小話 祈雨

 12話~18話の間の話


 私は祈雨。闇御津羽神様の従者で御霊送りの儀式で和琴を弾いている方。ちなみに、止雨は笛を吹いていた方。


 名前の通り、私は干ばつの続く地域に赴いて雨を降らせる役割を担っている。他には、闇御津羽神様の護衛と巫女の監視という名の護衛も行っている。


 私と止雨は元服前の男の童子姿をしているが、三百年ほど生きている。黒髪を高い位置で結い上げていてそのまま流している。


 止雨との見分け方は目つきと髪を結ぶ位置くらいだ。止雨の方が目つきがほんの少しだけ鋭い。結ぶ位置は若干私が右寄りで止雨が左寄り。


 私と止雨はほぼ同一の存在で、互いに念話や視覚共有が可能なので片方が闇御津羽神様にもう片方が巫女に付くことが多い。


 瀬織津姫様との話が終わり次第、止雨に念話で話しかければ闇御津羽神様は来るだろう。


 なぜ今私が一人語り出したかというと、暇だからだ。私は現在闇御津羽神様の命で鈴華様の護衛に付いていて瀬織津姫様の部屋の外で待機中の身。


 瀬織津姫様は鈴華様のことを気に入っておられるようで危害を加える様子はない。よって、暇を持て余している。


 ぼんやりと空を眺めていたら眠くなりそうなので、適度に部屋の様子を気にしつつ、ここ最近の出来事を整理しようと思う。


 人間は霊力が低いので認識阻害を使えば気付かれることなく偵察などこなすことが出来る。


 鈴華様の長家の件も事前に偵察に行って闇御津羽神様に報告は行なっていたけれど、結局は止められずあのような結果になってしまった。


 闇御津羽神様がお怒りになる姿は久しぶりに見た気がする。付いていた止雨が泣きそうな顔をしていたのも珍しいことで正直驚いた。


 そういえば、今日も止雨は闇御津羽神様の付き添いだったっけ。何事もないといいな。


 闇御津羽神様は多忙で、いつも仕事に追われている。本来は二人で行う仕事は事情があって今はお一人担っている。


 とても真面目な方だからどんなに大変でもこなしてしまう。しかも、鈴華様の看病をされていたからいつも以上に溜まっていた仕事を今も捌いているところだ。


 巫女の失態続きで苛立っておられた闇御津羽神様は鈴華様がいらして少し雰囲気が和らいだ気がする。


 先ほどだって、人間である鈴華様が触れても払いのけるどころか、自ら触れていたし。闇御津羽神様の中で鈴華様の存在は特別なのだと考えている。


 まだお話には時間がかかりそうかな。止雨はどうしてるだろう。

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