第25話 再集合① 【日曜日:Sunday】

 俺が大広間にいくと他のみんなもぽつぽつ集まってきたころだった。

 何人かは除いてだけど、どことなく連帯感がでてきたような気がする。

 「001」の部屋のあるほうのほうを見ても「001」がここにやってくる気配はない。

 やっぱり「001」はこなさそうだ。


 「やられたよー! SIMカードが抜かれてたよ」

 

 門倉さんがスマホ片手にもう片方の手を自分頭にあててペロっと舌をだした。


 「僕もだよ。こういうときこそ自分が置かれている状況の把握が大事だと思ってスマートフォンを隅から隅まで調べてみたんだけど。僕のスマートフォンからもSIMカードが抜かれてた」


 「宮野さんもかー。これってみんなもSIM抜かれてるだろうね」


 門倉さんは宮野さんと同じ気持ちだとでもいうようにうんうんうなずいている。


 SIMカードってスマホに入ってるマイクロSDカードみたいなやつだよな。

 スマホを最初に契約したときに小指の先くらいのカードを本体に挿した記憶がある。

 あれがなければ本体を起動させてもネットとか通話でできないんだよな。

 

 でも、俺はSIMカードの確認なんてやってない。

 電池の残量と、ネットに繋がるかだけを調べた。

 いまなんてスマホは時計の代わりでしか使っていない。

 門倉さんと宮野さんの知識はすごいなー。


 小鳥遊さんからはなんですかそれ?というもっともな質問が飛んだ。

 SIMカードなんて一般人にはそれほど馴染みはないものだ。


 小鳥遊さんは赤文字系の雑誌じゃないティーン向け女性ファッション誌でよく見かける萌え袖をしていた。

 青いつなぎ姿なのに萌え袖。

 小鳥遊さんもここまでくるとたくましく思えてくる。


 三木元さんはそもそもスマホを持っていないそうで部屋に戻ってからのスマートウォッチとモニターの連動もできなかったらしい。

 どうするんだろ? スマホを日常的に使っていたらスマートウォッチの操作くらいできていたはずだからそれはそうだよな。


 「006」からも確認してないという声がもれてきた。

 弓木さんもあまり理解してないようだった。

 若い女子ふたりはそんなもんだろう。


 「スマホ本体は使用していいというメッセージだろうね」


 宮野さんは自分のスマホの画面で指をすべらせている。


 「通信制限は外部との接触を断つためでしょうね」


 門倉さんは頭に乗せていた手を自分の額に乗せ両目をつむった。


 「外部とコンタクトをとらてたらなにを言われるかわからないからだろう」


 「006」は淡々と返した。

 ただでさえ体格がよくてごっついのに眉間にしわを寄せるとさらに近寄りがたい。

 でも悪い人ではなさそうだ。

 「006」も茶色の革製スマホケースに入れた自分のスマホをここまで持ってきていた。


 折り返したスマホケースのカード入れにクレジットカード含め何枚かのカードが見えた。

 えっ? ヤ、ヤバっ!?

 俺は見てはいけないものを見てしまったかもしれない。

 

 一瞬だけど宮野さんもそれ・・を見たかもしれない。

 他の人はみんなばらばらな場所を見ていておそらく気づいていないだろう。

 弓木さんはSIMカードの話題でとくに不安そうにしていて壁の一点を見つめていた。


 「私はスマートフォンというのを持っていないのだがそのシムカードとはなんだね?」


 三木元さんスマホもないのにSIMカードが抜かれてるなんていってもわからないよな。


 「えっと。この電話機の中に小さなカード入っていてそれがないと通話やネットができないんですよ」


 宮野さんはみんなに礼儀正しい。

 ここでの最高齢の三木元さん対してはなおさらだ。


 俺はふつうにこの建物の中が圏外だから電話もネットもできないんだとばっかりに思ってたわ。

 俺はこの現代社会においてひととおりスマホは使いこなしてるって思ってた、けどあくまで通話とネットができる環境にいてこそ使いこなしてるってことだったんだな。

 自分のITスキルの低さを思い知らされる。


 「お~い。ブックマン」


 「006」がいや、権藤ごんどうたもつさんが中央のモニターに呼びかけた。


 ――は~い。なんでございますか?


 えっ? モニターに呼びかけると反応してくれるんだ? 目から鱗。

 なにかあればお声かけくださいってこういう意味だったのか。


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