小話 止雨
12話~18話の間の話
離宮に祈雨を残して僕、止雨は闇御津羽神様に付いた。正直、祈雨と交代したい。などと思いながら
僕は祈雨と似た姿だけど、役割は真逆だ。僕は名前の通り長く降り続く雨を止める役割を担っている。
他には儀式の際の笛、闇御津羽神様または巫女の護衛、外の世界での偵察など挙げれば結構ある。
まだ祈雨から連絡がないから瀬織津姫様と鈴華様の話は続いているのだろう。あの方が人間を招くなんて初めてだ。
いや、僕たちが来る前に一人だけいたんだっけ。名前は朱姫。阿須波様たちにとって大切な人間。鈴華様は朱姫に似ているらしい。
珍しく阿須波様が自らの意思で服を選び、人間の髪を結っていた姿を見て僕たちは顔を見合わせた。嬉しそうな、愛おしそうな表情をする阿須波様は初めて見た。
阿須波様と闇御津羽神様が鈴華様に向ける感情は少し異なるような気がする。僕の感じたことだから観察するに留まるのだけど。
闇御津羽神様が書類に目を通して振り分けられたものを僕が整理していると、闇御津羽神様はふと窓に目を向けた。鈴華様のことが気になるらしい。
何度か手が止まっている。そういえば、外の世界から連れ帰った後寝込んだ鈴華様を心配して付き添っていた闇御津羽神様にさすがの阿須波様も呆れていたっけ。そのおかげで仕事が溜まっている。
気になるのは分かるけど、そろそろ仕事に集中しないと阿須波様が笑顔で進捗を聞いてくる頃だと思う。
「闇御津羽神様、進捗いかがですか?」
ほら来た。僕の予想通り、阿須波様は笑顔で尋ねる。バツの悪そうな顔をして闇御津羽神様は窓から視線を戻した。
「気になりますか? ああ、返答は結構です。お顔を見れば分かりますので」
なら、なんで聞いたんだと言いたそうな闇御津羽神様は阿須波様には敵わないと早々に諦めて仕事に戻った。
手渡された書類を見ると、僕たち向けの仕事だ。鈴華様と一緒に仕事してみたいと思うけど、祈雨はどうだろう。
同じ意見だったら闇御津羽神様に進言してみようかな。
そんなことを考えていると、祈雨から連絡が入った。僕は書類を机に置いて闇御津羽神様を見る。
「祈雨からです。お二人の話は終わりました、とのことです」
言い終わらないうちに席を立った闇御津羽神様は足早に部屋を出ていく。僕は阿須波様と顔を見合わせて苦笑する彼女に見送られながら主の後を追った。
水龍と御霊送りの巫女 秋月昊 @mujinamo
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