第51話:夏祭り①
結華は友達と夏祭りを回る予定とのことで先に出て行ってしまった。
二人も遅れて家を出た。
歩いて十分くらいの距離で開催されており、家を出て少しすると人が多くなってきた。
浴衣を着ている人やそうでない人と格好はバラバラだ。
道行く人が浴衣姿の世那を見てぼけ~と見惚れている。見惚れるのも納得の可愛さをしている。
「あ、奏多さん。屋台がありますよ! 行ってみましょう!」
「あっ、ちょっ」
初めてのお祭りに興味津々の世那は、奏多の手を引いて屋台の方へと向かっていく。
屋台が立ち並ぶ道を歩く。
「世那、そろそろいいか?」
「え? あっ、ご、ごめんなさい!」
慌てて繋いでいた手を放す世那の顔は耳まで真っ赤に染まっている。
「その、初めてなのではしゃぎすぎてしまって……」
「いや、気にしてないよ。それに人が多くてはぐれたらお互い困るからな」
「そうですよね」
奏多の顔は赤い。奏多だって恥ずかしかったのだ。それでもこの人込みではぐれたら探すのに時間がかかるというのも事実。なので、奏多は世那に尋ねる。
「嫌じゃなければ手を繋ぐか? その、はぐれたら困るし」
奏多の提案に世那は思わず目を見開く。
そして遅れてその手を握って笑みを浮かべた。
「はい。お願いします」
「お、おう」
二人は手を繋いで屋台を見ていく。
「りんご飴ですか?」
「うん?」
世那が見ている方にりんご飴の屋台があり、不思議そうに見ていた。
「りんごの飴なのでしょうか? それしても大きいですね」
「もしかしてりんご飴を知らないのか?」
「はい」
りんご飴を知らないことに驚いた奏多だが、世那はお祭りが初めてと言っていた。なら知らないこともあるだろう。
奏多はりんご飴がどういうものかを説明する。
「りんご飴っていうのは、果物のりんごに串を差して、溶かした飴をかけて冷やして固まらせたものだよ」
「なるほど。ちょっと気になります」
「なら小腹も空いたから買って食べようか」
「はい」
店主にお金を払いりんご飴を二つもらう。近くに座る場所があったのでそこに座って食べることに。
世那が食べようとするのだが飴が思ったより硬かったのか、諦めてぺろぺろと可愛らしく舐めていた。
「甘いです」
「そりゃあ飴だからな。思いっきりかぶりつくといい」
手本を見せるように奏多はりんご飴に食べる。パリッと飴の割れる音がする。
世那も見様見真似でりんご飴を食べる。
パリッと音がして、世那は口元を押えながら感想を述べる。
「飴の甘さとりんごの甘みがちょうど良くて美味しいです」
「それは良かった」
そこから雑談しながらりんご飴を食べ終わると再び歩き始めて屋台を回る。
すると太鼓の音が人混みの奥から聞こえてきた。
「なんの音でしょうか?」
「神輿かな?」
世那は「神輿ですか?」と奏多に質問をする。
「そう。周辺を、神輿を担いで回っているんだ。太鼓を叩きながら移動しているんだ」
「なるほど」
すると何人もの大人が神輿を担いでいるのが見えた。
「重そうですね」
「だな」
世那の一言に思わず同意してしまう。それでもこの祭りを盛り上げようとしているのが伝わってくる。
そのまま通り過ぎていくのを見て、再び移動を始めた。
少し歩くとソースの匂いが漂ってきた。
「焼きそばか」
祭りの屋台と言えば焼きそばが定番だろう。チョコバナナもそうだ。最近ではタピオカもあったりする。
「食べたばっかりですけど、お腹が空いちゃいますね」
困ったように笑う世那に奏多も困ったように笑った。
二人は焼きそばを食べたりたこ焼きを食べたり、チョコバナナを食べたりと色々食べ歩いた。
食べ物だけではない。金魚すくいをしたり射的をしたりとお祭りを満喫していた。
十分ともいえるほどお祭りを満喫した二人が帰ろうとして後ろから声がかけられた。
「お兄ちゃん!」
「うん?」
振り返ると結華と二人の女の子がいた。
一人は茶髪のポニーテールをしており、もう一人は黒髪のロングをした少女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。