第33話 比留間 【月曜日:Monday】
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しばらくお待ちください。
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静かになったモニターがただそこに存在していた。
「これで俺の名前も登録された。これでいいだろ? あらため俺は
「俺の名前も登録されたし。これで
比留間翔はここにいるメンバーひとりひとりを目で追っている。
昨日いなかったぶん誰が誰だかいまいちわからないんだろう。
「ここにいる八人にも例の封筒が届いたってことか」
比留間翔は誰にともなく語りかけながら小鳥遊さんに視線を移してつぎは弓木さんへと女子メンバーのふたりを見た。
俺の独断と偏見だけど「比留間女子」のふたりは目を輝かせている、と思う。
「みんなにもあの封筒が届いたんでしょ?」
比留間翔は最後のひとり宮野さんを視界に収めた。
「うん。僕のところにも届いた。だからここにいる」
宮野さんが最初にうなずくと三木元さん以外みんなもいっせいにうなずいた。
三木元さんだってきっとあの封筒を受け取っているはずだ。
ただ俺らとは関わりたくないってことなんだろう。
スマホやスマートウォッチが苦手なのは三木元さんだけだから、それも理解できるけどこのままじゃ俺らともっと距離ができてしまうんじゃ?
「勇のもとにもあれに似た封筒が届いてたんだよ。勇はそれまでも世界各地を転々としてたんだけどこれといった成績を残せてなくてね」
比留間勇ってたしか中学の義務教育を終えたあとすぐにブラジルに渡ったんだったよな? ブラジルの五部くらいのサッカークラブに所属したあと中米や中東、東アジアのリーグを転々としたって話だったはず。
そこから這い上がりいまの比留間勇がある。
「えっ? そうなんだ。ふ~ん」
完全無欠な比留間勇にもダメダメな時があったのを知ったからなのか門倉さんが嬉しそうにしている。
でも比留間勇の不遇時代を知らない人は知らないか。
門倉さんとは真逆に権藤さんはなんだか落ち着きがない。
さっきまで威勢はどうしたんだろう? 権藤さんはチラチラと比留間翔を見ている。
「勇はその封筒を受け取り一週間くらい家を空けて帰ってきたときに
「えー!? そ、それってワールドカップのときのセリフですよね? もうそのころにあの言葉があったんですねぇ。すてきぃ。勇くんの知らない情報がここできけるなんて」
小鳥遊さん俺の独断と偏見だけじゃなく確実に「比留間女子」だな。
比留間勇に対する言葉がそれを物語っている。
他の「比留間女子」が知らない情報を私だけが知れて嬉しいになってるし。
しかもそれを話してるのが双子の兄。
「勇が帰ってきてからそのあとなぜか地方のクラブにいきトライアウトに参加してプロ契約。そのあとは多くの人が知るように日本代表に選出されてトントン拍子で大成功。いまじゃ世界有数のビッククラブ所属のフットボーラーさ」
世間でいわれていた話がまさか身内の口から聞けるなんて。
これはたしかにすごい。
しかもぜんぶ脚色されてない本当の話だったのか。
「俺はずっと勇の日陰で生きてきた」
「翔くんはどんなジャンルの小説家志望なの?」
小鳥遊さんがどんどん比留間翔にお近づきになっていってる。
これって比留間勇に近づきたいのかそれとも比留間翔に近づきたいのかはわからない。
いま門倉さんはどうなってるのか? 俺は門倉さんを一瞥した。
顔に出すぎてる。
完全に引きつっていた。
俺は一瞬だけ弓木さんも見てみた。
弓木さんはあまり顔にでないあるいはださないタイプか。
小鳥遊さんが比留間翔に近づいていくのをどう思ってるのかまったく読めない。
「俺はSF小説だよ」
「えーSF小説って頭良くないと書けないですよね~。科学と数学とか物理とか難しそう」
「そうでもないよ。ピンキリだね。えっと小鳥遊さんは?」
「私はスポーツ小説です。だからサッカーのこととかもっと詳しく知りたいです」
「それって勇のことを知りたいってこと?」
「優奈はふたりのことが知りたいです。あとはお父様とかお母様のこととか?」
うわっ!? すごい攻めた。
敵陣のゴール前までいってるんじゃないか? それってもう家族構成を押さえておきたいってことだよな。
「ああ、ごめん。うち母子家庭で父親はいないんだ」
「そうだったんですかぁ。じゃあお母様はすごく苦労なさったんですね。優奈ならそういう話をちゃんときけると思うんです」
「そう、ありがとう。そうだ俺のスマホからSIMカードが抜かれてたんだけど。小鳥遊さんどうだった?」
比留間翔は話題を変えて小鳥遊さんを軽くあしらったみたいだ。
このタイプは相手にしないってことか。
あくまでここにいるなかでだけど弓木さんに軍配が上がりそう。
「私ですか? あんまりよくわからないですぅ。でもスマホ使えなくて優奈配信できないから困っちゃいました。翔くんも今度、優奈の配信観にきてね」
小鳥遊さん配信やってるなんてめちゃくちゃ現代っ娘。
小鳥遊さんはつなぎ袖を伸ばしてさらに手のひらを半分以上覆い隠した。
気持ち小匙一杯の”萌え”追加。
「ここから無事に出られたらね」
「やったー!」
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