第22話:妹襲来⁉④
世那も準備をしている間に朝食を作ってマンションを出たのは十時頃だった。
今日が土曜日ということもあり道はいつもより混んでおり、車通りも普段より多かった。
電車に乗って三十分ほどの場所にあるショッピングモールへとやってきた。
世那という芸能人顔負けの美少女がいることで注目が一気に集まってしまう。
「うっ、みんな見てくる……」
結華が慣れない視線を浴びて縮こまってしまう。一方世那はというと、慣れているのか気付いていないのか、視線を気にせず平然としていた。
むしろ、あまり来ることがないショッピングモールでワクワクして気付いていなかった。
「慣れるんだ……」
「慣れたの?」
「全然」
「ダメじゃん……」
先を走る世那を見て、奏多と結華もついていった。
しばらくして奏多は思った。
「慣れって凄いな……」
目の前には周りの視線など気にせず次々と店を回っていく。奏多は結華に言われた通りの荷物持ちとなっていた。
両手に荷物を持つ奏多を見て世那が心配な表情向ける。
「大丈夫ですか? 私も少しは持ちますが」
「いや、大丈夫だよ。それに女の子に荷物を持たせるのは悪いからな」
「そうだよ。お兄ちゃんもこう言っているんだし、早く次のお店に行こ!」
「あっ、結華さん」
世那の手を引いて次の店へと向かう二人。その後を追うようについて行った。
買い物もひと段落しお昼になった。
世那がファミレスで食べたことがないというので、昼食はショッピングモールの中になるファミレスで食べることになった。
パスタやピザなどを注文し、程なくして料理がテーブルに並べられる。
食べはじめると、値段のわりに美味しく世那は驚いた表情をしていた。
「美味しいですね」
「喜んでもらえて何よりだ」
「私も友達と一緒に来て勉強したりしてるんだ」
「楽しそうでいいですね。私は友達と一緒に勉強とかはしたことがなくて、ちょっと羨ましいです」
「なら今度勉強教えてよ!」
目をキラキラさせて頼む結華を見て、世那は笑みを浮かべて頷いた。
「はい。その時はお願いしますね」
「やったぁ! 世那さんってもしかして頭が良いの?」
答えたのは世那ではなく奏多だった。
「ああ。学年一位だぞ」
「え!?」
驚いた顔を向ける。
「すごい!」
「そう言われると照れちゃいますね。ありがとうございます」
「俺も世那に勉強を教えてもらおうかな」
「いいですよ。手は抜きませんからね?」
「うっ、頑張るよ」
それから食べ終わり食休みを挟んで店を出た。
買い物はすでに終わっており、今はぐるぐるとショッピングモールを回っていた。
「悪い、ちょっとトイレ」
「お兄ちゃん、言い方ってのがあるでしょ」
「別にいいだろ……」
「じゃあ、私と世那さんはここで待ってるよ」
「お待ちしてますね」
二人を待たせるわけにもいかないので早足で向かった。数分後、トレイから戻ると柄の悪い大学生の男三人に絡まれている世那と結華を発見した。
「いいじゃん。ちょっと遊ぼうよ」
「そうそう。俺達いいお店知ってるよ?」
「お酒飲める~?」
「友人を待っているので申し訳ございません」
世那が誘いを丁寧に断る。結華は怖いのか世那の一歩後ろで裾を掴んでいた。
「先に帰ったって言えばいいじゃん」
「そうだよ。俺達と遊ぼうよ」
「ほらほら」
そう言って世那の手を掴もうとして、その手が掴まれた。
「お兄さんたち、二人は俺の連れなんだ」
「あ?」
男たちは横から入ってきた奏多を睨みつける。奏多は掴んだ手を放し少し怖いと思うも表情には出さないようにする。
連れが来たと分かった途端、男たちは舌打ちをする。
「今来るのかよ。タイミングが悪いな」
「いいから帰るぞ」
「そうだな」
男たちは素直に離れて行った。
すると結華が奏多に飛びついてきた。
「お兄ちゃん遅いよ!」
「ごめん。怖かったか?」
「べ、別に怖くなかったもん!」
それでも抱き着いた手を放そうとはしない。
世那が奏多に近付き結華に見えないように手を握ってくる。
「遅いですよ」
ギュッと手を強く握る。
「ごめん」
「助けてくれてありがとうございます。戻って来るのが遅かったんですから何か奢ってください」
「ああ」
「お兄ちゃん、私もだからね」
「分かってるよ」
こうして帰りのカフェで奏多は二人に奢ることになるのだった。
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