第19話 ブックマンのルール説明④ 【日曜日:Sunday】

 現状でわかっていることをまとめよう。

 出版をかけてここに俺たち八人が集めらた。

 でもここがどこだかわからない。


 ポイントを集めて最高得点だった人が好条件で本を出せる。

 ブックマンが言うには現在、九時十五分だっけ? そこから数分は経過してるな。

 九時二十分くらいにはなってるか? てことは俺が寝てるあいだにすでにゲームがはじまってて、九時間以上が経過したことになる。


 この大広間には時計がない。

 それに窓だってひとつもないから時間の感覚さえわからない。

 あとで部屋に戻ってスマホで確認するしかないな。

 ゲーム開始から九時間が経ってるなら今は朝で、一般社会では仕事がはじまったくらいの時間帯だ。


 ――オープン!


 ん? シャーデンフロイデの「SEN・ZAI・ICHI・GU」にそんなシャウトあったっけ? 勝手に合いの手作ったのか。

 ライブバージョン? ブックマンバージョン?


 俺が見ているモニターの真反対にあるエレベーターのドアが左右に大きく開いた。

 エレベータ―の中をあらためて見ると中の空間がやたらと広い。

 それ以外はどこにでもあるエレベーターみたいだ。


――さあ、日用品の入った物資の配布でーす! みなさんどうぞお持ち帰りくださーい!


 エレベーターが広い理由は簡単だ。

 ダンボール箱が載せられたスーパーにあるようなカートが横一列に八台も並んでいたから。

 

 このエレベーターもよくいう業務用というやつだろう。

 商業施設やホテルにあるエレベーターではなく、そのままストレッチャーごと載せられる病院のエレベーターみたいだ。


 カートに載ってるあのダンボールだと六十サイズくらいか? 六十サイズは立方体の三辺の合計が六十センチ以内なのが六十サイズの荷物。


 コンビニでは荷物の発送作業もあるから日頃からこういう荷物は見慣れている。

 今やってる仕事が役に立つ。

 作家って自分の人生すべてが糧になるんだ。

 俺の人生のなかの無駄な出来事さえ昇華してくれる。


 ――では、みなさんそれぞれ各自で今日一日ぶんの食事と日用品の入った荷物をお持ち帰りください。ちなみに箱の中身はどれも同じ食べ物が入っています。また各部屋の間取りや備品の数も同じですのでみなさん平等です。ただ日用品は大雑把に男性用と女性用と分かれていますことだけはご理解ください。なお、カートはみなさんの部屋の前にカート置き場がありますので使用後はそこに格納してください。荷物をお運びいただいたあとは自由行動となりますのでみなさんで語らうもよし。わいわい食事するもよし。文字通り殺し合うもよし、です!


 最後の一言が余計なんだよ。

 べつに極限状態でもないのに人が人なんて殺しませんよ。


 「ブックマンその前にちょっとひとつ?」


 ――なんでしょうか? 宮野さん。


 「左のモニターにあるあのアルファベットはなんなの?」


 ――あーこれですか?


 これも誰もが疑問に思ってたことだろう。

 ブックマンはマイクをもったまま右手を隣のモニターのほうを向けている。


 ――残念ですがこれはこのゲームに関わることですのでお答えできませ~~ん。


 「そう。わかった」


 宮野さんは簡単にそれだけ返した。

 訊き返しても無駄なことを理解しているからだ。

 見事なまでの省エネ行動。


 ――ご理解いただき感謝いたします。他になにかあればお声かけください。ではもう一度気をとりなおしまして。夢を叶えるための一週間のサバイバルゲーム。スタ~~~~~~ト! 


 ブックマンは高らかにゲーム開催を宣言して画面から跡形もなく消えた。

 お声かけくださいってそのツールがないんですけど?

 

 ブックマンがゲームの開催宣言をしたけど、すでに九時間以上が過ぎている。

 まるで開会式前から競技をやっているオリンピックみたいだ。


 同時にブックマンのいた右側にある俺らの名前やポイントが表示されていたモニターからも文字も消えた。

 また「しばらくお待ちください。」が戻ってきた。


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しばらくお待ちください。



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