第20話:妹襲来⁉②

 翌日の朝。

 時刻は八時を回ろうとしていた。奏多も世那も休日はダラダラしており、早く起きることもない。

 いつもの癖で起きてしまった奏多は妹の結華が来ることをすっかりと忘れ、二度寝をしようとして玄関のチャイムが鳴った。


「誰だこんな時間に……って、結華が来るのは今日か」


 起き上がろうとして体が重たいに気付いた。そこには隣で寝ている世那の姿があり、両手はガッチリと奏多の腰にホールドされていた。

 また寝ぼけてベッドに入ってきたのだと瞬時に理解する。

 起きようにも起き上がれず、玄関の扉越しには結華が待っている。


「世那、起きてくれ」


 肩を揺すって起こすも中々起きる気配がない。

 今度は強く揺すってみる。


「ん~、なんですかぁ。今日はお休みですよぉ~」


 眠たそうに答える世那だが、自分が奏多のベッドで寝ていることに、両手を回していることにすら気付いていない。

 なので、奏多は気持ち良さそうに寝ている世那の耳元で囁く。


「今日は月曜日だぞ」

「はっ⁉ 早く起きないと――」


 パッと目が覚めた世那は起き上がろうとして、奏多とおでこがゴチンッとぶつかった。


「いってぇ」

「~~~ッ!!」


 お互いにおでこを抑えてうずくまる。

 少しして世那が隣を見ると、そこにはおでこを抑えている奏多の姿があった。


「ご、ごめんなさい! それに私、また奏多さんの部屋で……」


 おでこは赤いままだがそれとはまた違って顔が赤く染まっている。


「い、いや。俺も悪いから気にしないでくれ。それと、ベッドの件もきにしてない」

「本当にすみません。それで、今日は月曜日ですか?」

「違う。アレは嘘だ。実はもう妹が玄関に来ているんだ」

「私を置いて出た方が?」

「いや、それが……」


 キョトンと首を傾げる世那に、奏多はなんて説明をするか迷い、結局本当のことを言った。

 すると世那は声にもならない声を上げて布団に包まってしまった。


「ごめんなさい!」

「いや、気にしてないから」


 むしろ嬉しかったとは言えない。

 それよりもだ。


「妹を待たせている。早く出ないと怒られちまう」

「そ、そうでした!」


 バッと起き上がった世那は速足で部屋を出ていき自室へと向かった。続いて奏多も起き上がり、寝巻のままだが玄関へと向かい扉を開けた。


「おはよう……」


 そこには、カラメル色のぱっちりとした瞳に甘栗色の髪をサイドテールにした、身長155センチほどの少女が立っていた。

 彼女のぱっちりとした瞳は吊り上がっており、柔らかそうな頬は膨らんで苛立ちを表していた。

 奏多はそんな彼女に、妹である結華に挨拶する。


「おはよう、結華」

「……お兄ちゃん。それよりも先に言うことがあるんじゃないの?」

「出るのが遅れてごめん」

「まあ、いいよ。どうせ寝てたんでしょ?」

「あ、ああ……」

「何? 違うの?」

「いや。まあ、色々あったけど大体そんな感じだ」


 結華に世那が隣で寝ていたとは言えず言葉を濁す。


「ふーん。まあ、いいけど。それよりも上がってもいい? 勝手に上がるけどね」

「ちょっと待――」

「奏多さんも着替えたら――」


 奏多の静止の声を聞かずに部屋に上がった結華は、ちょうど着替え終わった世那と遭遇した。


「「――え?」」


 そして二人は固まるのだった。

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