第33話 決意
彼が死ぬ? お母さんが死んだ時を思い出して呼吸が浅くなる。また別れがくる。あの虚しさが蘇ってくるそれだけは嫌だ。
「止めるには闇淤加美神様を鎮めれば良いのですね? やります。私に出来ることならなんだって」
「鈴華! それがどんな危険なことか分かっているのか? 封じられている闇淤加美は荒魂を取り込みすぎて怪物と化しているんだぞ」
そう言われても引けない。私の表情を見て天照大御神様は頷いた。
「貴女の決意、受け取りました。とは言ってももう少し猶予はあります。それまでに多くの魂を救い、力を高めなさい。闇御津羽、鈴華の決意を無駄にしないで」
「天照大御神様」
「まずは
天照大御神様はそう言て微笑むと阿須波様から出て行った。一瞬ふらついた阿須波様が意識を取り戻す。
「あら、私いつの間に。また天照大御神様がいらっしゃっていましたか?」
「はい。久方ぶりに降臨しました」
止雨様が答える。
「そうですか。あの方が」
阿須波様に天照大御神様が降臨されることは珍しくないのだろう。阿須波様は驚くこともなく事前に言ってほしいですねと笑いながら受け入れていた。
「阿須波、大丈夫か?」
部屋の外から声がしてそちらに視線を向けると瀬織津姫様が立っていた。
「瀬織津姫様?」
「ああ。天照大御神様が降臨したからな様子を見に来た。悪いが話は聞かせてもらった」
椅子には
阿須波様たちはお茶の用意をすると部屋を出ている。
瀬織津姫様と闇御津羽神様が向かい合わせに座っている。互いに無言だ。
私は二人を交互に見てどうしていいか分からず阿須波様の手伝いに行けばよかったと後悔しながら活けられている黄色の花を見つめた。
「鈴華」
「は、はい!」
瀬織津姫様の声にぼんやりとしていた私の声が裏返る。背筋を伸ばした私に彼女は険しい表情からやんわりとした表情へと変えた。
「天照大御神様と交わした決意は本当か?」
「本当です。
「そうか」
「あら、お止めにならないのですね」
私の決意に深く息を吐いた瀬織津姫様にお茶の用意を終えた阿須波様が戻ってきた。
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