第25話 あのとき助けてもらったツルです6



 冒険者を追い払うと竜宮城に送還された。


「よくぞ襲撃を退けていただきました。こちらはお礼でございます。我らの自慢の品々でございます。どうかお受け取りください」


 織姫さまから報酬を貰う。目の前にウィンドウが表示された。強制入手だ。



[ スキル”阿吽あうんの呼吸”を獲得しました ※初攻略者のみの限定報酬です ]


[ アイテム”エリクさけ”を獲得しました ※攻略者の確定報酬です]


[ アイテム”きびだんご”を獲得しました ※初攻略者の確定報酬です]


[アイテム”3枚のおふだ”を獲得しました ※初攻略者の確定報酬です]



 エリク酒は確定報酬なのか。破格過ぎるような気がするけど。

 ああでも、オレたちが高レベル冒険者だからかな。普通の冒険者だったらあんなにあっさり撃退できないだろうし、撃退できても大ケガしてるかもだから。


「それから、これも」



[ アイテム”玉手箱”を獲得しました ※到達者の確定報酬です]



「ご安心ください。中身は空ですしおかしな効果はございません。またご協力いただける際はそれを手に持った状態で橋を渡ってください。門をお開けいたします」


 なるほど。通行証なわけか。


「以上でございます。この度は本当にありがとうございました。外までお送りいたします。少し眩しいかもしれませんがご容赦を」



「―― 待ってください織姫さま」


「? どうされました?」


 橿原ちゃん……?


「なんというか、その、報酬がちょっと違うのではないでしょうか?」


「ご不満でしたか……? それは申し訳ございません。ですが、それは我々にできる精一杯のお礼です。どうかお納めください」


「そうではなく」


「では」


「″きびだんご″がありましたが、あれは桃太郎が題材のはずです」


「題材とかいうのやめていただいてよろしいですか? ですが、はい、そうですね」


「あれは夫婦が子宝に恵まれるお話だったはずです」


「……そんなお話だったでしょうか」


 そんなお話だったっけ……?


 いや、たしかにそういう展開は冒頭であるけどそこ本題じゃないから。しかもアレ桃から生まれてるし。



「だからこう、あるじゃないですか……! 子宝に恵まれるまでに必要なイベントが……発生しないんですかそういうイベント……イベントシーン……っ!」



「「……」」


 言葉を失ったのはオレと織姫さまだ。なに言い出したの橿原ちゃん?


 オレが困惑でしゃべれないでいると、織姫さまは真顔になって言った。さっきまでの柔和な笑みは消え去っていた。



「それはおふたりで何とかしてください」



「そんな! じゃあせめてお屋敷のお部屋ひとつ貸してくださいそして××xしないと出られない部屋に織姫さまの力で改造――!」


「外までお送りしますね」



 ピカァーン!


 視界が戻るとお堀の近くにたっていた。門に続く橋の周囲に集まる人だかりを背後から眺める位置だった。そして阿吽の門番が復活していた。姫路城がライトアップされてキレーだなぁ。


「くっ……! こんなはずでは……」


 橿原ちゃん? 織姫さまからの依頼を「お受けします」って自分で答えてたけどさっきみたいなの期待してたの?


 このあとが大変だった。


 橿原ちゃんが阿吽の門番に挑みかかったのだ。勝てないってわかってるだろうに。


 何度もケンカを売りにいった。命までは奪われないと分かっているのをいいことに、大胆に攻め込んで少しでも相手を消耗させようとしていた……たぶん消耗しないと思うよ?


 いつものライフルから始まりエネルギー系ライフルや爆薬、ロケランなどを投入し、最終的に機動戦車(戦車のキャタピラ部分がタイヤに置き換えられたもの)を持ち出した。


 でも、機動戦車で橋に載った瞬間に橋が崩壊した。重量オーバーだからなのかレギュレーション違反だからなのかはわからないけど。


 当然、機動戦車ごと橿原ちゃんは水没。ずぶ濡れになって戻ってきた。「すみません。取り乱しました」とか言っていた。まあ、ケガがなくて良かったかな?


橋はすぐに元の状態に修復されていた。逆再生された映像みたいだった。さすがダンジョンだね。




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