【火曜日:Tuesday】/【水曜日:Wednesday】
第37話 分配ポイント 【火曜日:Tuesday】/【水曜日:Wednesday】
部屋に戻ってスマホを充電しながら。
ギスギスしたあの空気感を払拭したくて「窒息の家族」を読み返す。
昨日読んでも今日また新たな発見があるそれが小説だ。
はじめて読んだときよりも今日のほうがこの小説がすごさがよくわかる。
読めば読むほどその完成度の高さに驚いてしまう。
これを学生で書いたなんてそれはやっぱり才能か。
中編小説だから半日もあれば読み終わるけど、読み慣れてる今日はいちだんと早く読み終わった。
いまの俺ポイントは一万六千弱だ使い惜しみなんてしないで何冊か本を買おうかな。
俺は比留間翔にスマートウォッチのボイスレコーダーの使いかたを教えてもらってから声だけの日記やメモを残している。
小一時間の録音を終え、今日はカップ麺とスナック菓子と飲み物だけで過ごす。
シャワーに入ってからは分厚いコミックを読んで時間をつぶす。
そのあいだもときどきスマートウォッチに声を吹き込んでいく。
集中して活字を読んだ日はよく眠れる。
俺はすこし早く布団に入った。
バイトのときよりも規則正しい生活をしてるかもしれない。
最近は目覚ましよりも早く目が覚めるけど習慣だからスマホのタイマーだけはセットしておく。
ウトウトしはじめたころだった。
なぜかスマートウォッチが鳴った。
タイマーを間違えたか? 解除し忘れたっけ? いや、これってスマホじゃなくてスマートウォッチのほうが鳴ったんだ。
片目を開き、両目を開く。
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【分配ポイントを獲得しました】 2859pt
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ぶ、分配ポイント? ポ、ポイントが分配されたってことは……これってまさか? 誰かが……死んだ。
う、うそだよな? そんなことがあるわけない。
なんで?
スマートウォッチの誤作動だよな? それでも黙って寝てるわけにはいかない。
寝起きで霞んでいた俺の目の前の靄がいっきに晴れていった。
俺はすぐにスリッパを履き部屋に鍵をかけて廊下に出た。
なにかの間違いであってくれ。
大広間に行って俺以外に七人がいればそれでいい。
廊下を走る俺の鼓動が早まる。
俺が大広間についてすぐに顔を見せたのは宮野さんと権藤さんだった。
すこし遅れてきたのが門倉さん。
やっぱりみんなのスマートウォッチも同時に鳴ったんだ。
みんなに分配ポイントが入ったのは間違いなさそうだ。
いまここにいる人はそれだけで生きてる証明になる。
この時点でいないのは……三木元さん、弓木さん、小鳥遊さん、そして比留間翔か。
女子メンバーなら遅れてくることもありえる。
まだ待ってみないと。
あっ、「005」の廊下から青白い顔をのぞかせたのは小鳥遊さんだった。
でも具合が悪そうにすぐ引き返していった。
なにか知ってるのか? それとも門倉さんを避けるためか? とりあえず小鳥遊さんの無事は確認できた。
さすがに青いつなぎだけでTシャツは着てないけど。
そのことから小鳥遊さんも驚いて部屋から飛び出してきたと考えていいだろう。
残りは三木元さんと弓木さんと、比留間翔か。
ゆっくりゆっくり「003」の廊下から弓木さんも姿を見せた。
眼鏡だから部屋の外に出る準備に時間がかかったのかもしれない。
その影響なのかわからにけどフレームをつかんで眼鏡を直している。
「死んだのは三木元さん
な、なんで宮野さんはそれがわかったんだ? だって三木元さんか比留間翔のどっちかが大広間にくるかもしれないのに。
「なんでふたりが死んだってわかるんですか?」
俺は思わず訊き返した。
門倉さんのそうですよと権藤さんのそうだよが重なった。
「詳しいことは省くけど。分配されたポイントが
えっ、と? なにを言ってるんだ? 宮野さんは俺にはわからない計算をしていた。
どんだけ頭の回転が速いんだよ?
門倉さんも権藤さんもあまり意味がわかってないようだった。
「ポイントってなんですか?」
「諸星くん。ポイントの件はあとだ。三木元さんと比留間くん部屋に分かれて行ってみよう。弓木さんはいったん部屋に戻って鍵をかけて待機していたほうがいい」
宮野さんは安全のために弓木さんに引き返すようにアドバイスした。
弓木さんも驚きながらもコクっとうなずき引き返していった。
なにがあるかわからない以上、男子メンバーで捜索ってことか。
「そうですね」
「001」と「004」の部屋は大広間を大きな円とするなら左半分に位置している。
俺は宮野さんに返事をしてすぐ「001」の方向へと走りはじめた。
「じゃあ、俺たちはこっちに行くぜ」
権藤さんが「004」に向かうと門倉さんもじゃあ僕もと権藤さんのあとを追っていった。
いま、ここにいるのは俺と宮野さんと権藤さんと門倉さんの四人だけで自然と二手にに分かれた。
俺も宮野さんも足早に「001」の比留間翔の部屋に向かう。
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