第7話:お嬢様はポンコツ?
家へと着き買ってきた荷物を片付け夕飯の準備をしようとする。
「私も手伝います。前回と昨日と、作っていただいてばかりでは申し訳なく」
「料理をしたことは?」
スーッと目を逸らし歯切れ悪く答えた。
「ちょ、ちょっとだけ、なら……」
「それはいつの話だ?」
「な、七年前、です」
「うん。料理は任せてくれ」
「うぅ……お願いします」
世那には少し手伝いをしてもらいながら料理をしていく。今日の気分は唐揚げだったので、手慣れたように下味を付けた鶏肉を次々と油の海へと沈めていく。
パチパチと音がしてきつね色に揚がってきたので次々と油の海から救出し、皿へと盛り付けていく。
「さあ、出来上がりだ」
「とても美味しそうですね」
「冷めないうちに食べようか」
手を合わせて早速食べ始めた。
世那は唐揚げをその小さな口へと運び、目を見開かせた。口の中へと入れた瞬間に肉汁がぶわっと広がる。
「んんっ⁉」
「どうだ? 力作だ!」
ふふーんと自慢するように胸を張る奏多に、世那は微笑む。
「唐揚げは食べたことがありますけど、ここまで美味しいのは食べたことがありません。何か秘伝のレシピがあったり?」
「そんなものはないよ。ただ、下味を付ける前の肉にちょっとな」
「料理とは奥深いですね。私にできるでしょうか?」
「できるようになるさ。まずは包丁の握り方から勉強しような」
「お恥かしながら、よろしくお願いします」
こうして二人は夕食を楽しんだ。奏多が皿洗いをしようとすると、そこに世那が食べ終わった食器を持ってきた。
「お皿洗いは任せてください」
「できるか?」
「それくらいできます」
「ならお願いしようかな」
世那に任せて奏多はゆっくりしていた。すると、キッチンからパリンと割れる音が響いた。
慌てて駆けつけるとそこには割れたお皿があり、世那が片付けようとしていた。
「す、すみません! すぐに片付けます!」
「いいや、俺が片付けるよ」
箒を持ってきて慣れた手つきで片付けを済ませる。
「すみません……」
「気にしてないよ。それよりも手とか切ってないよな?」
「はい。大丈夫です」
「ならよかった」
もしかしたら傷とか残るかもしれないと、女の子にこういったことはやらせたくないという思いがあった。
世那は残りの皿を洗い始め、掴んだ皿がツルッと宙に舞い音を立てて割れた。
「「………………」」
無言の空気が流れる。世那の表情は青い。
「もしかして、やったことない?」
「……恥ずかしながら片手で数えられるくらいしか」
しかもその全てにおいて皿を割っており、世那の両親からもこういったことはやらせてもらえなかった。
「俺がやるよ」
「はぃ……」
落ち込む世那を見て奏多は笑った。
「どうして笑ったんでしょうか?」
「ごめん、馬鹿にしたわけじゃない。完璧に見えて案外抜けているところがあるんだなって」
「実は、家事全般が壊滅的でして……」
「ははっ、ダメなところもある。それが人間ってもんだよ。少しずつ慣れていけばいいんだよ」
「はい、頑張ります」
可愛らしく両手に握りこぶしを作ったのだった。
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