第23話:妹襲来⁉⑤
「世那お姉ちゃん、お兄ちゃんまたね!」
そう言って結華は元気に手を振って改札を抜けて行った。
結華を駅まで見送った奏多と世那は、帰るために歩きだした。
空は茜色に染まっており、いつしか人通りも減ってきていた。
「いつの間に結華とあんなに仲良くなったんだ?」
「一緒にお店を回っていたら自然と仲良くなりまして」
「色々迷惑をかけたみたいだな」
「いえいえ。一緒にいて楽しかったので」
「なら良かった。また結華とも遊んでやってくれ」
「はい」
帰る途中、いつものスーパーに寄って夕飯の食材を買っていく。ただ、ショッピングモールで買った大半は結華の物であった。なので寄り道して買っていくことが出来る。
スーパーに入り店内を回る。
「今日は何にしようかな」
「得意な料理とかはあるんですか?」
得意な料理と言われて頭を悩ます。特にこれといった得意料理はなく、自分が食べたいから作るという思考でいままで作っていた。
実家にいるときも、時々自分が食べたい物や結華が食べたいものを定期的に作り、しっかりバランスも考えて作っていた。
なのでこれといった得意料理はなかった。
「そうだな。特にこれといったのはないかな、強いて言えば、ハンバーグとかかな?」
「男の子らしいですね」
「おいおい……」
ふふっとも笑う世那。少し歩いていると回線売り場へと着いた。
そこには今が旬のしらすがパック詰めで並んでいた。
「しらすか……」
生しらすもいいのだが、釜揚げも悪くない。ただ、海から離れている内陸部の生しらすはあまり美味しくない。取れたてで食べる生しらす丼が美味しいのだ。
「釜揚げしらすを使ったしらす丼にでもしようか」
「世那はしらすは食べれる?」
「はい。好き嫌いはそこまでありません。ただ、パクチーだけは苦手で……」
「独特の味や匂いがあるからこればかりは仕方がないよ。俺も好んで食べようとはしないよ」
「良かったです。パクチーの料理ばっかり出てきたら嫌いになるところでした」
そう言って笑みを浮かべる世那に、奏多は安堵するのだった。
結局しらす丼を作ることになった。
帰り着替えたら早速夕飯の支度を始める奏多。すると世那がキッチンへとやってきた。
「私も少しは手伝います」
「なら酢飯を作ってくれるか?」
「酢飯ですか? 炊きあがったご飯に酢を入れて終わりでは?」
「ざっくり言えばそうだけど、すし酢を作るところからだな」
すし酢を作るには米酢、砂糖、塩を混ぜわせることで簡単にできる。
材料を用意して混ぜ合わせる。
「あとは少し硬めに炊きあがったご飯にこのすし酢を少しずつ入れて混ぜて冷ましていくだけだ」
「あの、桶みたいのは使わないんですか?」
「あれば使いたかったけど、ないから仕方がない。平皿とかに移し替えてやろう」
「分かりました。でも、どうして桶を使うんでしょうか?」
世那は桶を使う理由がわからないようだ。寿司が好きな人は知っているだろうが、桶は寿司桶という。
奏多は寿司桶を使う理由を説明する。
「寿司桶は、ご飯の水分量をコントロールできるんだ。酢飯を作るには水分を適度に飛ばす必要があるんだ。それに冷めやすいからね」
「なるほど」
なので今回は平皿でやることにした。べちゃっとするのが難点だが割り切ることにした。
最初に教えると世那は手際よく酢飯を作っていく。その間に奏多は大葉を千切りにして、しょうがをすりおろす。
あとは小ねぎを切り完成だ。ご飯がまだ温かいので冷めるのを待ちながら、その間に味噌汁を作っていく。
とはいってもすぐに終わり盛り付けをして夕食となった。
「「いただきます」」
一口食べる。
しらす、酢飯、大葉、しょうが、醤油が絶妙のバランスで噛み合っており、家で作って食べるには最高の仕上がりだった。
「美味しいです」
「だな。今度は生しらすでも食べに行こう」
「いいですね。その時が楽しみです」
二人は味わいならゆっくりと食べるのであった。
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