第19話:妹襲来⁉①
学校が始まりいつもの日常がやって来る。
そんなのんびりとした金曜日の夜であった。突然奏多のスマホが鳴った。
「こんな時間に誰からだ?」
「ご両親とかでしょうか?」
奏多の両親は忙しいのかここ最近は連絡がなかった。手に取って電話の相手を確認すると、それは妹の
露骨に嫌そうな顔となる。
「げっ、結華からだ……」
「誰、ですか? 女性の名前に聞こえたのですが?」
「話してなかったか。結華は俺の妹だ」
「妹さんですか?」
「そう。今は中学二年だよ」
いつも当たりが強く、だが時々素直で優しい一面を見せてくる可愛い妹だと奏多は思っている。
「でもどうして急に来るんでしょうか?」
「さあ? とにかく出ればわかるだろ」
そう言って奏多は電話に出る。
『お兄ちゃん出るの遅い! 可愛い妹がせっかく電話をかけているのに!』
「悪い悪い。それで何か用か? お前の方から電話をしてくるなんて珍しいからな」
『別に。ただ、明日は暇だからそっちに行こうかなって思ったの。だって一人暮らしで暇してるんでしょ?』
「いや、暇だけど……」
『私が行くのそんなに嫌? 何か隠してるでしょ?』
「別に隠してないよ。来るなら来てもいいが、何もないぞ?」
『別にいいよ。私の買い物に付き合ってほしいだけだから。それじゃ明日行くからね!』
「あっ、ちょっと待って」
ツーッツーッと通話の切れた音がする。
「あいつ、電話を切りやがった……」
「来てはダメなのでしょうか?」
世那が奏多に聞いてくるので説明する。
「来るのは別に構わないんだが、あの様子だと父さんと母さん、世那のことを結華に伝えてないぞ」
「え?」
事実、結華は、奏多と世那が同棲していることは知らない。
「もしかして私は邪魔でしょうか?」
不安げな表情を見せる世那に奏多は微笑む。
世那が邪魔なわけではない。むしろ最近だと一緒に居て落ち着くくらいなのだ。
「邪魔なわけがないよ。最初は居心地が悪かったけど、この一カ月一緒にいて、今は世那がいて落ち着くくらいだ」
「お、落ち着くって……」
顔を赤くする世那はそっぽを向いてしまう。悪いことを言ったのかと思い頭を掻いていると世那が聞いてきた。
「それで、妹さんは何をしに来るんですか?」
「買い物に付き合えだとさ」
「お買い物ですか」
「一緒に行くだろ?」
すると「え?」という間の抜けた声を漏らした。
「予定があるならいいんだけど」
世那には世那の予定があり無理に誘うつもりはなかった。
「いえ。特に予定はありません。ただ、家族との時間に私がいてもいいのかと思いまして」
「俺は世那も一緒だと嬉しいよ」
奏多の発言に世那は一瞬の硬直の後、まだ赤い顔のまま小さく呟いた。
「その、ご一緒します」
「ああ。世那に会ったら結華は驚くだろうな」
笑う奏多を見て世那も上品に笑うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます