第28話:ピクニック⑤
奏多はゆっくりと目が覚めるも後頭部に違和感があった。
柔らかい感覚があり、穏やかな風と一緒に綺麗で艶やかな白髪が靡いて優しい香りがした。
目を開くと世那が顔を寄せており息がかかるくらい近く、奏多は膝枕されているという事実に気付いた。
どうして膝枕をしているのかという事実よりも、なにより世那の顔が近かった。
数秒の間二人の目が合い、次第に世那の顔が赤く染まっていく。
そんな赤く染まっていく世那の顔を見てしまった奏多も顔が熱い。
「その、ありがとう……」
「い、いえ!」
バッと顔を上げて明後日の方向を向いた世那の横顔はまだ赤い。
「それとありがとう。疲れなかったか?」
「いえ。大丈――あぅっ……奏多さん、助けて」
足が痺れて身動きが取れずにプルプルと震える世那は奏多に助けを求めた。
涙目な世那を見て奏多はため息を吐いた。
「治まるまで待つしかない」
「そんなぁ……」
するとつむぎが起きたようだ。
眠そうに瞼を擦りながらも周りを見て三人いることに安心したように頬を緩めた。
そして正座している世那を見て首を傾げる。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「世那ちゃんは今、足が痺れて動けないんだよ。だから~」
璃奈がつむぎに耳打ちすると、つむぎが世那へと近づき、痺れている足をつんつんしだした。
ビクッと震える世那の口から「ひゃっ」という可愛らしい声が漏れ出る。
「や、辞めてください……」
「いいぞ。もっとやれ」
「そうそう。もっとつんつんしちゃえ」
奏多と璃奈はつむぎにもっとやるように言い出す。
それから数分後。世那は横になっていた。
程なくすると、涙目で奏多と璃奈を睨みつけた。
「やめてくださいって言ったのに、酷いです」
「い、いやぁ、面白かったからつい……」
「その反応があまりに面白いもんだから、つい……」
すると頬を膨らませた世那は「つい、じゃありません!」と数分説教を受ける羽目になった。
まだ時間があったので、みんなで少し遊び解散となった。
帰ろうとした間際、璃奈が世那に耳打ちをして笑みを浮かべた。世那は顔を真っ赤にしており「ち、違いますって!」と言っていたが奏多にはなんの話をしていたのか分からなかった。
「それじゃあ、また学校でね!」
「ばいば~い!」
二人は手を振って仲良く帰っていった。
残った奏多と世那は顔を見合わせる。まだほのかに顔が赤い世那は、夕焼けを背後にして柔らかい笑みを浮かべる。
「楽しかったですね」
その笑みは今日あったこと全てに対して楽しかったと物語っていた。
見惚れそうになる奏多だが、すぐに返事を返す。
「だな。こういう日も悪くない。そころで、最後何を話していたんだ?」
「な、なんでもありません! 早く夕食の食材を買って帰りましょう!」
急かす世那は先に歩き出してしまうも、奏多も遅れて後を着いていく。
「夕食はハンバーグがいいです」
「え?」
「意地悪されたのでハンバーグで許してあげます。反省してください」
世那は痺れた足をつっついたことは奏多の作る手作りハンバーグで水に流すことにした。
決して奏多のハンバーグが美味しいからまた食べたい……とかではない!
「はい。すみません……特別に世那のハンバーグにはチーズでも入れようか」
「当然です」
頬を膨らませて怒っている風を出す世那ではあるが、決してハンバーグが食べたいからではない!
帰りにスーパーに寄って食材を買い帰った。
この日、世那の夕食だけ豪華だったのは言うまでもなかった。
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