て、彼の手当を始める。
「さて、どうする?」
柊さんが僕に尋ねた。
トレ坊パーティの人たちも皆こちらに注目している。
リーダーである僕の判断を待っているのだろう。
「本来ならあの探索者の回復を待つべきかと思います」
助けに行くにしても、もっと詳しい話を聞いてからの方がいいだろう。
でも――
「別の意見があると?」
「はい。今すぐ救助に向かった方がいいというのが、僕の意見です」
「なぜ?」
「連れ去られたと言ってた以上、現時点では彼の仲間は殺されていない可能性が高いです。でも、時間が経てば経つほど、生存率は下がると思われます」
《たしかに、即座に殺すつもりなら、わざわざ連れ去る必要とかねーよな》
「安全を考慮して、まずマップの及ぶ範囲で捜索にあたるべきかと」
これが僕の出した結論だ。
パーティメンバーを無闇に危険に晒すわけにはいかない。
かと言って、あまりに石橋を叩き過ぎていても、探索が一行に進まないし、そもそもリスクを確実に回避したいならダンジョンに潜るなという話になってしまう。
リーダーには、このへんの絶妙な匙加減が必要になってくるが、果たしてどうだろうか?
「いいと思う」
まず柊さんが告げる。
「私もそれが最善かと思います」
トレ坊リーダーさんも続いた。
「そうだな」
「さすがオッズ氏だ。良い判断力をしている」
他の面子も満場一致で、僕の提案を受け入れてくれた。
良かった、と僕は胸を撫で下ろす。
《でも、さっきの人、気になる言い方してたよな。
《わいも気になった。奴とか、まるで犯人が人間みたいじゃん》
それは僕も気になっていた。
ダンジョン内で起こった事件だから、襲ってきたのは魔物以外あり得ないはずだけど……。
僕たちは例の探索者がやってきた通路を逆に辿り始めた。
マップがあるとはいえ、道中はご多分に漏れず複雑に枝分かれしていたが、幸い道に迷うことはなかった。
彼の血の跡が点々と床の上に付着していたからだ。
いくつかの通路を折れた時、「止まれ」と柊さんが小さく叫んだ。
「前方になにかいる」
にわかに緊張が走り、全員が身構える。
カツーン、カツーン……。
足音を響かせ、誰かがこちらにやってくる。
「やあ、みなさん」
1人の男が姿を現した。
探索者とは思えないような薄着で、はち切れんばかりの筋肉を見せつけている。
「あなたは……フランケさん?」
僕の声に、場違いなほど朗らかな笑みを浮かべる彼。
「嬉しいね〜、おぼえててくれたんだ」
「……こんなところで、なにをなさっているんですか?」
「変なこと聞くなぁ。探索者がダンジョンでやることと言ったら、探索に決まってるじゃないか」
《いや、怪し過ぎだろ》
《なんで、1人でいんだよ》
「1人じゃないよ」
彼はクイっと背後を親指で示す。
暗がりの中から、甲冑に身を包んだ戦士が現れた。
兜を被っていて顔は見えないが、体付きから男性らしいとわかる。
しかし、妙に兜が窮屈そうだ。
「ヨシノリ!」
突如、僕たちの後ろからそんな声が響いてきた。
振り返ると、広場で手当を受けていた、あの探索者の男が息を弾ませながら、立っていた。
どうやらここまで走ってきたらしい。
「ヨシノリ、大丈夫だったのか!?」
彼は肩の傷を抑えながら、再度呼びかける。
明らかにまだ傷が癒えてなさそうだったけど、仲間を心配するあまり駆け戻ってきたのだろう。
「……どうしたんだヨシノリ? なぜ黙っている?」
甲冑戦士の前に立ち、
甲冑は無言だ。
僕はフランケさんがにやにや笑いながら、そのやり取りを見ていることに気付いた。
とてつもなく嫌な予感がした。
僕が警告を発するより早く事態が動いた。
突如甲冑が両腕が持ち上げたかと思うと、眼前の探索者の顔を掴んだのだ。
「お、おまえ何を――」
それが彼の発することのできた最後の言葉だった。
――ゴキリ
甲冑は、彼を心配して戻ってきてくれた仲間の首を、何の躊躇いもなくへし折った。
同時に、元々サイズの合っていなかった兜が、ガシャリと音を立てて落下する。
その下から現れたのは――
《豚人間?》
そう。
迷宮内の魔物、オークの豚面だった。
「ブヒィ!」
醜い顔を歪め、心底愉快そうに笑うオーク。
「ぶはははははははは! ヨシノリ〜だってぇぇぇぇぇぇウケるぅwwwww 」
オークに負けず劣らず醜く顔を歪めて、フランケさんが爆笑する。
「本物のヨシノリくんはこっちなのに……ねぇ?」
彼が呼びかけると、通路の篝火の下に、ゆっくり誰かが現れた。
《なにこれ……》
《今度はオークの体に、人間の顔だと!?》
「た……たすけて……殺して……」
かつてヨシノリ氏だったと思われるその人間の頭部は、涙を流しながら懇願した。
フランケ氏が興に乗った口調で叫ぶ。
「僕のスキルは、接続だよ! 見ての通り、なんでもくっつけちゃう能力さ! たとえ、人間と魔物だろうとね!」
不意に彼の顔が僕へと向いた。
ニチャア。
思わず背筋が寒くなるような笑みを浮かべるフランケ。
「楽しみだなあ! 君の肉体が手に入るのが!」
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