第11話 ボスがいないダンジョン5
巨大武者を大剣で殴り飛ばした。地面に倒れて動かなくなった。これで終わりかな。死体が消えないのが気になるけど。
「そっち終わった~?」
「いま終わります」
首をキメていた武者型モンスターの側頭部をハンドガンで撃ち抜く
「おっかない娘じゃのー」
「いい子なんだよ?」
九尾がのん気にこぼす……お前ぜんぜん服汚れてないけど仕事した?
「とりあえず全部倒したけどどうなるんだろ?」
「外とかどうなってるんでしょうか。外という概念があるか分かりませんが」
「この環境の変化、たぶんボスエリア化なんだろうけど、どこまでボスエリア化して——」
――ズゥン。
「「「!」」」
――ズゥン……——ズゥン……——ズゥン……
足音。
間違いない。足音だ。信じられないくらい遠くから響いてきて、地面すら揺らしているけど、これは足音だ。
「
「……まじかぁ」
遠く。
山から見下ろす街並み、そのさらに向こうにある山の後ろで、その巨体が悠然と歩いていた。手前の山も標高は1,000メートル以上あったと思うんだけど、その高さは巨人—— ダイダラボッチの腰下くらいに過ぎなかった。
見た目は……動く人型の岩って感じか。体表はゴツゴツしていて黒っぽい。光沢があるので金属でできているのかもしれない。人間だったら背が高くて肩幅が広くてがっしりしたっていう表現になる体形をしていた。
「ほう、ダイダラボッチじゃ。見るのは何千年ぶりかのぅ」
「お前でもそのレベルか」
「われが子狐だった頃はよくその辺を歩いてたんじゃがな」
「近所のおっちゃんかよ」
そんなバカ話をしている間にも、ダイダラボッチはどんどんこちらに近づいてきた。歩みは緩慢として見えるけど、巨体なので1歩が大きく移動速度は速い。
「街は無事ですね。さきほど山をすり抜けていましたので、そういう性質なのでしょう」
橿原ちゃんの背後にズドンと何かが現れる。ストレージから出したようだ。軍用車両かと思ったら多連装ロケット砲だった。おいおい。
「よせ娘。ダイダラボッチは乱暴はせぬ」
「あれは倒すのも抵抗するのも無理だよ橿原ちゃん」
「そうですか」
ダイダラボッチが目の前までやって来た。九尾の言った通りこちらを攻撃してくるような
「!」
ダイダラボッチが体をかがめてこちらに顔を近づけて来る。橿原ちゃんは思わず身構えていた。そしていま気が付いたけど、倒したはずの武者たちが起き上がってダイダラボッチに平伏していた。デカいヤツもだ。
『……』
ダイダラボッチと目が合う。けっこうつぶらな瞳をしている。優しいんだろうね。
しばらくするとダイダラボッチは立ち上がり、オレたちの背後—— この山の山頂にゆっくり両手を伸ばす。そしてすくい取るように山頂を削り取った。
その拍子だ。ダイダラボッチの腕から何かが剥がれ落ちて地面に落ちた。かなりの大きさだけどダイダラボッチが気にする様子はない。
『……』
こちらを
「す、すごかったですね……」
「ああ、さすがに驚いた」
「元気そうで何よりじゃなー」
ダイダラボッチが姿を隠してすぐ、世界は元通りになっていた。空は
唯一違うのは……近くに落ちてる塊だね。大きめの冷蔵庫くらいのサイズかな。光沢はあるけど鈍色をした塊だ。2つあるのはたぶん2人分。
橿原ちゃんは恐る恐る1つに近づいて手を触れる……そして声を上げた。
「ヒ、ヒヒイロカネですこれ!」
ウインドウが見えてるんだろうね。ではオレも。
「おー、ヒヒイロカネだ」
ヒヒイロカネ、ダイダラボッチの体表だったか。たまに見つかってるってことは、もしかしてダイダラボッチ、世界中を歩き回ってところどころに落としてる?
「えーと、なになに?」
九尾の時と同じように、ウインドウにはいくつかのセンテンスが表示されていた。
[ アイテム”ヒヒイロカネ(2,400kg)”を獲得しました。 ※初攻略者のみの限定報酬です ]
[ スキル”ダイダラボッチの歩み”を獲得しました。 ※初攻略者の確定報酬です ]
[ スキル”ダイダラボッチの眼差し”を獲得しました。 ※初攻略者の確定報酬です ]
[スキル”ヒヒイロカネの加工技術”を獲得しました ※初攻略者の確定報酬です。 ※”科学”のステータスが要求値を満たしていません]
[ アイテム”ヒヒイロカネ(60g)”を獲得しました]
「橿原ちゃんもスキルもらえた?」
「はい。”歩み”と”眼差し”は秘術値が足りなくて使用できませんが、加工技術の方は使用できます。素材もあるので、銃弾作成スキルと組み合わせてヒヒイロカネの銃弾が作れると思います」
「なるほどね~」
「ところでどの辺がヒヒイロなんでしょう?」
この疑問には九尾が答えた。
「なんじゃ、おぬしら知らんのか。ヒヒイロカネは叩いたりすると熱く赤くなるんじゃ。叩く力が強ければ強いほどより熱く赤くなる」
「へぇ~」
「なるほど。銃弾とは相性が良さそうです…………ところであなた誰ですか」
めっちゃ急に来た。
「
やめて!
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