第6話:二人で買い物

 この日は足りないものの買い物をすることになった。


「お待たせしました。あの、どうでしょうか?」


 部屋から出てきた世那はクルッと一回転する。上着を着て、その下にはロングのスカートがヒラヒラと、そこから覗く白い肌へと視線が行きそうになるもグッと耐える。

 白で上手くまとめられており、より一層世那の美しさと可愛らしさが際立っていた。


「とても似合っているよ」

「あ、ありがとうございますぅ……」


 世那は恥ずかしそうに頬を染める。奏多も女性をこのように褒めることが少なく照れてしまう。


「行こうか」

「はい」


 二人は買い物へと出かけた。

 休日ということもあり、どこもかしこも多くの人や家族連れで賑わっている。今日の買い物は世那が棲むのに使う必需品などだ。


「意外だな。いつも高そうなのを使っているイメージだった」


 奏多の質問に世那は眉を寄せて頬を膨らませて抗議した。


「私も皆さんと同じですよ。高ければ良いってわけじゃありません。お父様やお母様も皆さんと同じものを使っています」

「そうなのか」

「お金持ちといっても、私の家は割と一般家庭と同じです。次はあそこです」


 そう言って世那は先に行ってしまうので、奏多はその後をついて行った。それから数時間ほどで買い物は終わりお昼となった。


「お昼は外で済まそうと思ったけど、何か食べてみたいのはある?」

「うーん、そうですね……」


 そう言って周囲を見渡した世那の目に入ったのは、パンに肉や野菜、ピクルスなどを挟んだハンバーガーのお店だった。

 全国展開しており、誰でも聞いたことのある有名店だ。

 世那はそのお店をジーッと見つめていた。


「ハンバーガーを食べたことないのか?」

「いえ、食べたことはあるのですが家の者が作った手作りでして、外食で食べたことがないんです」

「そうなのか。ならここにするか? 他に気になるお店がおればそこでもいいけど」

「いえ、ここにします!」


 世那は一度もチェーン店のハンバーガーを食べたことがない。健康に悪いなどと言われて食べさせてもらえなかった。


「健康に悪いと言われて食べさせてもらえなかったのですが、本当に体に悪いんでしょうか?」

「ここのハンバーガーには添加物が多く、野菜が少ないからね。毎日じゃなければ大丈夫だよ」

「なら早く食べましょう!」


 そう言って世那に手を引かれて店へと連れていかれた。

 世那はメニューを見て目を輝かせながら色々と悩んでおり奏多に聞いてきた。


「あの、定番のメニューはどれでしょうか? やはり最初はスタンダードが良いと思いまして」


 世那が選んだのはバンズ、ビーフパティ、チーズ、ピクルスの入ったシンプルなチーズバーガーのセットだった。


「定番のハンバーガーだね。なら俺はダブルチーズバーガーかな」


 注文するとすぐに出来上がり店内で食べることにした。

 小さな口ではむっとかぶりつく世那は一拍、目を見開かせた。


「雨宮さん、美味しいですよ!」


 奏多を見てそう言った。口にはソースが着いているが、それよりも先に注意することがあった。


「美味しいのは何よりだが、ちょっとは周りを見てほしい……」


 言われて気付いた世那は、周りを見て気が付いた。周りの人が自分を見ているということに。恥ずかしさのあまり世那は顔のみならず耳までも真っ赤にしてしまい、顔を俯かせてしまった。


「ほら、とりあえずこれを」


 紙拭きを手渡して口元に付いたソースを指差す。すると紙拭きを受け取るとすぐに拭き取ってお礼を言った。


「あ、ありがとうございますぅ……早く言ってほしかったです」

「先に言いたかったけどな」

「うっ、すみません。ご迷惑をおかけしました」

「これくらいのことは気にしてないよ」


 昼食を済ませた奏多と世那は、ショッピングモールを後にして帰宅していた。

 世那が両手に荷物を持つ奏多を見て心配そうにする。


「あの、やはり私も持った方が、重くはありませんか?」


 洋服や食料品など買った物は多いが重くはなかった。


「いいや。大丈夫だよ。まあ、重いか重くないかで言われると重いけど、大したことはない。これくらいは男の俺に任せてくれ」


 奏多はそう言って荷物を持ち上げる。


「ありがとうございます。ですがキツくなったら言ってください。私も持ちます」

「ああ、その時がくれば」


 二人は雑談しながら帰路へと着くのだった。


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