第16話 巫女の資格
涙を流す瀬織津姫様に私は何も言えない。朱姫は外の世界、私がいた方に連れ出された後、貴族たちに捕まってしまった。
巫女の存在を独占したい貴族たちにとって朱姫は邪魔だった。けれど、巫女はすでに力の衰退を指摘されていた。
一方で巫女の娘として力を受け継いでいた朱姫。貴族たちはそこで朱姫を利用することにした。
巫女は貴族の中から選び、巫女を裏で支える存在として朱姫を使うことにした。だが、朱姫も人間だ。
老いという枷がつく。貴族たちは朱姫に子孫を残すように迫った。抵抗する朱姫に裏巫女が欲しい貴族たちは無理やり組み敷いた。
「使者から報告を聞いた私は怒りでどうにかなりそうだった」
「瀬織津姫様」
顔を両手で覆い泣いている瀬織津姫様の側で寄り添うことしか私には出来ない。少し落ち着いた瀬織津姫様は続きを話してくれた。
人間に襲われた朱姫は身ごもった。
使者を送って連れ戻そうとしても、この宮廷に入る条件は闇御津羽神様の眷属、彼以上の存在、入ることを許されている人間は巫女とその子孫のみ。
ただし、人間は純潔を保っている者に限られていた。
朱姫の純潔は奪われた。身ごもってしまった朱姫は使者に連れられて戻っていたが、宮廷内に入ることができなかった。
悟ってしまった朱姫は宮廷の外で崩れ落ち、泣いた。その声を聞きたくなくて瀬織津姫様は背を向けた。
それから離宮に閉じこもるようになってしまったのだと。今でもそのことを後悔していると私に語る。
朱姫は子供を産んだあとも裏巫女として巫女の代わりを務め、さらに子どもに神歌と舞い、機織りを教えた。
子孫は代々それを受け継いで私まで続いていた。
私が魂を視認できることに悲しそうな顔をしていたお母さんはもしかしたら私を裏巫女にしたくなかったのかもしれない。
「巫女の資格は何だと思う?」
「血縁、でしょうか」
瀬織津姫様は首を左右に振る。巫女は代々貴族様たちの中から選ばれる。
だから巫女は子孫、血縁者でなければならないと思っていた。けれど違うようだ。
「巫女の条件は眼だ」
「眼、ですか?」
「そうだ。紫色の眼。魂を視認できる特別な眼であり、初代巫女が持っていて朱姫が継いだもの。そして、お前が継いだものだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます