第24話:ピクニック①

 結華が来た翌日の日曜日の朝。

 朝食を食べながら窓の外を見る。


「今日も快晴か」


 青く澄み渡った空と、昇って爛々と照らす太陽。

 散歩をしている人や走っている人、他にも出かけに行こうとしている人がいた。


「たまには散歩もいいな」


 日光浴は体に良く、体内でビタミンDも作られる。健康に良いとされるので、奏多は散歩でもしようかと考えていた。

 幸いにも近くには大きめの公園があり土曜日や日曜日、祝日などに多くの人が歩いたりピクニックをしていたりする。

 朝食を食べていると世那が起きて眠そうに瞼を擦っている。


「おはよう」

「あ、おはようございましゅ……」

「食べる前に顔を洗ってきな」

「ふぁ~、はぃ……」


 そのまま洗面所へと向かい数分後、世那が戻ってきて席に着いた。

 そのタイミングでお茶を淹れて差し出す。


「朝食の準備もありがとうございます」

「おう」


 そこからもぐもぐと食べ始める世那が窓の外を見た。


「いい天気ですね」

「まったくだ。こんな天気だし散歩でも行こうかなと考えていた」

「散歩ですか。私もご一緒していいですか?」

「おう。せっかくだしお弁当でも作って外で食べようか」

「いいですね。ピクニックなって子供の時以来です」

「実は俺もだ。そうと決まればさっさと準備しないとだな」


「はい!」


 早々に朝食を済ませ、二人は準備を始めた。とはいっても着替えて弁当の準備をするだけだ。弁当はおにぎりとおかずをいくつか作ることにした。

 二時間ほどで準備も終わり、時刻は午前十時半となった。二人はマンションを出て近くの公園へと歩き始めた。

 世那がいることで視線を感じるも、奏多は昨日も同じように多くの視線を感じていたがあまり気にしていなかった。

 程なくして近くの公園へと到着した。周りは家族連れなどで賑わっており、ちらほらカップルも見かけた。

 少し公園の周りを歩く。


「あ。奏多さん見てください。あそこにカモの親子がいますよ」


 指を差す方を見ると、池の中央辺りでカモの親子が泳いでいた。

 親カモのあとを一生懸命について行く子カモがなんとも可愛らしい。


「可愛いな。なんかこう、応援したくなる」

「その気持ちわかります」


 二人は親の後をついて行く子カモを心の中で応援した。

 程なくカモを観察した二人は再び歩き出す。花を見つけたり遊んでいる子供を微笑ましく見たり。

 すると目の前で小さな女の子が転んでしまい、世那がすぐに駆け寄った。


「大丈夫ですか?」

「う、うん」


 足を見ると擦り剝いており、少しだが血が出ていた。

 世那がどうしようかと奏多を見て来る。奏多は一瞬周りを見るが周りに親のような詩型はない。

 とりあえず女の子の前でしゃがみ込む。


「そこの水道で一旦傷口を洗おうか。バイ菌が入っちゃうからね」

「うん」


 女の子は頷き言われた通り水道で傷口を洗うが、染みたのか「うっ」という声を漏らした。

 洗い終わった傷口を拭き、奏多は持ってきていた絆創膏を張ってあげた。


「よしっ。これでもう大丈夫」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん。ありがとう!」


 元気にお礼をする女の子に二人は笑顔で返す。そして世那が女の子に質問する。


「そういえば近くにご両親とかはいますか?」

「お姉ちゃんと一緒だったの。でもはぐれちゃって」


 どうやら迷子のようだ。

 奏多と世那は顔を見合わせる。


「私は天ヶ瀬世那といいます」

「俺は雨宮奏多だ。キミの名前を聞いてもいいかな?」

「うん。つむぎはつむぎって言うの!」

「教えてくれてありがとう、つむぎちゃん。お姉ちゃんたちと一緒にそのお姉ちゃんを探そうか」

「いいの……?」

「もちろんですよ」

「ああ。一人だと寂しいだろ?」


 世那と奏多の言葉につむぎは笑顔で「ありがとう!」と返した。その後、つむぎの姉を探すために公園内を散策する。

探しつつ色々なことを話す。


「お姉ちゃんとお兄ちゃんは恋人なの?」

「「――え?」」


 一瞬の硬直。世那と奏多は顔を赤くしつつも否定する。


「違う違う。友達だよ」

「――そうですよ。恋人とかではありませんよ」

「ふ~ん。仲良さそうだから、そうなのかなって」


 二人は苦笑いしかできなかった。

 奏多は話題を逸らそうとつむぎに質問する。


「そうだ。つむぎちゃんのお姉ちゃんの名前を聞いてもいいかな? 特徴とか」

「お姉ちゃんの名前はりな。いつもりな姉って呼んでるの! いつも元気なお姉ちゃんだよ!」


 そこから探し始めて数分。

 声が聞こえた。


「つむぎ! つむぎどこー!」


 名前を呼んでいる声がして、三人は顔を見合わせる。


「もしかしてこの声がそう?」

「うん! りな姉の声だ!」


 見つかったようで安堵する奏多と世那だったが、姿が見えてつむぎが走っていく。


「りな姉!」


 気付いたのか彼女は振り返り、つむぎを見て心配していた顔が一気に安堵の表情へと変わった。

 だが、奏多と世那は彼女見て固まった。

 だってそれは、俊斗の彼女である高倉璃奈だったからだ。


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