第4話 橿原(かしはら)ちゃん1
「うぅ……頭痛ぇ」
今日も今日とて頭痛で目覚める。また二日酔いだ。毎日二日酔いになっていたら多少は慣れても良さそうだが、人体はそれほど都合よくはないらしかった。
「水……」
ベッドからのそりと起き上がる。頭が重くて視界がグラグラした。しかしなんとか冷蔵庫を開けて中身を取り出す。
プシュッ!
「ごく、ごく―― ぷはー! 生き返るぅ!」
うん、やっぱり朝はこれだよな。むしろこれがないと始まらない。
「行くかぁ」
着替えとか諸々の準備をしてから家を出る。今日もダンジョンに潜るのだ。そうしないと酒代が稼げないから。
あ、でも今日は九尾のダンジョンのドロップアイテムを換金すればいいか。
冷蔵庫から取り出したヤツはまだ飲んでる途中だから飲みながら歩いてく。海外だと路上で酒飲めないらしいけど、日本はそういうの無くて良かったほんと。
「おはようございます、
「お」
「またお酒飲んでますね。死にますよ」
「
組合に着いたら買取窓口には行列ができていた。だから後ろの方のソファでくつろぎながら時間潰していたら、橿原ちゃんが寄って来た。
大学生ながら高い戦闘力と踏破力があり、同世代では飛びぬけて優秀とされる女の子だ。レベルも高い。素材の売却とかでめっちゃ稼いでてランキング上位だし。
まあ実家がお金持ちなので金目的で冒険者になる必要とか無いみたいだけど。趣味なのかな?
「まだ飲める年齢ではないので」
「そっかぁ、残念」
「でも飲めるようになったらお付き合いします」
「おー、楽しみだなぁ」
「……樟葉さん、どう見てもアルコール依存症ですよ。お酒やめるか、早く病院行ってください」
「飲まなきゃやってられないんだよ~、正気のままダンジョン入ってく人すごいね? どういう神経してるのー?」
「酔った状態でダンジョンに潜っておまけに生きてるあなたがおかしいんですよ。どうしてそこまでしてダンジョンに潜るのですか?」
「酒代のため! 酒を飲んでダンジョンに入って稼ぐ! また酒が飲める! 酒が飲めるからまたダンジョンに入れる! 理想的なスパイラルでしょ~!」
「負のスパイラルの間違いですそれ」
溜め息を吐いたあと、橿原ちゃんが自販機で水——ミネラルウォーター。アルコール分は含まれていない――のボトルを買ってきた。そしてオレが持っていた酒の缶を取り上げて代わりに水を手渡す。
「あっ、オレの酒っ」
「これは処分しておきます」
パキュっ。
何らかのスキルにより飲みかけだった酒缶が圧縮されて消失した。なにそれ怖い。
「今日はどちらのダンジョンへ?」
「あ、今日はダンジョン行かない。換金だけしに来た。【九尾】のダンジョン攻略できたからその時のボスドロップがどんなもんか知りたくて」
「………………は? 九尾?」
「そうそう九尾! いやー攻略不能ダンジョン攻略しちゃったんだわオレ! うははは! どう? すごいー?」
「……」
「え、なんか怒ってる?」
「……いえ、別に。ドロップが何だったか興味があります。伺っても?」
「じゃあ一緒に行こうか。窓口空いてきたしねぇ」
もらった水をひと口飲んでから立ち上がる。窓口に向かう道すがら、後ろをついて歩いてた橿原ちゃんが「少しは追いついたと思ったのに……」って小さな声で言ってたんだけど、何のことなんだろ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます