第23話 あのとき助けてもらったツルです4
まず視界が戻った。
城門前だ。もう夜になっていた。
だけど最初に来た時とは視点が違う。城門の方からお堀の外の方を向いていた。
隣に視線を向けると
自分もそうだった。気になって手を見てみたら最初は無かったけど、すぐにレーザー光が降って形ができた。
サイズ感は人間のままだ。装備も普段通り。橿原ちゃんはヘッドマウントディスプレイとかキツネ耳とかも再現されてる。
いつもと違う点は、あくまで輪郭だけ再現されてるだけっぽい、ってところか。
橿原ちゃんは青い光、オレは赤い光で形作られている。元の服とか武器とかの色や質感は再現されていない。物には触れるみたいだし、装備類は元の機能を維持しているみたいだけど。
橋の向こう側がザワついていた。人だかりができてる。
当然だよね。誰かが門に入って行ったというだけでもニュースなのに、さらにいつもの門番がいなくなって人間みたいのが現れたんだから。
「おいアレ……」
「どこかで見たことあるぞ……」
橋を中盤まで渡っていた4人組の冒険者たち――こいつらが襲撃者として判定されたようだ ――の会話が微かに聞こえる。
「……赤い方は”梅田のゾンビ”に似てる」
「梅田のゾンビ?」
「いつも酔っぱらってるアル中の冒険者だ。ずっと酒飲んでて、ぐでーっとしてるのがゾンビっぽいっていうのが一番の理由だけど、異様にしぶといのもあるらしい。梅田ダンジョンの大深部からソロで帰って来た冒険者だからそこそこ有名だ。たぶん、障壁とか自動回復系とかの
「なら青い方はたぶん”アサルト女子高生”だな」
「なんだそりゃ」
「銃火器がメインウェポンの女子高生冒険者だ。美人で物静かだけど、戦い方はめちゃくちゃ苛烈で容赦ないらしい。
あと年上の酔っ払い冒険者につきまとって、寄ってくる他の男どもには見向きもしないって話だ。逆恨みしてダンジョン内で悪さしようとしたヤツらは全員返り討ちにされて行方不明か手錠かけられたってさ」
「ひぇぇ」
「ああ、あの子か。じゃあもっと怖い話してやるよ」
「何だよ」
「あの子……もう高校生じゃなくて大学生らしいぞ」
「……マジかよ時間が経つの早すぎだろ」
「そんなバカな……」
「正気度が
すげー好き勝手
『オレ、梅田のゾンビとか言われてるの?』
『知らなかったんですか』
『うん』
何気なく会話し始めちゃったけど、念話だったわ。召喚状態だからかね。
『悪い意味ばかりで呼ばれてるわけではありませんから』
『そっかぁ。それはそうと……つきまとってるの?』
『あの冒険者は
グッドラック、名前も知らない冒険者。
「ということはあの2人が門の中に入って行った冒険者なのか」
「あの人たち倒せば中に入れる、ってことで良いんだよな?」
「でも2人ともレベル1000は超えてるんだろ?」
「
「一般冒険者からしたら阿吽の門番もレベル1000越え冒険者も大差なくバケモンだぜ」
あの門番と一緒にしないでもらいたいね。
ていうかアレを撃破する勢いで来るなら、こりゃこっちも危ないぞ。撃退してエリク酒をもらっても、怪我を直すためにすぐにエリク酒を使うハメになる。
ああ、そういうことか。
軽いケガ程度で撃退できればエリク酒をストックできる。大ケガをすると撃退できてもエリク酒をすぐに消費するので手に入らないんだ。
『橿原ちゃん気を付けてねぇ。大怪我すると報酬無くな――』
ドゥ!!
「「「ッ!?」」」
『橿原ちゃん?』
橿原ちゃんが発砲した。そして冒険者の1人が膝から崩れ落ちた。
『気絶させただけです。バフをかけようとしていたので。安心してください。非殺傷弾です』
『なら安心……なのかな?』
『変身中に狙われないのはテレビの中だけです』
容赦なさすぎでしょ。
「バフもかけさせてくんねーのかよ!」
「出現した時点で戦闘開始ってことか!」
「やるしかねぇ!」
そうだねぇ、やるしかない。もう始まっちゃったから。
『作戦とか立ててないけど大丈夫?』
『大丈夫です。私と
『そ、そうだね……』
『私が中央の冒険者をやりますので』
さっき「つきまとってる」とか言っちゃった冒険者だ。生きて。
『じゃあオレは両側の2人をやるかぁ』
常設系のスキルが発動しているのを確認する。うん、問題ない。やろうか。
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