第26話:ピクニック③

 お昼を四人で広げて食べていると、璃奈がふと思ったことを聞いてきた。


「そのお弁当って、もしかして世那ちゃんの手作り?」

「いえ。お弁当は奏多さんの手作りですよ」

「てっきり世那が作ったと思っちゃった」

「いえ。私、料理はほとんどできませんから」


 すると「え?」と驚いた表情をする。それは調理実習の時、手際よくやっていたからだった。

 そのことを世那に聞いてみる。


「ああ、調理実習はハンバーグを作るって知っていたので、奏多さんに教えてもらいました」


 璃奈は「なるほどね~」と納得していた。


「もしかしていつも学校に持ってくるお弁当も雨宮くんの手作り?」

「そうだな」

「へぇ~、家庭的な男の人っていいね。まあ、俊くんの方が誰よりも素敵だけど」


 奏多と世那は何とも言えない表情となる。

 楽しく談笑しながら、二人は家で何をしているのかとか。両親はしっているのかなどを話したりしていると、お弁当箱の中は空になっていた。

 片付けてお茶を飲みながらゆっくりしていると、つむぎが奏多と世那を交互に見てから聞いてきた。


「お姉ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなの?」

「――ふぇ?」


 思わぬ質問に誰もがぽかんとしてしまい、そして徐々に顔を赤くする世那。

 世那だけじゃない。奏多だって顔が赤くなっていた。


「ゆ、友人として好きですが、その、異性としてどう思うかはまた別でして……」

「つむぎちゃん。あまりそういうことは聞かないように」

「……ふーん。つむぎ、二人はお似合いだと思うけどなぁ」

「「…………」」


 奏多と世那はもう顔が真っ赤だ。それを見て璃奈が「ふふっ」と声に出して笑った。

 笑う璃奈を睨むように見る奏多と世那に「ごめんね」と謝る。


「別に笑うつもりはなかったんだ」

「悪気がないのは知っているからいいよ」

「そうですね」


 程なくすると二人の顔の赤みが引いたのだが、璃奈が世那の耳元で何かを囁くとボンッという音が出るかのように顔を真っ赤に染めた。


「なっ、べ、べつにそのようなことは……! それに私なんかでは迷惑というか」


 世那は赤い顔のまま俯いてしまう。

 すると璃奈は「ふ~ん」と面白そうに頷いて奏多を見た。


「雨宮くん、少しの間だけつむぎの面倒を見てくれる? 世那ちゃんと話したくて」

「うん? 別に構わないよ」

「ありがとう」


 そう言って世那と璃奈の二人は歩いて行った。

 残された奏多はどうして離れる必要があったのかと不思議そうに首を捻った。

すると服の裾を摘まんで、ベンチに座る奏多を見上げているつむぎがいた。


「お兄ちゃん遊んでくれるの?」

「うん。戻ってくるまでたくさん遊ぼうか」

「やったぁ!」


 喜ぶつむぎを見て笑顔になる。

 そこからは二人が戻ってくるまで遊んでいた。


「流石に疲れたな」

「でも楽しかったよ!」


 二人は木の陰の芝生に寝転がっていた。

 心地よい風が吹き抜け、動いて疲れたことによる体の熱を少しずつ冷ましていく。

 すると隣で寝息が聞こえてきた。


「気持ちよさそうに寝てるな。こっちまで眠くなる」


 寝てしまったつむぎを見て奏多は小さな欠伸をする。

 目を閉じると、周りからは楽しそうに遊ぶ子供の声や小鳥のさえずりが聞こえてくる。

 それらを耳に、奏多も眠りに落ちるのだった。

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