第21話:妹襲来⁉③
廊下で鉢合わせした世那と結華。
目と目が合った数秒後。
「お兄ちゃん、同棲してたの!?」
「こちらが妹さんですか?」
二人の声が重なったが、奏多には聞き取れていた。
「まずは世那に紹介しよう。俺の妹の結華だ」
「妹の結華、です」
「はじめまして。一緒に暮らしている天ヶ瀬世那と申します」
優雅で上品な一礼をする世那を見て、結華は「ほわぁ〜」という声を漏らしていた。
そこで結華は、天ヶ瀬という苗字に気付いた。
「もしかして、お父さんが行ってる会社の……」
「娘さんだ。先週呼ばれて食事に行ってきた」
空いた口が塞がらないようだった。
廊下で話すのも悪いので、リビングに移動することにした。
「奏多さん、出かけるとのことですから、先に着替えてきては?」
「たしかに。ならそうさせてもらうよ」
奏多が部屋に戻り、リビングには世那と結華の二人きりとなった。
静寂の時間が過ぎ、耐えきれなくなった結花が頭を下げた。
「いつも父と母がお世話になっております」
「私ではなく、お父様に言うべき言葉ですね」
ふふっと上品に笑う世那。世那は奏多から聞いていた結華とはちょっと違うので、初対面を相手に緊張しているだと考えていた。
「リラックスしてください」
「ふぇ?」
結華は言われるとは思っていなかったのか気の抜けた声を出した。
「その、分かりましたか?」
「はい。肩の力を抜いてください。奏多さんの妹さんですし、もっとフレンドリーでいいですよ。そんな畏まった言い方をしなくても私は気にしませんよ」
「えっと、その……」
なんて返せばいいのか迷っている結華だったが、少ししていつもの口調に戻った。
「ありがとう。少し楽になったよ」
「それは良かったです」
「ところで」
そして結華はあることを尋ねた、。
「同棲ってどういうことですか?」
「え……?」
「お互いの両親が同意しているの?」
「してますよ。むしろ私の父と母が言い出したことですから」
「え? 私、お兄ちゃんが世那さんみたいな美人さんと、それも大企業の娘さんと同棲しているとか聞いていなんだけど……」
それもそのはず。奏多の両親は忙しくてそれを結華に伝えることを忘れていたのだ。
だが結華は忙しいことを知っており、自分に伝え忘れているんだろうと思っていた。
結華は立て続けに世那へと質問を投げかける。
「同棲もしているんだし、お兄ちゃんのことは好きなの?」
「――えっ!? す、好きだなんてそんな」
急に顔を赤くしてしまう世那を見て察してしまう。中学生は色恋沙汰には誰よりも過敏なのである。
世那は続ける。
「私は奏多さんには釣り合いません。私、こう見えて家事とか全然できないんです。それに、この感情が好きということなのか、わからないんです」
誰かに好意を抱いたことがない世那にとって、今の感情がなんなのか理解できないでいた。
そして困ったように笑う世那を見て、結華は呆れたようにため息をついた。
「まあ、私が何を言うことじゃないからいいけど、後悔することがないようにね」
「はい。ありがとうございます」
次に質問をしたのは世那からだった。
「今日のお買い物ですが私もついて行っていいですか?」
もう来ると思ったいた結華は目を見開き、そして笑みを浮かべた。
「もちろんだよ! 一緒に買い物に行こうよ!」
「ありがとうございます。そころで、結華さんは奏多さんのことが大好きなんですか?」
「な、なんでそう思うの?」
「見ていて大好きなんだなと分かりました」
「あんなお兄ちゃん大嫌い」
ほのかに朱色に染まった顔を背けると、そこには着替えから戻った奏多が立ってニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「ほぉ、やっぱりいつもは照れ隠しだったのか」
「お兄ちゃん!? いつから聞いてたの!」
「そうだな。世那が「大好きなんですか?」って結華に聞いたところからだな」
「〜〜〜〜っ! お兄ちゃんのバカ! 変態! えっち!」
「いや、変態とかえっちはどう考えても違うだろ!?」
「変態ですぅ!」
そんな兄妹の言い合いを見て世那は「ふふっ」と面白そうに笑ったのだった。
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