Aランクパーティを追放され、ソロでダンジョン配信を始めたら迷惑系認定されてしまった僕だけど、不死身スキルがバズって、美少女と攻略することになってしまった。なので今更戻って来いと言われても、もう遅い
第14話 【実況】#2 ワイ氏、Aランクダンジョン『死の顎』に挑戦
第14話 【実況】#2 ワイ氏、Aランクダンジョン『死の顎』に挑戦
救助対象がいると思しき地点は、本当に近場だった。
僕と
すると、数分もしないうちに未踏破エリアの大部屋まで辿り着いたのである。
「なにもない部屋だね。敵もいないし」
僕は柊さんに言った。
体育館を4つ合わせたぐらいのだだっ広い空間には、障害物一つ見当たらない。
向こう側に、奥へと続く通路が見える。
マップの縮尺からして、ここを抜ければ、目的地は目と鼻の先のはずだ。
《オッズ氏、それはちゃうで?》
《この手の部屋は、典型的なトラップルームだねぇ〜》
《つーか、むちゃくちゃ広くねえかここ》
柊さんは棒を吞んだように立ち尽くしている。
「…………そういうことか」
呻くように呟く彼女。
「どういうこと?」
「オッズ君、あれを見たまえ」
柊さんは室内の一点を示す。
入口――つまり、いま僕たちの立っている地点から数メートルほど離れた床に、黒い穴がうがたれていた。
「あれは?」
「おそらく床トラップだ」
そちらへ向かって慎重に歩を進める彼女。
僕も付き従う。
「やはり……」
柊さんと一緒に覗き込むと、穴の底にびっしり杭が突き出しているのが映った。
ところどころに白骨化したモンスターの死骸もある。
「これがこの部屋にモンスターが寄り付かない
僕は広大な部屋を見渡す。
「まさか――」
「そう。おそらく
《ひええええええ》
《いったい何百ヵ所、罠があんだよwwwww》
「渡る方法はあるの?」
「床を一歩ごとに調べていくしかない。叩く、捕まえたモンスターに上を走らせる、魔法を使う……色々方法はあるが、どれも時間と根気のいる作業になる」
《わいだったら気が狂いそう》
《何日かかんだよそれw》
「さっきのパーティが人を集めようとしていた理由がこれか……」
「そうだ」
これだけ広い場所を極力時間をかけずにしらみ潰しするとなると、人海戦術しかないだろう。
彼らは、最初のトラップを発見した段階でそのことに気付き、例の救難DMを送信したに違いなかった。
「こうなっては我々も打つ手はないな。おとなしくギルドの捜索隊を待って――きみ、何をやっているんだ?」
腰にロープを縛り付けている僕に、柊さんが問いかける。
「もちろん死ぬ準備だよ」
「……は?」
「僕の死体の回収は頼むね」
「いや、言っている意味がわからないのだが」
説明する間が惜しかったので、僕はとりあえず死ぬことにした。
百聞は一見にしかずだ。
僕は、無造作に前方に向かって駆け出す。
カチリッ――ザシュ!
床の隙間から飛び出した巨大な肉切り鋏が、僕の体を縦に割った。
《逝ったああああああああ》
《痛ったああああああああ》
ズルズル――。
僕の体はゆっくりずれると、左右に分かれて床に倒れる。
《ていうか、ロープごと真っ二つになったら、ロープを付けた意味がなくね?》
……たしかにそうだ。
幸い、僕が罠のスイッチを明らかにしたので、柊さんはそこを避けて、うまく死体を回収してくれた。
「こ、これはどうすれば……」
色んな物がはみ出た二等分の死体を前に、彼女が呆然と呟く。
《切断面を合わせれば、自然にくっつくんじゃね? 知らんけど》
《ていうか、フェンリルナイト氏がうろたえてるとこ、初めて見たわw》
《そりゃS級探索者でも、半分になった死体を復活させるとか経験ねえだろw》
不幸中の幸いと言うべきか、鋏の切れ味がよくて綺麗に切断されたため、今回の復活は早かった。
「お待たせ」
「あ、ああ」
むくりと起き上がって告げる僕に、目を白黒させる柊さん。
「という感じで、トラップを解除していこうと思うんだけど」
「…………了解した」
僕はどんどん突き進んだ。
落石で頭を割られたり、飛び出してきた毒蛇に噛まれたり、どこかから飛来した槍に串刺しにされたり、とにかく数メートル進むたびに死んだが、委細構わず進み続ける。
1時間もすると、僕たちは部屋の反対側の通路まで、あと少しという所にきていた。
「し、信じられない……。こんなに早く辿り着けるなんて……」
《マジでやべえええええwww》
《普通だったら、数日かかる行程》
《しかも、たった二人でやりきるとかw》
「そこまで騒ぐことなのかなあ……」
「当然だ。私一人だったら絶対出来なかった。すべて君のおかげだ」
《S級探索者だろうと、一度でも罠に嵌ったら、終わりだもんねい……》
《やっぱこの人のスキル、半端ねえわ。復活シーンが気持ち悪くても、チャンネル登録しといて良かったw》
僕は最後の数メートルを進んだ。
当然そこにも仕掛けがあり、今度は『落とし穴+底に酸溜り』という手の込んだ物だった。
さすがに足の先から溶け始めた時には焦ったものの、柊さんが機転を効かせて僕の頭に鉤縄を投げつけてくれたので、なんとか完全に溶けきる前に、吊り上げてもらうことができた。
《なんか理科室の標本みたいに骸骨化しちゃってるけど、大丈夫ですかーw》
《うお!? 骨から肉が滲み出してきただと!?》
《キモすぎるけど、マジですげええええwww》
チラッとドローンのホロ映像を確認すると、同接が数万人を超えていた。
グッド評価とバッド評価が半々ぐらいなのが気になるが……。
「あと少しだ! この通路を抜ければ、マップの丸印の場所に到達できるはず」
柊さんが告げる。
僕は例の動画を思い出した。
転移事故を起こした探索者は随分弱っているみたいだった。
ここまできたら、捜索隊を待たずに現場に急行した方がいいだろう。
「よし、いこう!」
しかし、ここから、僕たちはなぜこのダンジョンが『死の顎』と呼ばれるのかを、改めて思い知らされることとなる。
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