第27話 ダンジョン【フレイム・オブ・ライフ】1
荷物を受け取るために家にいたら、何故か
「オレが家に居なかったらどうするつもりだったの?」
「合鍵あるので大丈夫です」
「なんで??」
なんで橿原ちゃんが合鍵持ってるの??
「このまえお邪魔した時に渡してくれたじゃないですか」
「……」
そうだった……っけ? ぜんぜん覚えが……。
「覚えてないのですか。お酒の飲み過ぎでしょう。そうに違いありません」
「そう……なのかな?」
「そうですよ」
一緒に家具
「……返した方が良ければ返しますが」
「まあいいや。橿原ちゃんなら。あ、この
「はい」
「それで何か用でもあった?」
「【フレイム・オブ・ライフ】が堺に漂着したみたいです」
「ふれいむおぶらいふ?」
「漂流型のダンジョンです。正確にはダンジョンへの入口である廃船が漂流しているのですが」
曰はく、【フレイム・オブ・ライフ】は世界各地にランダムに出現する廃船から入場できるダンジョンのことらしい。廃船は2か月ぐらいその場に留まった後に消えて、また別の場所に出現するんだってさ。それが今回は堺に漂着……というか出現して座礁してるらしい。
「というわけで行きましょう」
「えー? そんなダンジョンぜったい激混みじゃーん」
「休日のお父さんみたいなこと言わないでください。フレイム・オブ・ライフは冷戦時代に建造されたミサイル駆逐艦を転写したと思われる艦船と、その周りの船団でできたダンジョンで、ダンジョンドロップ化した旧式兵器とかが手に入るんです」
「旧式? 旧式のがほしいの?」
「運用コストが低いんです。要は使い分けです」
「ほーん」
「他にもヴィンテージ家具にレトロ家電、ダンジョン外ではすでに廃盤になってしまった機械部品とかも手に入って需要があるらしいです。あとは――」
「あとは?」
「年代物のお酒とか」
「よし行こう橿原ちゃん!」
これだからダンジョンはやめられないんだ。
「あ、でもちょっと待って。もうすぐ荷物
「分かりました。フレイム・オブ・ライフはしばらく居ますから。上がっても?」
「どうぞどうぞ」
「お邪魔します。コーヒー豆買ってきました。キッチン使わせてください」
「さすがにオレが淹れるよ。お客さんは休んでて」
「お客さん……まぁ良いでしょう。今はまだ。ではお言葉に甘えて」
この前
一緒に選んだ真新しい家具がセットされた光景に橿原ちゃんは満足げだった。ソファに座って、座面を手で押して感触を確かめたりしていた。
……あ、やべ、テーブルに酒の空き缶
ピンポーン。
「あ、荷物きた」
しかしタイミングが悪い。今まさにコーヒー豆を蒸らし始めたところなのに。
「出ますよ」
「ごめーんお願い」
スリッパをぱたぱたさせながら橿原ちゃんが玄関に向かう。ガチャリとドアを開けた。宅配の人と橿原ちゃんの会話が聞こえる。
「
「はい、樟葉です」
「サインか印鑑お願いします……はい、どーもありがとうございまーす!」
玄関が閉じられた。段ボール箱を抱えた橿原ちゃんが戻ってきた。
「なに買ったんですか?」
「アカイロカネ製の鉄板」
なんか良いらしいんだよね。高いけど。加工が難しいから逆に頑丈で傷つきにくい。鉄板自体が発熱するから保温性も抜群、みたいな。
「なるほど。つまり私のため、パーティーのためと」
「そうそう」
パーティー。そうパーティーだ。つまりお酒が飲めるってことだ。お酒を美味しく飲むための労をオレは惜しまないのだ。
「よし、じゃあコーヒー飲んだら行こうか、お酒を回収しに! えーと」
「フレイム・オブ・ライフ」
「フレイム・オブ・ライフに!」
「あとお酒以外もお願いします」
楽しみだなぁお酒! じゃなかったダンジョン!
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