第15話 ゲームマスター ブックマン② 【日曜日:Sunday】
ブックマンが左手を横に差し出すとブックマンが占領しているモニターの左隣にある俺からは右側の、もうひとつのモニターの「しばらくお待ちください。」が消えた。
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「001」=「001」
「002」=「
「003」=「
「004」=「
「005」=「
「006」=「006」
「007」=「
「008」=「
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ブックマンに呼応したように結果が表示された。
”みやのさん”は宮野さんって
ほとんどの人が名前を公開していた。
ただ名前を公開していてもそれは本名じゃなくてペンネームの可能性もある。
このさいどっちもでいいけど。
感覚的に作家の名前でこんな本名の人はいないだろうって思っても、作者以外そんなに気にしない。
あくまで本の中身が面白いかどうかだ。
ただ番号のままで過ごすってのはよっぽど知られたくない何かがあるんだろう。
まあ、「001」は顔全部タオルで覆ってるくらいなんだから本名もペンネームも名乗るはずがない。
俺は「001」にちらりと視線を送った。
じっと見返された。
あれっ、俺、この眼を知ってる気がする……。
どこだ? どこかで会ったことがある。
昨日、編プロに居た人か? でもあそこにはたくさん人がいたからな……。
「001」がいたようないないような。
頭の中に店長の顔が浮かんできた。
……いや、店長のはずがない。
なんだかんだ俺と店長はもう十年以上の付き合いだ。
「001」の目元を見てもぜんぜん違う。
それに背の高さも違う。
なんとなく身近にいる人ってことで店長の顔が浮かんできただけかもしれない。
――楽しみは後にとっておくのか? それとも最初に味わってしまうのか? ああ、どっちがいいのか。ああ~悩ましいですね~。
ブックマンが自分の額にわざとらしくマイクを当てて考える人のポーズをしている。
ブックマンの動きがなめらかでCGにはけっこう金をかけてるんじゃないかと思えた。
でも顔と胴体が同じだからマイク向かって倒れかかっているようにしか見えない。
――ここはひとつ。最初に良いご報告して皆さんに喜んでいただくことにしましょう!
俺たちの呼び名一覧が表示されているモニターの画面が切り替わった。
画面がいったん真っ黒になる。
そのまま一秒、二秒と真っ黒なままで三秒が経過した。
よん、俺が四秒目をカウントしようとしたときだった画面の左脇からびゅんと何が現れた。
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初
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何かは漢字一文字だった。
この画面の動きからしてプレゼンテーション用ソフトで作ったみたいだ。
最初の文字は「初」。
「初」は初めてって意味だよな。
すぐにまたつぎの何かが飛んできた。
この流れからするとつぎもまた何かの文字だろう。
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初版
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やっぱりつぎもまた漢字で「版」という字だった。
初版、この言葉って俺らのようなワナビーには馴染み深い言葉だ。
そのあとも次々規則的に漢字が流れてきた。
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初版一万部確約
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俺はその文字の羅列にあっけにとられていた。
いや、おそらくここにいる「001」から「008」までの全員だろう。
これって本を出してくれるときの条件なのか。
で、でも、しょ、初版で一万部も印刷してくれるって? こんな無名な俺らの本を? ここにいる全員が本当に無名なのかわからないけど……。
つぎは文字というよりいくつかのセンテンスで漢字と平仮名がじょじょに画面に浮かび上がってきた。
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初版一万部確約
【売上に関係なく、二刷 三刷 四刷 五刷まで確約。二刷は発売日の数日前に緊急増刷という名目で増刷されます】
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初版で一万部も出版してくれるうえに書店に並ぶ前なのに増刷決定? 裏を返せば「総合出版社財団」ってそこまでの資金がある団体ってことだよな? ブックマンのCGにも金かけてそうだし。
――発売前の増刷は大変なアドバンテージですね~! 二刷からは帯にどどーんっと「緊急増刷」の文字を入れて作品を推していきます。
こんなに優遇されるなんて。
誇れることじゃないけど今まで公募に落ちつづけてきたかいがある。
なんだかんだ説明会に行って良かった~!
――書籍の定価や印税率、ページ数、本のサイズ、カバーの種類、装丁などの細かな条件は勝ち残ったかたと要相談になります。わくわくしてきますねー! ですがここですこ~しだけ、シビアな話もしなくちゃいけませんね。え~~ん。え~~ん。
ブックマンが目を擦る仕草で嘘くさい泣きまねをしてる。
俺の
まあ、優遇されすぎてるっちゃされすぎてるのはたしかだ。
世の中そんな上手くはいかないよな。
――ここで出版ゲームのルール説明になります。
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