第19話 独占欲
私はその手を取っていいのか分からず戸惑い瀬織津姫様を見る。彼女はくすくすと声を殺して笑い、祈雨様と止雨様は手を取るよう促す仕草をしている。
恐る恐る手を伸ばして彼の手に自分の手を乗せようとしたところで先に手を捕まれた。大きな手はすっぽりと私の手を包み込んで力強く引く。
油断していた私は踏ん張りがきかず、よろけた。転ぶ前に腰に手を回した彼の右手に支えられる。
左手を離した彼は私の腰に回していた手を肩に移動させて引き寄せた。
「え? えっと、あの」
状況が呑み込めない私は闇御津羽神様を見上げる。
「瀬織津姫、それでは失礼します」
「ああ。鈴華、またお茶をしにおいで」
「はい。ぜひ」
「貴女がそんなことを言うなんて珍しいですね。鈴華が気に入ったんですか?」
「気に入ったと言ったらどうする?」
瀬織津姫様が挑発的な目を向ける。
「いい事だとは思いますが、鈴華を呼ぶのはほどほどにしてください」
「分かったよ。御津坊、独占欲の強い男は嫌われるぞ」
「肝に銘じておきます。行くぞ、鈴華」
そう言って歩き出した闇御津羽神様に連れられて離宮を出た。
戻ると阿須波様が待っていた。
「おかえりなさい。あらあら、闇御津羽神様、独占欲の強い方は嫌われますよ」
「さっきも聞いた」
「さっきも? ああ、瀬織津姫様にも言われたんですか? ふふっ、そうですか」
微笑む阿須波様にムッとした闇御津羽神様は手を離した。肩にはまだ彼の手の温もりが残っている。私は自分の肩に手を添えてみた。
「鈴華様、瀬織津姫様のお話相手になってくださりありがとうございました。あの方が自分の部屋に人を招くなんて朱姫以来ですので私は嬉しいんです」
「朱姫のもう一人のお母さん」
ぽつりと零れた言葉は阿須波様に届いていたようで、彼女は息を呑んだ。
「そう、呼んでくださるんですね」
阿須波様は瀬織津姫様と同じようにお母さんのような表情を浮かべた。やっぱり彼女も朱姫の育ての親なんだ。
阿須波様が選んだ服も髪型も朱姫にしていたものと同じなのだと瀬織津姫様が教えてくれた。もしかしたら朱姫と私を重ねていたのかもしれない。
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