第20話 アルファベット 【日曜日:Sunday】
その分だけいちばん左側の電光掲示板が際立って見える。
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「A」「B」「C」「D」「E」「F」「G」「H」「I」「J」「K」「L」「M」
「N」「O」「P」「Q」「R」「S」「T」「U」「V」「W」「X」「Y」「Z」
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「じっさい、このアルファベットはなんなんだろうな?」
一時期はおとなしかった「006」が誰にでもなく問いかけた。
アルファベットは俺がここにきたときのままで「F」「M」「S」「W」の四つが点灯している。
ブックマンがこれを教えないと言ったからにはこのゲームに関わる重大な何かなんだろう。
「これはひょっとして曜日じゃないだろうか?」
門倉さんはまるで星座の星を結ぶようにアルファベットの上で指を動かしていった。
「曜日ぃ。どういうことですかぁ?」
小鳥遊さんはいまいちわかっていないようだ。
たしかに曜日ならありえるかもしれない。
「ええ、あ、はい。あなたもモニターを見てください。今、光っているアルファベットはF、M、S、Wの四つですよね?」
「その四つのF、M、S、Wを曜日の英語の頭文字として考えるということですか」
宮野さんもアルファベットを一文字ずつ指差しながらうなずいている。
「そゆことか。優奈もわかった」
「表示されているアルファベットなら。Fは
「006」も話に加わるなか「001」はやっぱり俺らの輪の一歩外にいた。
「
宮野さんは指先で空中に曜日のスペルを筆記体で綴っていった。
規則性がありそうな、ないような。
「宮野さん。そのアルファベットが曜日だとしてなんなんでしょう?」
俺はそんな疑問を直接訊いていた。
「これだけじゃなんとも言えないね」
「ここから抜け出せる日とか?」
門倉さんが閃いたように答えた。
「抜け出す? 一週間我慢すれば出版という手土産を持って正規に脱出できるのにか?」
「006」は門倉さんにきつめに反論した。
「優奈もそう思う。自分から脱落して出版のチャンスを手放すなんてきっとないよ」
「そうでしょうかね? 僕たち八人は死ぬかもしれないって脅されて監禁されてますよね?」
門倉さんの言ったことももっともだ。
でも契約書にサインをしちゃってるしな。
「001」と眼鏡っ娘と三木元さんの三人は俺たちの話に聞き耳を立てているかもしれないけど静かなままだ
どちらかといえば「006」と門倉さんと宮野さんの三人が話を進めている。
「死ぬかどうかってそれは僕らが本気で作家になる覚悟があるかどうか試してるんじゃないかな。作家ってなったあとが大変だってよく聞くじゃないですか。それに耐えうる人を探してるんだと思いますよ」
俺も宮野さんと同意見だ。
「あんた。宮野さんだっけ?」
「006」が嘗め回すよう宮野さんを見ている。
「はい」
「作家としてやっていけるかどうか根性を確かめてるってことか?」
ただでさえ体格が良いのにその鋭い視線は圧迫感が増すな。
「このゲームはそういう側面もあるんじゃないかと思ってます」
「まあ、絶対にないとは言い切れねーか。作家ってのは忍耐力も大事だ。極限状態でも精神が持つか試してるって可能性はあるかもな」
「ありがとうざいます」
宮野さんは「006」に一礼した。
下手にでることで上手くことを収めた。
「あの~。荷物を自分たちの部屋に運んでから、またみんなでここに集まって作戦会議でもしませんか? もちろん参加したいかたのみでけっこうですので。時間は昼の一時頃なんてどうでしょうか?」
いつの間にか宮野さんがまとめ役になっていた。
「宮野さん。それ名案! 名案ですよ!」
門倉さんが囃し立てる。
なんかムードメーカーみたいだ。
「それがいいかもな。あんたらもそうすれば?」
雰囲気に流されたのか「006」が俺を含め静かにしている三人にも声をかけた。
「001」は無反応、眼鏡っ娘の弓木さんは一回、コクっとうなずいた。
三木元さんも弓木さんの反応を見てから肯首した。
「あんたもどうだ?」
小鳥遊さんも乗り気みたいで優奈もいいよと答えた。
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