第34話 最強魔法幼女を攻略せよ【魔法図書館】1




「あのぅ、黎明記機械のお二方ふたかた、ちょーーーっとお願いが……」



 組合にいたら声をかけられた。振り返ってみると心の中で”クエストさん”と呼んでるお姉さんがいた。


 組合で依頼の受付とか振り分けをやってるお姉さんだ。この人はおそらくオレよりも年上なのでマジでお姉さんだと思う。


「すみません、忙しいので」


「ウソ! ぜったいウソ! 橿原かしはらさんはともかくそこの酔っ払いは絶対に暇なはず!」


樟葉くずはさんを悪く言うなんて良い度胸です。久々にキレてしまいそうです。屋上に行きましょう」


「ちょっ、チカラつよっ!? 引っ張らないで!? たっ、助けて樟葉くん!!」


「……橿原ちゃん」


「はい」


「…………連れていって」


「はい」


「なんでよ! いいから話いてよ!」


「えぇー?」


 だってクエストさんから振られた依頼、たいていロクでもないやつなんだもん。橿原ちゃんの反応からして橿原ちゃんも同じ認識っぽいし。


「はぁはぁ……! 話は聞かせてもらったわ。なんだか最近調子良いみたいね。あ、みたいですね」


「調子が良いかは分かりませんが、まあこうして五体満足で生きています」


「職員の間でも話題になっていますよ。新発見ラッシュだとか。まさに冒険者って感じです」


「お世辞はいいので。どういったご用件でしょう」


「お世辞ではありませんよ。でもまあ、そうおっしゃるのであれば本題を」


 こちらへお願いします。というのでついて行く。会議室的なところへ通された。椅子に座るとすぐに紙の資料を渡された。読み始める前にクエストさんが話し出す。


「お茶を持ってくるように頼んでますので先に説明を始めさせていただきますね」


「お酒は出ないの?」


「お茶を持ってくるように頼んでますので。今回は黎明記機械さんにお願いしたい依頼があります。組合からの依頼ですね」


 橿原ちゃんが反応する。


「というと」


「鶴見の【魔法図書館】です。いい加減、あそこの閉架へいかエリアを探索できるようにしたく」


「あー」


「……」


 橿原ちゃんが珍しく(どこ……?)みたいな顔をしている。まあ科学系のビルドだから知らなくても無理はないか。


「最強魔法幼女の”ブックエンド”がいる図書館だよ。誰がそう呼び始めたのかは知らないけど。

 ダンジョン自体は魔法使いとかオバケのエネミーが出てくるダンジョンで、エネミーを倒すと秘術系のスキルとかを獲得できたりする。秘術ビルドの冒険者は一度は行ったことあるかな」


「”ブックエンド”はボスなんですか?」


「攻撃したり閉架エリアに行こうとすると豹変して戦闘になるらしいよ。大ボスは最上階にいるダンタリオンだと思うから、フィールドボスとか裏ボスとかのポジションかな?」


「察するに誰も撃破できていないということでしょうか」


「そういうことだね」


「なるほど……それで条件は」


 クエストさんがつらつらと条件を並べる。一番の目標は”ブックエンド”を攻略して閉架エリアを閲覧できるようにすること。そして攻略方法が分かれば組合にその方法を共有することだ。


 あとの条件はオレたちが損しない程度の条件だった。報酬とか補償とかの話しね。もちろん第一目標を達成できれば追加報酬。まあ悪くはない。


「詳しくはそちらの資料に記載してあります」


「パーティで相談させてください」


「良い返事をお待ちしています」


 こうしてオレと橿原ちゃんは組合をあとにした。


 その後は一緒に近くのお店で晩ごはんを食べながら相談する。


「おそらく今回も力押しではダメなパターンのエネミーでしょう。いえ、エネミーと呼んで良いかもわかりません。ただのダンジョンの装置みたいなものかもしれませんから」


 竜宮城の織姫さまとかガンの女の子とかは、ダンジョン的なものだけどたしかにエネミーと呼べる感じではなかったからね。ああいうパターンもある。


「だろうね。あ、これもう受ける方向で進めていいの? オレは良いけど」


「やってみましょう。損はしません。死んだり大怪我しなければ」


「そのあたりだけは気をつけよう」


「はい。それで【魔法図書館】のこと、分かる範囲で教えていただいてもよろしいですか?」


「ああ、1階から6階は役所が運営してる普通の図書館なんだけど、7階より上が異常拡張してて――」



 この数日後、オレたちは図書館の前に立っていた。




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