第7話 目覚め
「だから貴族どものやり方には反対だったんだ! 今回は鈴華がいたから成功したものの、今後もこれでは巫女の意味がない」
「おっしゃっていることも分かりますが、昔からのしきたりですので。今さら変更は貴族がなんと言うか」
怒鳴り声で私は覚醒した。うっすらと瞳を開くと見慣れない天井。長屋でないことは分かる。寝台も今まで経験したことのない感触と温かさだ。
次第に頭がはっきりとしてきて状況を冷静に整理する。儀式が終わった後、私は力尽きて倒れたんだ。その後ここに運ばれたらしい。
声から判断して
それなら巫女でない私はいるべきではない。
判断した私は体を起こした。
「目が覚めましたか」
「体に異常は感じませんか?」
傍にいた祈雨様と止雨様が交互に言葉を発し、止雨様が手を伸ばして私の頬に触れる。小さな手のひんやりした感触が心地いい。
今のところ異常は感じない。私は頷いた。
「主様、鈴華が目を覚ましました」
異常なしと確認を終えた祈雨様が
「鈴華様、お加減はいかがですか?」
「大丈夫です。すみません、すぐに出て行きます」
寝台から下りようとする私の肩を阿須波様がやんわりと制止する。緩く首を左右に振り寝台に戻るように促した。
「儀式を終えたお体です。まだ疲労は残っておりますでしょう。ゆっくりお休みください」
「鈴華、助かった。礼を言う。この際、異界に侵入した件は不問にしてやる」
そういえば、緊急事態とは言え儀式の場に無断で侵入したことになる。本来なら罰を受ける身だ。彼の寛大な判断に感謝しなくては。
「もう。闇御津羽神様、そんな言い方はよくありませんよ。鈴華様がいなければ今頃大惨事になっていたのですから」
「そもそも貴族どもが寄越した巫女の力が弱いせいだろ」
「それは、そうですが……」
怒りを含んだ声音に阿須波様は困ったように言い淀む。
「巫女の力が弱いせいで裏巫女が必要なのであれば、最初から裏巫女が巫女でいいだろ。以前からそう言っている。今回の件で貴族どもには責任を取らせる」
「責任、ですか。いったいどうなさるおつもりで?」
二人の会話を聞いてはいけない気がして戸惑う私に気づいた
「あの、鈴華様はお疲れのようですし」
「お二人ともそのへんで」
二人の言葉に闇御津羽神様が視線を私に移すと冷静になったようで怒りを鎮めた。隣の阿須波様も申し訳なさそうに眉を下げて謝ってきた。
もう少し眠るように促されて重くなる瞼に抗うことなく眠りについた。
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